テラーノベル
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第21話 【おすすめ欄の暴走中】
朝のスマホは、静かではなかった。
ぴこん。
ぴこん。
ぴこん。
ぴこん。
ナギは布団の中で目を開けた。
スマホの画面に、転生タイムラインが開いている。
おすすめ欄を更新しました。
あなたにおすすめの転生者。
手品動画。
掃除動画。
早口解説。
睡眠導入。
筋トレ。
古民家修理。
石拾い。
変な自販機巡り。
文房具紹介。
謎の楽器。
ナギは画面を閉じた。
すぐ開いた。
ぴこん。
おすすめ欄を更新しました。
ナギは起き上がった。
「だめだ。今日、絶対多い」
桶が言った。
「起きられてえらい!」
小桶も言った。
「通知に負けなくてえらい!」
ナギは頭を抱えた。
広場へ出ると、もう皆が集まっていた。
ロッカは門の前に立ち、短剣の柄を握っている。
ミレナは帳面を三冊抱えている。
サヨは端末でコメント欄を整えている。
トオルは札を立てている。
ハヤテは案内ルートを歩いて確認している。
走ってはいない。
ロッカに見張られているからだった。
広場の中央には、新しい札が立っていた。
新しい転生者受付。
まず止まる。
名乗る。
能力を確認する。
走らない。
触らない。
食べない。
サヨ確認。
ロッカ確認。
ゴブすけ確認。
ゴブすけは門の横で胸を張っていた。
教官車が隣で、ぴ、と鳴った。
確認開始。
ナギのスマホが震えた。
おすすめ欄から転生者を送信します。
ロッカが言った。
「全員、構えろ」
サヨが静かに言う。
「コメント欄、期待が強いです。抑えます」
コメントが流れている。
来る?
何人来る?
村、大丈夫?
受付作って。
無理しないで。
楽しみだけど危ない。
サヨが拾う言葉を選ぶ。
受付作って。
無理しないで。
広場に小さな案内板が増えた。
それ以上は増えなかった。
サヨが息を吐く。
「よし」
次の瞬間。
広場に帽子が落ちた。
ぽすん。
その帽子の中から、手品師のような人が出てきた。
「はい、どうも。帽子から異世界、出られました」
ロッカが即座に言う。
「止まれ」
手品動画の人は両手を上げた。
「止まります」
ゴブすけが確認札を見せる。
教官車が、ぴ、と鳴る。
ナギのスマホに表示が出た。
能力
手品の小物実体化。
危険度
低。
注意
出しすぎると散らかる。
ミチルが目を光らせた。
「散らかるなら収納が必要ですね」
手品動画の人は帽子から小さな花を出した。
ロッカが言う。
「勝手に出すな」
「すみません」
その直後。
広場の端に、ベージュのエプロン姿の人が落ちてきた。
「汚れ、発見」
言うなり、地面の泥を見た。
掃除動画の人だった。
能力
汚れを見つけると掃除道具が強化。
危険度
低。
注意
掃除しすぎると必要な土まで消える。
ハクトがすぐ言った。
「土は全部取らないでください」
掃除動画の人は真剣にうなずいた。
「分かりました。必要な汚れと、いらない汚れを分けます」
ミレナが書く。
「必要な汚れ……」
桶が言った。
「汚れにも役割があってえらい!」
ぴこん。
おすすめ欄から転生者を送信します。
今度は、細い眼鏡の人が落ちてきた。
「この異世界転生現象についてまず考えられる仮説は三つあって一つ目は投稿履歴が能力化する情報変換型二つ目は視聴者側の観測干渉三つ目は転生タイムラインそのものが」
ロッカが手を上げた。
「止まれ」
早口解説の人は止まった。
ミレナが目を見開いた。
「強敵」
ヨミトがうなずく。
「情報量系です」
ハクトも静かにうなずいた。
「仲間ですね」
ミレナが叫んだ。
「増えないで!」
ぴこん。
次は、睡眠導入動画の人だった。
落ちてきた瞬間、声だけがやわらかく広がった。
「大丈夫。まず、息を吸って、吐きましょう」
広場の緊張が少しゆるむ。
ロッカまで、一瞬だけ肩の力を抜いた。
「……今のは助かる」
睡眠導入動画の人は微笑んだ。
能力
声で緊張を下げる。
注意
戦闘中に眠くなる危険あり。
ロッカの表情が戻った。
「戦闘中は禁止」
「はい」
ぴこん。
次は筋トレ動画の人だった。
着地と同時に姿勢を正した。
「まず全員、腰を痛めない立ち方から!」
リクが背筋を伸ばす。
マヒロもつられて伸ばす。
ナギも伸ばされた。
ロッカが言う。
「勝手に整えるな」
筋トレ動画の人は真顔で答えた。
「怪我予防です」
ハクトがうなずく。
「大事です」
ロッカは言葉に詰まった。
おすすめ欄は止まらなかった。
古民家修理の人。
石拾いの人。
変な自販機巡りの人。
文房具紹介の人。
謎の楽器の人。
一人ずつ来る。
一人ずつ説明する。
一人ずつ能力が出る。
村は一気に騒がしくなった。
カイは建物を増やし始めた。
ミチルは収納を増やした。
ツクルは受付の紙芝居を作った。
サヨはコメント欄を整理した。
トオルは危険度札を貼った。
ヨミトは能力の相性を読んだ。
ロッカは全員を止めた。
ゴブすけは全員を確認した。
ミレナは記録しすぎて、ついに帳面を閉じた。
「無理」
桶が言った。
「無理って言えてえらい!」
小桶も言った。
「休めてえらい!」
ミレナは深く息を吐いた。
その時、ナギのスマホが強く震えた。
おすすめ欄が暴走しています。
おすすめ理由
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転生者候補
増加中。
ナギは画面を見て、顔色を変えた。
「これ、止めないと」
広場の上に、光の輪がいくつも開き始めた。
一つ。
三つ。
五つ。
十。
ロッカが叫ぶ。
「多すぎる!」
サヨが端末を握る。
「コメント欄も盛り上がりすぎています。期待が流入を強めてる」
コメントが速く流れる。
もっと見たい。
次誰?
おすすめ欄すごい。
村に集まれ。
全員来たら面白い。
でも危ない。
止めて。
準備して。
サヨが必死に拾う。
危ない。
止めて。
準備して。
しかし、光の輪は増える。
ハヤテが走り出しかけた。
「案内ルート拡張」
ロッカが怒鳴る。
「走るな!」
ハヤテは歩いた。
ものすごく速い歩きだった。
トオルが叫ぶ。
「大規模流入は危険です。おすすめ欄の条件を変える必要があります」
ナギはスマホを握った。
お題。
おすすめ欄が次々転生者を送り込む理由とは。
そして、それを止めるには。
ナギは息を吸った。
「お題! 暴走したおすすめ欄が、急に転生者を送りすぎるのをやめた理由とは!」
光の輪が震える。
ナギは答えた。
「おすすめする前に、受け入れ先の準備状況を確認するようになった!」
スマホが光った。
おすすめ欄の上に、新しい表示が出る。
受け入れ準備を確認中。
宿泊場所。
食料。
安全確認。
能力説明。
本人の同意。
村側の許可。
光の輪が、次々と小さくなった。
十あった輪が、三つへ。
三つが、一つへ。
最後の一つも、ゆっくり閉じた。
広場に静けさが戻る。
ロッカが深く息を吐いた。
「止まったか」
サヨがコメント欄を見る。
「流れも落ちました」
トオルが札を書く。
おすすめ欄ルール。
一度に送る人数を制限。
受け入れ準備を確認。
本人の意思を確認。
村側の許可を確認。
危険能力は保留。
ミレナが帳面を開き直した。
「大事なルールね」
ナギはスマホを見る。
おすすめ欄は静かになっていた。
次のおすすめ転生者
待機中。
村の準備が整うまで送信しません。
ナギは肩の力を抜いた。
「よかった」
桶が言った。
「止められてえらい!」
小桶も言った。
「増えすぎなくてえらい!」
夕方。
村には、新しい受付場ができた。
カイが建てた広い屋根。
ミチルの収納棚。
ツクルの説明紙芝居。
サヨのコメント管理台。
トオルの検証札。
ヨミトの危険度表示。
ハヤテの案内ルート。
まかなの温かい汁。
ひなたの休憩場所。
こよりの生き物確認。
ハクトの食材確認。
ロッカの停止線。
ゴブすけの確認門。
おすすめ欄から来た転生者達は、ひとまずそこで説明を受けていた。
手品動画の人は、小物を出す前に許可を取るようになった。
掃除動画の人は、必要な土を残して掃除した。
早口解説の人は、一文ずつ区切る札を持たされた。
睡眠導入動画の人は、夜だけ担当になった。
筋トレ動画の人は、荷物運び前の姿勢確認係になった。
村はまた、広がった。
でも、今度は少しだけ順番があった。
夜。
ナギはスマホを開いた。
転生タイムライン。
おすすめ欄
映像には、次々と転生者が落ちてくる場面。
村が受付を作る場面。
おすすめ欄が暴走しかける場面。
ナギの大喜利で受け入れ確認が追加される場面。
新しい受付場ができる場面が映っていた。
コメント欄は、前より落ち着いていた。
一気に来すぎた。
でも面白かった。
村の準備大事。
受付場いいね。
ゴブすけ確認お疲れ。
早口解説の人、区切って。
睡眠導入の人、助かる。
ナギ、お疲れ。
サヨが横で言った。
「今日は拾いやすいです」
ナギは画面を見た。
「少し分かってくれたのかな」
「たぶん。こちらも少し、伝え方を覚えました」
ロッカが受付場を見ながら言った。
「今後も増えるのか」
ナギはスマホを見る。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
登録者1000万人
超有名UP主
影響力大
ナギは固まった。
「次、やばそう」
ヨミトが画面を見て、静かに言った。
「影響力大。コメント欄もおすすめ欄も反応します」
ミレナが帳面を抱えた。
「記録の量が……」
ロッカが短剣の柄を握る。
「受付場だけでは足りないかもしれない」
サヨはコメント欄を見た。
「現実世界も、もう気づいています」
コメントが流れる。
登録者1000万人?
誰?
大物来る?
村、大丈夫?
準備して。
ハヤテが言った。
「案内ルート、広げます」
ロッカが言う。
「歩いて」
「歩いて」
まかなが鍋を持つ。
「食事、多めに作る」
カイが受付場を見る。
「増築する」
ミチルがかごを握る。
「収納も増やす」
ツクルが紙芝居を丸める。
「説明も増やす」
ゴブすけが胸を張った。
教官車が、ぴ、と鳴る。
確認強化。
桶が言った。
「準備してえらい!」
小桶も言った。
「慌てすぎなくてえらい!」
ナギは夜の村を見た。
人が増えた。
役割が増えた。
声が増えた。
画面の向こうも、こちらを見ている。
おすすめ欄は、ただ次を流すだけではない。
似たものをつなげる。
関係ないものまで連れてくる。
偶然を連続に変える。
この村は、もう一人の転生者を迎える場所ではなくなっていた。
流れを受ける場所になっていた。
ナギはスマホをしまった。
次は、きっと大きな波になる。
でも今の村には、受付場がある。
確認係がいる。
止める人がいる。
整える人がいる。
食べさせる人がいる。
記録する人がいる。
笑わせる人がいる。
褒める桶が二つある。
ナギは少しだけ笑った。
「まあ、何とかするか」
桶が言った。
「何とかしてえらい!」
小桶も言った。
「何とかしようとしてえらい!」
夜風が、受付場の札を揺らした。
転生タイムラインは、次の巨大な投稿を準備していた。
コメント
1件
おつかれさま〜、今回も面白かったです! おすすめ欄からどんどん転生者が来ちゃって、村が一気にカオスになってるところ、すごく好きでした。特に「走るな!」ってロッカが叫んでるのに、ハヤテがめっちゃ速い歩きするの、笑っちゃいました(笑)。 桶と小桶の「えらい!」が今回も癒し。 そして最後の「次、やばそう」…伏線かな。もう次が気になって仕方ないです。ゆっくりでいいので、次の更新も楽しみにしてますね🌙
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しめさば
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