(さすがに…………ショックが……大き過ぎるよ……)
勇人にとって、私の存在は何なの?
恵菜の鼻の奥が、ツンと痛くなった気がした。
義母のダイエット推奨発言と、勇人の不倫。
恵菜は、全然減量できない焦りと、勇人と理穂の関係がよほどショックだったのか、食事が思うように摂れなくなっていた。
料理を見ると吐き気がしてしまい、口にできるものは水分とヨーグルト。
サラダは、ひと口だけなら、かろうじて食べられる。
本当だったら探偵を雇い、勇人の不倫現場を押さえ、彼に突き付けた方がいいのかもしれない。
けれど、金を払ってまで証拠を得るのも、恵菜にはアホらしく感じていた。
『恵菜さん、どう? ダイエットは順調? 何キロ痩せたのかしら?』
姑の良子は、ダイエット推奨発言をした手前、時々、恵菜のスマートフォンに電話を掛けてきて、進捗状況を聞いてくる。
『すみません……なかなか……減量…………できなくて……』
『あら、そうなの? なら、頑張るしかないわね』
素っ気なく答えた姑に対し、不意に思う。
何で痩せないからって、私が義母に謝らなければいけないの? と。
この結婚生活自体、意味があるのだろうか?
姑にとって、私は……早瀬家の従順な駒……?
良子が与えてくるプレッシャーと、夫の不倫で板挟みになっている恵菜に、『離婚』の二文字が頭を駆け抜ける。
(勇人には、何も知らないと思わせて、いきなり離婚を切り出した方がいいかも……)
料理を見ると吐き気を催し、食事ができない状態は、なおも続いている。
恵菜は翌日、体調不良を理由に当日欠勤すると、市役所に行き、離婚届をもらってきた。
日中、誰もいないリビングで、恵菜は黙々と書き込んでいく。
(今日、勇人が帰宅したら、離婚したいと言おう……)
彼女の決意も虚しく、彼は日付を跨ぐ直前、香水の残り香を漂わせて帰宅した。
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