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「アンブローズ様…」
再び広がるざわめきの中、彼の見えなくなった後ろ姿を脳内で何度も何度も反芻する。凛としたあの立ち姿はきっと誰からも気高く、そして触れ難い薔薇の花のように見えただろう。
でも、違う。
「心を変える魔法なんて、ないよ」
口から言葉が滑り落ちる。
「魔術師も呪術師も、同じ人間だよ」
私達は王族であり魔術師の一族、グラナートゥム。しかし、国民達が魔術師の加護に驕ることのないようその事実は隠されている。私達が魔術師だと知っているのは魔術師と呪術師、そして各国の王族達だけ。
隠しているが故にこの国の魔術師や呪術師への理解は未だ広がらないまま、化け物だと恐れながらも薬は必要だから無下にはできないという歪な関係が蔓延っている。
…私の、せいで。
「フランシス様!」
駆け出した私の背中へ誰かが声をかけたが、そのまま足を止めずに走り続ける。
強くて優しい貴方は、きっと自分一人で感情を呑み込もうとする。呑み込んで、平気な振りをして、彼らを傷付けるような振る舞いなんて絶対にしない。
「アンブローズ様!」
貴方を守れる強い人になりたいのに。
こんなに時間が経っても、まだ足りない。