テラーノベル
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相談室の空いている一部屋に遊宵先生と二人で通される。
急には言葉が出てこない私を遊宵先生はただ静かに待ってくれた。そして暫しの沈黙の後、私は言葉を詰まらせながらゆっくりと切り出した。
「……心当たりは有りません。西田が、…あんなことされるなんて」
「…そうか。今回みたいなことは初めて、ということでいいんだよね」
「はい。…私が気付けていなかっただけかもしれませんが」
「…犯人は十中八九男性で間違いないと思う。だから、西田さんの周りで怪しい男性に覚えがあれば教えてほしい」
「怪しい男性……あ。西田は最近、彼氏と別れたって言ってました。…もしかしたらその元カレに逆恨みされたのかも」
「うーん。確かにその可能性もあるけど、この学校にわざわざ侵入して西田さんのロッカーを特定し犯行に及ぶのはリスクが大き過ぎる気がする。…多分、学校関係者のほうが可能性が高い」
「…そうですか。私が知ってるのはそれくらいです。…役に立てなくてごめんなさい」
「ううん。僕の方こそ、時間取らせちゃってごめんね」
ー私は遊宵先生に一礼して相談室を出た。人気のない廊下を教室まで歩く。西田が落としたリコーダーは既に片付けられていた。
今、西田は何を思っているだろうか。…西田のことを私は何も知らないんじゃないかと、今更になって思う。恋バナだって愚痴だって…いつも私の話を聞いていてくれたのは西田なのに。彼女の異変にもっと早く気付くべきだった。…彼女の心にもっと寄り添うべきだった。
でも、いつまでも落ち込んだまま立ち止まっているのは…私らしいやり方じゃないな。西田が安心してこの学校に戻って来るためには犯人を今すぐ捕まえる必要がある。
ーそれでも、明日の体育大会に西田は来ないかもしれないと私は心許なく思った。
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