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うわあ……読んでて胸がぎゅっとなりました。照の「嫌われたい」と「嫌われたくない」の矛盾した願いが痛いほど伝わってきて、特に「お願いだから、なんでもいいから、はやく俺のこと|嫌い《すき》になってよ」の一文が刺さりました。深澤が最後に放った「♡♡♡しようか」の空虚な笑顔、あれは怒りでも悲しみでもない、何かが決定的に壊れた瞬間のように思えて……続きが気になりすぎます。ふたりの関係がどう転ぶのか、本当に怖いけど目が離せません。
深澤に手首を掴まれたまま俯いて意味もなくじっと床を見つめていると、頭上から「……んぅ?」と大好きな気の抜けたような声が聞こえてきて思わず顔を上げた。一緒にテスト勉強をしていた高校生の頃の日々がリフレインする。ふっかの困ったときの顔と、なぜか少し笑ったような声が好きだった。どうやら部屋取りの機械の使い方がよく分かっていないようだった。……慣れてないんだ。それが少し嬉しかったと同時に、ちゃんとこいつは綺麗なままでいるんだと知って、申し訳なくなった。 ここのホテルは立地柄か男同士の客も受け入れてくれる。トラブル防止や排泄器官に挿入するため浣腸していないと汚れてしまうとこもあるためゲイの受け入れを行っていないラブホテルも多いのだ。だから俺は何度か利用したことがある。慣れた手つきで簡素な部屋を取ると、深澤は何も言わずにただ俺を見つめていた。
部屋へと入りカードキーを入れて電気をつけると、深澤はやっと俺の手首を離してくれた。仄かに赤くなった手首の痕が愛おしくて、一生このまま消えなければいいのにと思ってしまった。こんな汚い男なのに、好きになってごめん。
深「んで、なーにしてたの」
岩「……ごめん」
深「あのね、俺は別に照のこと嫌いになんかならないけど、怒らせて」
深澤はいつになく真剣な顔をして俺に話し始めた。話の前置きがなんとも深澤らしくて、俺の心は生ぬるく温まってしまった。怒られている身だというのに、俺は人として救いようがないところまできてしまっているのかもしれない。
深「グループに迷惑……じゃないけどさ、やっぱりブランドイメージ?みたいなのがあるわけで。別にこれは照が男を好きなのは全く関係ない。でもさ、あぁいう場所が世間からどう見られてどういう扱いをされてるかくらいは、分かってるでしょ?」
俺は黙って頷いた。
深「照の後をつけてきちゃったのは、ごめんね? でも、……心配だったんだよ。おまえ、最近やけに帰るの早かったし誘いにも乗らないしさ。なんか、変なことしてんじゃないかって……」
深澤は真剣な表情は徐々に曇っていった。こいつは本気で俺なんかのことを心配してくれているのだと伝わってきて、どうしようもなく嬉しくなってしまった。ぼんやりと思い出したのはまだ若かった頃のこと。俺がストーカーに対して耐えきれなくなって手を出してしまったあの時も、こいつはこうして”俺のために”叱って、傍にいてくれた。あのときふっかがいなければ今もこうして活動を続けていることはないだろうと分かってるからこそ、俺はふっかをただの”好き”という感情で括りきれなくなってしまっていた。
深「……っ、おい、聞いてる?」
岩「うん。聞いてる」
深「おまえがそう言うときは大抵聞いてねーんだよ。これでも俺怒ってんだぞ?」
岩「……うん」
俺のために、ね。
それでも、こんなにこの男が大好きでも、そういう関係になりたいとは思わなかった。もちろん、正直に言えばこいつとセックスをしてみたいと思ったことはある。ライブ終わりの着替えの際に上裸になった深澤を見て、興奮しそうになったこともある。けれど、付き合いたいとは思わなかった。それはきっと、こいつが俺に振り向くわけがないと分かっていたから。そして、俺が告白すれば、こいつは持ち合わせた底抜けの優しさで俺を無理に受け入れてしまうと分かっていたから。
もともとハマる形に作られていないパズルのピースを無理やりはめようとすれば、どちらか、もしくはその両方が欠けて壊れてしまう。それは人間関係も一緒だ。過不足なく、バランスよく。ただでさえ不安定な場所で成り立っている関係なんだから、俺が好意を向けてしまえば、崩れ去るのは一瞬だろう。
深「……彼氏とか、つくんねーの?」
岩「いまは、いい」
深「そうは言ってもさ、そうでもしないと上手く発散できないじゃん」
岩「……今のままじゃ、だめ?」
俯きがちな顔のまま上目遣いをするように見つめると、深澤は盛大な溜め息をついて「おまえなぁ……」と呆れたような、困り果てたような顔をした。そりゃそうだ。相手のためを思って叱って説得したのに、相手はなんの言葉も受け取っていないというのだから。
こいつとなら沈黙さえ心地良いはずなのに、今日の静けさはなんだか棘があって居た堪れなくなり俺は口を開いた。
岩「俺は、好きであの場所に行ってる。別に、自分を痛めつけようとか思ってないし……」
深「おい、照」
こいつにだけは死んでも嫌われたくない。それと同時に、心の底から嫌ってほしかった。
岩「それに、別にいいだろ犯罪でもないんだし。行為自体は誰にも迷惑かけてないんだからさ。ジュニアなんだからバレることもないって」
深「ひかる」
俺馬鹿だからさ、ふっかの優しさを愛情だって勘違いしちゃうんだよ。
岩「だしさ、俺にだってリアコのファンの子達たくさんいるんだよ? あんだけ好きで追っかけてる子達にすらバレてないんだから、俺隠すの上手いんだって」
深「……」
お願いだから、なんでもいいから、はやく俺のこと嫌いになってよ。
岩「バレそうになったらメンバーに迷惑かかる前にグループ抜ければいいんだろ? 別にお前がいればグループ成り立つもんな笑。俺が謹慎になってたあのときだって、お前が軸にいてどうにかなってたんだし? そうすればお前も何も文句ないだr」
ぐらりと揺れる視界。ドンッという鈍い音とともに痛みが走った後頭部と背中。あーあ、お前は綺麗なんだからこんなことしちゃ駄目だろ。胸ぐらを掴んで俺を見上げた深澤は、いつになく怒っていて、それなのに泣きそうな顔をしていいた。
深「おまえ、なにもわかってない。……ふざけんなよ」
岩「わかってる」
深「わかってない」
あぁ、こんなにくだらない暴論をつらつら並べても、こいつは俺のこと離してくれないんだ。俺はこいつに飼い殺しにされる運命なのか。
深「照がいなくてSnow Manが成り立つわけねぇだろ。俺達は6人でSnow Manだろ」
岩「元は何人もいたのに?」
俺がそう言うと、ようやく深澤は黙って俺から目線を外した。そうだよ。見損なえばいい。失望して、俺なんかいらなくなればいい。
やがて俺の胸元から深澤の腕が落ちていく。俯いたその顔がどんな表情を浮かべているのかは伺えないけれど、多分お前、傷ついてんだろ。
大好きな人を傷つけたというのに、頭には薄っぺらい謝罪しか浮かばなかった。それよりも、俺が傷痕をつけたという事実に、心は悦んでいた。あぁ、最低な人間なんだな、俺って。
別に家族からの愛情がなかったわけではない。むしろ家族仲は良好で友人もそこそこいて、孤独なんて無縁な学生生活を送っていた。そのはずなのに、なんで俺の愛は、こんなにも汚れていて歪なのだろう。
数分経ってようやく顔を上げた深澤を見て、俺は呼吸のリズムが一瞬乱れた。そこにあったのは、限りない無だった。怒りも悲しみも存在しない、空虚。
岩「……ふ、っか」
やばい。流石の俺でもそう察するのに時間はかからなかった。見たことのない長年の友……だった存在の姿に恐ろしくなって、俺は思わずドアノブを掴もうとした。しかし、次に気がついた頃には俺は床に投げ捨てられていた。見上げた深澤は、薄い笑みを浮かべている。
深「照、セックスしようか」
絶対辰哉
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