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次の日、わたしは小瓶を大事に抱えて家へ帰った。お母さんに「どうしたの?」と聞かれたけど、
わたしはにっこりして「ひみつ」とだけ言った。
台所にこっそり入り、
おばあさんから教わったとおりに砂糖を煮つめた。
ことこと、ぐつぐつ。
鍋の中で水があわをはじいて、
そこにひかりの蜜をぽとんと落とすと──
ぱあっと鍋全体が光った。
スプーンですくって小さな型に流し、
冷めるまで両手であおぎながら待った。
やがて、透明で小さな丸いキャンディができあがった。
中には金色の星くずみたいなきらめきが閉じこめられている。
わたしは布団に寝ているお兄ちゃんのもとへ行き、
「はい、あーん」とキャンディを口に入れてあげた。
お兄ちゃんはびっくりした顔をしたけど、
すぐに口の中で転がして、ほっと息をついた。
「……あったかい」
その顔が、すこし赤みをおびて、
ほんの少し笑顔になった。
「お兄ちゃん、笑った!」
わたしの声に、お母さんも驚いて駆け寄ってきた。
お兄ちゃんの目はまだ少し弱っていたけど、
確かに笑っていた。
わたしは胸の中で、きゅっと思った。
──ぜったいに、星の女王さまに会うんだ。
そのときに、ちゃんとお願いするんだ。
外では、もう星のおまつりの太鼓の音が鳴りはじめていた。