TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

 生きてる……生きてる、生きてる、生きてる、生きてる、生きてる、生きてる!


 「みんな、生きてる!」


 僕は狩場に出るため、《モロシイタケ》の採取依頼を受けて森を全力で走っていた。


 ……え? 報告前に持ってるのおかしい? まぁまぁ……前回採った分を“もしも”の時のためにギルドに内緒でストックしてただけだし。グレーゾーン? そういうのは“ギリギリ合法”って言うんだよ! みんなやってるし!


 「はぁ……はぁ……確か、この辺に拠点が……」


 息が切れる。心臓がバクバクで喉が焼けそうなのに、それでも足は止まらなかった。


 装備はゴールド級。足装備も上等だけど、さすがに最高級ってわけじゃない。でも普通の走りなんかより、よっぽど速い。感覚で言えば――ロードバイク並み。


 そうして辿り着いたのは、濁った大きな泉。名前なんてない。ただ、奥からゆったりと川が流れ出している。


 「……」


 あたりをぐるりと見回すと、反対側の茂みにテントが張られていた。


 「あそこか!」


 ――そのときだった。


 「な、なに……!?」


 身体にビリッと走る、異様な感覚。


 そして、遠くの方で木々が一斉になぎ倒される音が聞こえてきた。


 「え? 僕、出してないのに……?」


 出した覚えのない【糸』が、勝手に空中に浮かびあがり、光の矢印のように先を示す。


 ――まるで、RPGのナビゲーションみたいに。


 「この先に……よし!」


 俺は水面を駆けた。魔力操作で足裏に滑らせるような魔力の膜を展開し、疾走する。


 途中――泉の底から巨大な魔物が飛び出してくるが、


 「邪魔すんなぁっ!!」


 【糸』を放って即拘束。構ってる暇なんてない。


 もうすぐ――もうすぐ会える!


 ……そして辿り着いたのは、不自然すぎるほど“何もない”開けた土地だった。


 草も木も石ころすらなく、ただ灰色の大地が広がるその場所。中心に、二人の人影。


 「……ど、どうして?」


 そこに居たのは、リュウトと――ヒロユキ。


 だが、ヒロユキは美しく光を返す日本刀を手に、リュウトを襲っていた。


 対するリュウトは、巨大な黄金のランスを構え、必死にかわしている。


 「なんで……勇者同士が戦ってるの……!?」


 空気が――変わった。


 先ほどまで受けに徹していたリュウトが、距離を取り、構える。


 そこから放たれる【殺気】が、肌を突き刺すように伝わってきた。


 「この感覚……まさか……!」


 来る――明らかに、決めにくる大技。


 止めないと……どっちかが死ぬ!


 「ヒロユキ! リュウト君っ!!」


 叫びながら駆け出す。けれど、二人はまるでこちらの声が届かないかのように構えを崩さない。


 やばい! このままだと――!


 「止まって!! 【目撃縛』!!」


 心の叫びと共に、魔法が展開される。


 小さな魔法陣が空間に浮かび、そこから伸びる無数の【糸』が――二人を縛りあげた。


 リュウト君の両腕とランスを、ヒロユキの腕と刀の柄を。それぞれ絡め取るようにして、動きを止めた。


 


 「なぁぁぁあにしてるんだ!このバカちんがぁぁぁあ!!!」


 「「!?」」


 やっと俺の声に反応してくれた!


 「え、えと、その声は……まさかアオイさん?」


 あ、やばい、涙出てきた……

 生きてた!リュウトくんも!ヒロユキも!!


 「そうだよ!久しぶり!リュウト君!ヒロユキ!……君!」


 二人とも、まだ【目撃縛』で拘束したままだ。


 「。。。。。。だれだ?」


 ヒロユキが拘束されたまま、まるで初対面の人に向けるような目でそう言った。

 ――え?ええ!?忘れた!?

 嘘でしょ!?確かに山亀討伐から年数は経ってるけど……そんなことある!?

 ていうか、召喚された時は下着Tシャツ姿だったのに!?インパクトはあったはずなのに!?


 「えーっと……思い出せない?」


 「。。。。。。お前なんて知らん」


 「ガーーン」


 「アオイさん、そいつに騙されないでくれ!ヒロユキの身体を乗っ取ってる――【魔王】の手下だ!!」


 「え!?【魔王】!?それなら僕が……」


 確かに、【魔王】は倒した……けど、殺してはいない。

 だからまた復活して悪さでもしたのか――そう思った次の瞬間、リュウト君の言葉が俺の中に衝撃を走らせた。


 「倒したのは知ってる……でも、俺もそうだったんだ。

 この世界に【魔王】は、まだ存在する!」



 「ぅえ!?……ええええええ!?」


 何それ!? え? てかさ、【魔王】だよ? 【魔物の王】が何人も居ていいの!?


 「とりあえずその話は後で……この糸はアオイさんから?」


 「あ、うん。ごめん、今ほどくね」


 リュウト君が拘束されたままこっちに声をかけてきたので、さすがに格好がつかないと思って【糸』を解いてあげた。

 あぁもう……なんか、抱きしめたいくらい嬉しい。


 「ふぅ……でも助かったよ、アオイさん。もう少しで俺、友達を殺すところだった」


 「……その言葉、けっこう物騒だね……」


 「まぁ確かに。【日本】にいた頃は、絶対に口にしなかった言葉だよな……フフッ。後で詳細は話すとして──さて」


 リュウト君は視線をヒロユキに向ける。拘束はまだ解いていない。


 「形勢逆転だな。大人しくヒロユキの身体を返せ」


 「。。。。。。ククク。。。。。」


 「何がおかしい!」


 「。。。。。。その前に、面白いことになったみたいだぞ【勇者】」


 「何!?」


 その直後、空気がビリッと変わる。


 周囲の木々の間から、無数の【水の矢】が俺たち三人めがけて飛んできた!


 「危ない! リュウト君!」


 俺は即座に【糸』を展開し、円柱状の魔法防壁を形成して三人を包み込む。

 矢は全て弾かれ、直後に防壁を解除すると──


 目がギョロっとして、緑色の鱗を持った半魚人たちが、こちらを囲んで弓を構えていた。


 「。。。。。。ほら、リュウト。良かったな。。。。。。【人魚】共だぞ?」


 

 

 

 

異世界転生したら女になった!?

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

48

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚