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#魔道具職人
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第22話: 【伝説】登録者1000万人の大物が転生してきたってよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
朝から、村は準備でいっぱいだった。
受付場は広げられた。
案内札は増えた。
まかなは大鍋を二つ用意した。
ミチルは収納棚を追加した。
ツクルは説明紙芝居を三種類作った。
サヨはコメント欄ルールの札を広場の中央に立てた。
ゴブすけは門の横で、いつもより背筋を伸ばしていた。
ナギのスマホは、ずっと震えていた。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
登録者1000万人
超有名UP主
影響力大
コメント欄急増
おすすめ欄急拡大
ナギは画面を見たまま、口を閉じた。
ロッカが横に立つ。
「危険なのか」
「分からない。ただ、規模が大きい」
サヨが端末を見て言った。
「現実世界の反応が強すぎます。名前が出る前から、コメント欄が走っています」
コメントが流れる。
誰?
まさか。
1000万人って。
村、大丈夫?
大物来る。
騒がないで。
落ち着いて。
でも見たい。
ヨミトが目を細める。
「影響力が、能力化する可能性があります」
ミレナが帳面を抱えた。
「影響力の能力化……」
桶が言った。
「大きくなってえらい!」
小桶も言った。
「でも慎重でえらい!」
その時。
広場の真ん中に、巨大な通知音が鳴った。
ぴこん。
いつもの通知ではなかった。
村の空気が揺れた。
人々が一斉に振り向いた。
コメント欄の文字が、滝のように流れた。
おすすめ欄が開く。
あなたへのおすすめ
星見レンヤ
登録者
1000万人
次の瞬間、広場に光が落ちた。
眩しすぎるほどではない。
でも、誰もが見てしまう光だった。
その中から、ひとりの男が現れた。
茶色の髪。
緑のロングコート。
首には小さなカメラ型の飾り。
男は立ったまま、数秒だけ目を閉じていた。
そして、ゆっくり目を開けた。
「……ここ、どこですか」
声は静かだった。
それなのに、村人達は息を止めた。
おすすめ欄から来た転生者達も黙った。
魔物待機場の子達まで、じっと見ていた。
ナギは一歩前へ出た。
「異世界です」
男は少しだけ笑った。
「なるほど。ついに、動画外まで来たんですね」
ロッカが短く言った。
「名乗れ」
男は頭を下げた。
「星見レンヤです。動画を作っていました。企画、旅、挑戦、雑談、配信、いろいろです」
サヨが小さく言う。
「コメント欄、爆発寸前です」
ナギのスマホが震えた。
能力名
メガチャンネル・インパクト
効果
注目、期待、応援、心配が周囲の現象に変換される。
補正
見ている人数。
期待の強さ。
本人の発言。
コメント欄の流れ。
注意
本人の意思と関係なく、周囲が大きく動く場合があります。
ロッカの顔が険しくなった。
「本人の意思と関係なく、か」
レンヤは画面を見て、表情を曇らせた。
「また、それですか」
ナギは聞いた。
「また?」
レンヤは広場を見回した。
「大きい場所にいると、自分の一言が勝手に膨らむことがあります。褒めたものが売れたり、何気ない言葉が騒ぎになったり、冗談が本気にされたり」
サヨが静かにうなずいた。
「大きいコメント欄の人ですね」
レンヤは少し疲れたように笑った。
「たぶん」
その時、コメント欄が一気に光った。
レンヤだ!
本物?
すごい!
村を救って!
何か言って!
大技見たい!
レンヤならできる!
広場の地面が揺れた。
村の中央に、勝手に大きな舞台がせり上がろうとする。
カイが叫ぶ。
「地面が動く!」
ロッカが走る。
「下がれ!」
レンヤは顔をこわばらせた。
「待って。僕は何も」
サヨが端末を操作する。
「期待が形になっています。大きすぎる」
ナギはスマホを握った。
「お題! 超有名UP主への期待が暴走しかけた時、一番必要だったものとは!」
答える。
「本人が立つ前に、まず避難経路を作る冷静なスタッフ!」
舞台の上昇が止まった。
かわりに、地面に矢印が出る。
避難経路。
見学場所。
立入禁止。
本人確認中。
ハヤテが叫んだ。
「案内します。歩いて!」
ロッカがすぐ言う。
「歩いてだ」
「歩いて!」
村人達が落ち着いて下がる。
ゴブすけが門を確認する。
教官車が、ぴ、と鳴る。
レンヤは胸に手を当てて、深く息を吐いた。
「助かりました」
ナギは苦笑した。
「こっちも慣れてきました」
レンヤは少し驚いた顔をした。
「慣れることなんですか」
「最近は、だいたいそうです」
コメント欄はまだ流れている。
レンヤ、何かして!
一言ほしい。
村のみんなに声かけて。
応援して。
がんばれって言って。
レンヤは画面を見た。
そして、言った。
「落ち着いてください」
たったそれだけだった。
けれど、声が村中に広がった。
強すぎない。
命令でもない。
でも、多くの人に届いてきた声だった。
広場のざわめきが少し静まる。
サヨが端末を見た。
「コメント欄、減速しました」
ヨミトが言う。
「発言にも影響力があります。ただし、慎重に使えば安定化する」
ミレナが書く。
「大きい声は、叫ばなくても届く」
レンヤは広場の人々を見た。
「僕は、全部を解決できません」
その言葉に、コメント欄が少し揺れた。
でも、レンヤは続けた。
「動画では、すごそうに見えるところだけ届くことがあります。でも、ここでは違う。ここには暮らしている人がいて、守っている人がいて、止める人がいて、記録する人がいる。僕ひとりで何とかする場所じゃない」
ロッカの目が少し変わった。
ナギはスマホを見た。
コメント欄が、ゆっくりになる。
そうだね。
ごめん。
期待しすぎた。
みんなで守ってる。
村の人もすごい。
レンヤも無理しないで。
サヨが静かに言った。
「整っています」
レンヤは小さくうなずいた。
「よかった」
だが、問題は終わらなかった。
おすすめ欄が反応した。
関連おすすめを拡大します。
レンヤを見た人はこちらも見ています。
有名企画者。
大型コラボ主催者。
都市伝説解説者。
チャレンジ動画職人。
海外巨大チャンネル。
ナギの顔から力が抜けた。
「また増える」
トオルが叫ぶ。
「受け入れ確認が必要です」
サヨが端末を操作する。
「おすすめ欄、期待で押されています」
レンヤが画面を見た。
「僕が来たから、さらに呼ばれるんですね」
ヨミトがうなずく。
「影響力大の副作用です」
ロッカが言う。
「止める方法は」
ナギは考えた。
おすすめ欄。
関連。
有名な人。
見る人が見たいもの。
大きい流れ。
ナギは息を吸った。
「お題! 有名UP主が来たことで暴走したおすすめ欄が、急に次を送るのを待った理由とは!」
答える。
「本人の最新投稿が、まず『準備中』だった!」
レンヤの前に、小さな投稿画面が浮かんだ。
星見レンヤ
現在の状態
準備中
新規転生者の追加
一時停止
おすすめ欄の光が弱まった。
関連動画の文字が、ゆっくり小さくなる。
次の転生者
村側の準備後に送信します。
ロッカが息を吐いた。
「止まった」
レンヤは画面を見て、少し笑った。
「準備中、便利ですね」
ナギもうなずいた。
「かなり便利です」
夕方まで、レンヤは受付場で話し続けた。
派手な企画はしなかった。
大きな技も出さなかった。
村の中を歩き、ひとりずつ話を聞いた。
ゴブすけには、門番をしていてえらい、と言った。
ゴブすけは胸の札を押さえ、固まった。
桶と小桶は同時に言った。
「褒められてえらい!」
「照れてえらい!」
モルモット達の巣箱では、ユウマの話を黙って聞いた。
魔物待機場では、こよりの距離の取り方を見て、すごいですね、と小さく言った。
まかなの料理を食べて、ゆっくり味わった。
ミレナの帳面を見て、これは村の歴史ですね、と言った。
ロッカには、止める人がいるから場が壊れない、と言った。
ロッカは顔をそむけた。
「仕事だ」
レンヤは笑った。
「大事な仕事です」
その言葉だけで、周囲の空気が少し温かくなった。
ナギはそれを見ていた。
登録者1000万人。
超有名UP主。
もっと派手な人だと思っていた。
でも、レンヤは静かだった。
たぶん、静かでいないと、大きくなりすぎるのだ。
夜。
広場に、小さな配信台が作られた。
レンヤはそこに立った。
サヨがコメント欄を整える。
トオルが危険度札を立てる。
ヨミトが影響表示を見る。
ロッカが周囲を警戒する。
ナギはスマホを持つ。
レンヤは画面に向かって、ゆっくり話した。
「見てくれている皆さんへ。僕は無事です。ですが、ここは企画の舞台ではありません。人が暮らす場所です。コメントで助けたい時は、小さく、具体的に、現場確認を待ってください。誰かを責める言葉より、必要な情報をください。僕に全部を期待しすぎないでください。ここには、もうたくさんの人がいます」
コメント欄が静かに流れた。
分かった。
無事でよかった。
村のみんなありがとう。
無理しないで。
小さく助ける。
現場確認。
レンヤだけじゃない。
サヨが小さく息を吐いた。
「いい流れです」
レンヤはナギにスマホを返した。
「これで、少し落ち着くと思います」
ナギはうなずいた。
「ありがとう」
レンヤは夜の村を見た。
「こちらこそ。僕も、助けられました」
「何を?」
「期待から」
ナギは返事ができなかった。
レンヤは笑った。
「大きな数字は、力にもなるけど、鎖にもなります。ここでは、少し軽くなりました」
スマホが震えた。
転生タイムライン。
【登録者1000万人】
映像には、レンヤが広場に現れる場面。
期待で舞台が暴走しかける場面。
ナギの大喜利で避難経路ができる場面。
レンヤが期待を落ち着かせる場面。
おすすめ欄を準備中で止める場面。
最後に、村へ向けて静かに話す場面が映っていた。
コメント欄は、いつもよりゆっくり流れていた。
レンヤ、無事でよかった。
村のみんなすごい。
ロッカありがとう。
ナギありがとう。
サヨさん助かる。
ゴブすけかわいい。
桶と小桶、今日もえらい。
準備中、大事。
桶が言った。
「今日もえらい!」
小桶も言った。
「みんなえらい!」
レンヤは少し笑った。
「いい桶ですね」
ナギは言った。
「二つに増えました」
「大事にしてください」
「してます」
夜が深くなった。
受付場の灯りがゆれている。
コメント欄ルールの札が立っている。
おすすめ欄ルールの札も立っている。
その隣に、新しい札が増えた。
大きな期待は、小さく受け止める。
ひとりに背負わせない。
数字より、目の前を見る。
ロッカがその札を見て言った。
「悪くない」
サヨもうなずいた。
「必要な札です」
ナギはスマホを見る。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
海外の投稿者
世界中の能力者
言葉の壁
ナギは画面を見た。
「次は海外か」
レンヤが静かに言った。
「もっと広がりますね」
ヨミトがうなずく。
「言葉が課題になります」
ミレナが帳面を抱えた。
「記録の言語も増える……」
ロッカが短剣の柄に手を置く。
「まず受付だ」
サヨがコメント欄を見た。
「現実世界も、世界中から見始めています」
ナギは夜の受付場を見た。
村は、もう村だけではなかった。
投稿。
おすすめ欄。
コメント欄。
超有名UP主。
世界中の視線。
全部が、ここへ集まり始めている。
ナギはスマホをしまった。
「明日も準備中でいきたいな」
レンヤが笑った。
「それ、いい言葉です」
桶が言った。
「準備してえらい!」
小桶も言った。
「まだ始めなくてもえらい!」
夜風が、三枚の札を揺らした。
コメント欄ルール。
おすすめ欄ルール。
大きな期待のルール。
転生タイムラインは、次の広がりを準備していた。
コメント
1件
「大きい場所にいると、自分の一言が勝手に膨らむ」って台詞、すごく刺さりました……。レンヤさん、優しい人だな。ナギの「準備中」でおすすめ欄止める発想も好きだし、本人が立つ前に避難経路を作る冷静さって、この村の魅力が詰まってるなって思いました。ロッカが「悪くない」って言ったあの札、すごく大事なルールだよね。次は海外から来るんですか……言葉の壁、どうなるんだろう。続き、すごく楽しみにしてます。柘榴とAIさん、今日も素敵な話をありがとうございます🥀