最近、スケジュールがさらに忙しくなっていた。
グループの活動はもちろん、舞台の稽古や個人の仕事が増え、翔太と顔を合わせる時間はほとんどなかった。
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「舘さん、今週ずっと稽古らしいよ」
佐久間が何気なく言った言葉に、俺は喉が詰まるような感覚を覚えた。
「……へぇ」
「最近ほんとにすれ違ってるよね、2人とも」
阿部ちゃんがちらりと俺の顔を見ながら言う。
「そんなことねぇよ」
自然にそう返したつもりだった。でも、自分の声がどこかぎこちないのは、誰よりも自分が分かっていた。
「本当に?」
そう言ったのは目黒だった。
「……何が言いたい?」
「いや、翔太くん、ずっとなんか元気ないから」
「別に、俺は普通」
目黒の言葉をさえぎるように言ったものの、その瞬間、自分の指先に力が入っているのを感じた。
(俺……なんでこんなにイライラしてんだろ)
ふっかが「ま、恋愛って色々あるよな」と笑いながら肩を叩いてくる。
「だから、喧嘩してねぇって」
そう言いながら、スマホを手に取る。涼太とのLINEは、ここ数日、ほとんどやりとりがないままだった。
(俺から送ればいいだけの話……)
分かっているのに、なぜか指が動かなかった。
——どうせ、忙しいんだろ。
そう思ったら、余計に送れなくなった。
「おーい、翔太ー?」
佐久間の声にハッとして顔を上げると、メンバー全員がこっちを見ていた。
「え、何?」
「いや、今ちょうど舘様から連絡来たからさ」
そう言いながら、佐久間はスマホを見せてくる。
『今日のリハ終わったらそっち行けるけど、まだいる?』
その文章を見た瞬間、胸の奥がちくりと痛んだ。
(……俺には何も連絡してこないのに)
「どうする? もう帰る予定だけど」
「……帰る」
そう言って、立ち上がった。
「え、いいの? 久しぶりに会えんじゃん」
「別に、わざわざ会うほどのことでもないし」
言った瞬間、自分の声が思ったより冷たくて、メンバーが微妙な空気になったのが分かった。
「……そっか」
佐久間がそれ以上何も言わなかったことが、逆に胸に刺さった。
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その日の夜、ベッドに横になりながら天井を見つめていた。
スマホを開いても、涼太からのLINEは1件も来ていない。
(結局、あのあと事務所に行ったのかな……)
考えても仕方ないのに、想像してしまう。
事務所に行って、メンバーと笑いながら話していたのかもしれない。
もしかしたら、何も気にしていないのかもしれない。
(なんで俺だけこんなに気にしてんの)
「……あー、もう、めんどくせぇな」
自分の性格は分かっている。
素直じゃなくて、拗ねやすくて、涼太の優しさに甘えすぎることもあった。
でも、今回は違った。
これまでは拗ねても、涼太が気づいてくれた。
面倒くさそうにしながらも、結局は「翔太、どうした?」って聞いてくれた。
なのに、今は。
「……なんで、何も言ってくれないんだよ」
そう呟いて、スマホを置いた。
結局、夜が明けても涼太からの連絡は来なかった。
コメント
1件
すれ違いすぎてるーーー😭😭