戦場に沈黙が訪れ、マドレシスはマデスの消滅をじっと見つめていた。余韻に浸る間もなく、彼の心に不安が押し寄せてくる。討伐軍の兵士たちも安堵の表情を浮かべながらも、その場に何か異様な空気を感じていた。
「マドレシス、何かがおかしい。」アレスが気まずそうに声をかけた。
マドレシスはうなずき、その場を後にしようとした。しかし、歩みを進めた瞬間、空気が揺れた。まるで何か見えない力が働いているかのように、空間が歪み始めたのだ。
「この感覚…まさか…」エリオスが震える声で呟いた。
その瞬間、異様な光が差し込み、異次元の扉が開かれたように影が現れた。そして、見覚えのある姿が浮かび上がる。
「そんな…」マドレシスはその姿を見て、驚きの表情を浮かべた。「兄さん、まだ終わっていなかったのか…?」
「違う、これは…マデスではない。」エリオスが冷静に答えた。
その影はゆっくりと形を成し、ついには完全な姿を現した。それはまるでマデスの再現であるかのようだったが、瞳の色や表情に彼とは異なる冷徹さが見て取れた。
「我が名はネメシス、いや、この体ならマデスか…復活を司る者。」その影が口を開き、低く響く声で言葉を放った。「マデスの魂を復活させる手引きをしたのは私だ。そして、死をもって新たな力を授けられた。これからは、私が新たな神として君臨する。」
その言葉に討伐軍の兵士たちは驚愕し、身構えた。ネメシスはマデスの魂を利用し、さらに強大な力を持つ存在となったのだ。
「兄さんの力を…許せない!」マドレシスは怒りを抑えられず、剣を構えた。
「君を評価しよう。」ネメシスは冷笑を浮かべながら言った。
「だが、これからは君の存在が無意味になるだろう。新たな神を討つことはできまい。」
その言葉とともに、ネメシスは力を解放し、再び歪み始めた。力に抗うことは難しいが、怯むことなく、剣を強く握りしめた。
「兄さんの魂を汚す者は許さない!」マドレシスは叫び、再び戦いに挑む決意を固めた。
討伐軍の兵士たちもその決意を感じ取り、一斉に武器を構えた。彼らはマドレシスとともに、この新たな神を打ち倒すため、最後の力を振り絞ろうとしていた。
「行くぞ、皆!」マドレシスは力強く叫び、ネメシスに向かって突進した。その瞬間、空間が揺らぎ、激しい戦いが再び始まった。ネメシスとの戦いは、これまでのどんな敵よりも厳しいものであることは明白だった。
だが、マドレシスの心には揺るぎない決意があった。彼は、兄を救い、新たな神を討ち倒すため、最後まで戦い抜く覚悟を固めていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!