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「…はぁはぁはぁ…うくっ。…はっ…はぁはぁはぁ。…くぅっ…くっ!?」
「…もっと強くですヤツカドさまぁ♡。あ。そう。とても素敵ですよ?」
「くぅっ!。はぁはぁはぁ!…くっ!。…このっ。はぁはぁ…うくっ!」
「そうそう。ソコですぅ♡。…ん…あらぁ?…もう限界なのですかぁ?」
「くっ!。まだまだぁ!。はぁはぁはぁ!。…まだヤれますううっ!!」
幾つかの燭台の蝋燭が見守る薄暗い部屋の中。俺はかのえの囁くような甘い声に応えるように全身を奮い立たせる。頬を伝う汗を軽く拭い、俺は追撃を開始した。初めてな経験もあってか、使ったこともない身体中の筋肉に負荷がかかるのが分かる。俺の知るスポーツの域を…軽く超えていた。
風呂上がりだとゆうのに、首筋や背中にも汗が流れているのが分かる。こんなにも肉体を酷使するものとは思いもしない。明日はきっと全身のあちらこちらが筋肉痛になるのだろう。それでも俺は、彼女の声に応えたい。ここでだらしない所を見せてしまえば、一人の男としても情けなくなる。
「くっ!。(連続で動いているから膝と太股が震えてきた!それに尻の筋肉が勝手にキュッてなるし!。…ヤバいな?このままだと終われない!)」
「はぁい。もう10分を過ぎましたね。…これくらいに致しましょう♡」
「はっ!。…はぁはぁはぁ。……は。あ、ありがとう…ございました。」
「はぁい♡。とっても素敵でしたよぉ?。よく頑張りましたねぇ♡」
汗だくな俺の背中に、ふわりと柔らかいタオルが掛けられた。側に立ったかのえが、俺の頬や腕や胸元の汗を甲斐甲斐しく拭ってくれる。あの風呂場で甘い声で誘われ、舞い上がっていた俺が期待していた卑猥な覚悟と、彼女の俺への思惑は全くの別物だったらしい。まぁ…普通はそうだよね。
「うふふ。スポーツは全くと仰っていた割りには良い動きでしたよ?。鍛錬用の木偶を相手に、ああも素早く反撃できるなんて。才能アリです♡。」
「はぁはぁはぁ。…かのえさんの教え方が上手いんですよ。それにオダテ上手だし。はぁはぁ。確かにこうゆうのを殴ると…スッキリしますね?」
初めて着けたオープングローブ。総合格闘技とかで見る五本の指が比較的自由に動かせるアレだ。まるで格闘ゲームのコスプレかのような袖の無い真っ白な空手道着は、思いの外に軽く動きやすかった。まるでゲームやアニメの主人公にでもなった様で、当然ながら気分もアガる。…超楽しい。
「嬢さまの仰るように…貴方は八門一門の末裔なのかも知れませんわ♪」
「ヤツカド一門?。…すみません、オレの名前はテキトーなんです。なんせ産まれて数時間で捨てられて…孤児院で育ってますから。物心ついた頃にはこの名前で呼ばれてたんですよ。だからその一門とは…別ものです…」
思いがけない彼女の言葉に、俺の身体は無意識に固くなる。そう。どこの男に種を付けられた、どんな女から産まれたのかも分からない自分に、俺は嫌悪さえしていた。恐らく誰にも祝福されず、生むか産まぬかさえ悩ませたのだろう。その虚しい誕生を拭い払うために社畜に徹しているのだ。天涯孤独を理由に自暴自棄になるのは容易い。しかしそれでは俺自身が、産み捨てた女や種馬男と同類項になる気がするのだ。だからこそ俺は…
「もしかして、あなた様はご自分が嫌いなのですか?。男子が己を卑下するのはよくありませんよ?。…それに私の目には…とても懸命に生きておられる方に見えます。…しかも素直で吸収も早くて。それも才能では…」
「うるさいな!。初めて会ったアンタに俺の何が!?。…すみません。こんなに良くしてもらってるのに。…オレ…帰ります。服を返して下さい…」
つい感情を爆発させてしまった。今までは、誰に何を言われても愛想笑いで聞き流していたのに。しかし、これは甘えなのだと直ぐに理解できた。我ながら情けない。一人で働き、一人で生きて、一人で死ぬために社畜になったとゆうのに。過去バナになった途端に取り乱している。…馬鹿だ。
「八門さま…お洋服はまだ乾ききっておりせんのでお返しすることは…」
「…それならこの服をお借りします。…洗って必ず…お返ししますから…」
それに、誰からも望まれずにオギャーと産まれてこの方、孤児院でも親切にされた事など無いし…さっきみたいに褒められることも一切無かった。優しさに飢えていたのか?。俺は励ましてくれるこの女性に縋ってしまったらしい。それも自然と、無意識なうちに。酷く恥ずかしくなってきた。
「…それも叶わないお話しですわ?ヤツカドさま。……失礼いたします。」
「うっ!?。…あの?かのえさん?。(うわぁああ!抱きつかれたぁ!。しかもガッツリ押し当たってるしぃい!?。あうう…凄くイイ匂いだ…)」
「…八門さまは、かのえがお嫌いですか?。…やはり怒ってらっしゃるのですね?。お風呂の中で甘く誘惑しておいて…鍛錬なんかさせたから…」
俺の背中に両腕を回して、まるでベア・ハッグのように抱きしめてくる袴姿の美女。ポニーテールな紅い髪から漂う大人な女性の甘い香り。しかもすぐ鼻の先だからモロに嗅いでしまった。鳩尾に圧着した確かな高反発。そして更に押し付けられる下腹の柔らかさ。彼女の背に…手を回したい。
「いっ!?いえいえ!決して怒ってなんか!。(ヤバいヤバいヤバいヤバいっ!。のっ!ノーブラだぞコレ!しかも押し返してくるしっ!。おっぱいってもっと柔らかいと思ってたのに、かのえさんのってしっかりしてるなぁ。密着してて感触もダイレクトだから大きさまで解るし。うっ?)」
頬を薄く染め、うっとりとした表情で見上げる彼女の色気に目を回しそうだ。しかも、俺がほんの少しだけ屈めばすぐにキスできてしまう様な場所に、とてもそそられる赤い唇がある。こんな甘い刺激は人生で初めてだ。
どころか誰かに抱き締められることさえ初体験。しかも二度見するほどの美女に、ここまで密着されたことなど夢の中でもありゃしない。こうなってしまっては…俺の中の男は意思など関係なくに燃え上がる。若さ故に…
「うふふふふ♡かのえのお胸はどうですか?。每日のお手入れは欠かさないので、見ていただければもっと気に入っていただけますよ?。それに…すでにお互い…押し当たってしまいましたね?。…あん…なんて逞しい♡」
「かっ!かのえさん!?。(不味いな、秒で勃っちまったぜ。ああああーどーすんだオレっ!?。離れなきゃなのに!離したくないしっ!。ん?あっ!?かのえさんっ?。そっ!そんなにグイグイしたらおっぱいが!)」
今日は初体験が多すぎるっ!。紅髪美女の顔はすぐそこだし!胸を押し付けたせいで乱れた彼女の前襟からは!真っ白な素肌をした深い谷間が丸見えだ!。しかもふにゅんと押し潰されて!とてもスケベに見えてしまう!
このまま抱きしめて…押し倒してしまおうか!?。ここまで密着してくれたのだ!たぶん覚悟はできているだろし!押せばイケるのかも知れない!しかし足下は剥き出しの木の板だ。あっ!?彼女が上に乗ってくれれば!
『ぐきゅるるるるぅ〜。ぐぐぅううう〜。……ぐる…ぐるるぅぅぅ…』
「あ…(な!なんでこのタイミング!?。オレの腹のあほーっ!!)」
「うふふふ♡。まずはお食事に致しましょう。…その後に、また♡」
「は!?はいっ!また後で!。(うああー!かのえさんに笑われたー!。でも昨日からビールしか飲んでないし。…腹…すごく減ってたのね…俺)」
美しい微笑みを残して俺の胸から離れていった大人な美女。凛とした袴姿でも、そのグラマーなセクシーボディーが見透かせてしまう。このままここに居たら、確実に惚れてしまうだろう。すでに恋心は鷲掴まれてるし。
でも、それも悪くないのでは?。月曜日が来たらまたあの会社に行って、下らない注文と説教を受けながら愛想笑いを晒すのか?。他人の作成データをわざわざチェックしたり、あの眼が痛くなるデカい画面と日柄1日にらめっこしたいのか?。収入だって変わらないのに出ていく金は増えるばかりで、喰いたい物も食えないのに?。俺はなんの為に社畜をしている?