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「君に言えなかったこと」― パク・ジミンの片想い ―
つがい。
それは、Dom/Subという運命の世界において、最も特別で、最も残酷な関係。
俺はAクラスDom。
支配欲も、本能もあるけど──どこか、温度が低かった。
誰かを本気で「欲しい」と思うことなんて、なかった。
それまでは。
初めて会った日。
君は、俺たちの新しいマネージャーだった。
気配を消すのがうまくて、常に控えめで。
でも一度笑うと、誰よりも空気が明るくなる。
そして、何よりも──
君の香りが、どこまでも澄んでいた。
俺の本能が騒ぐわけじゃない。
むしろ逆。落ち着くんだ。安心する。守りたくなる。
「ジミンさん、明日のスケジュールですが──」
「うん、ありがとう。……ねえ、ミンジュさんって、いつもそんなに距離取るの?」
「えっ? あ、すみません、そういうつもりじゃ……」
「いや、いいけど。……ちょっと寂しいだけ」
──気づいたときには、もう遅かった。
俺は君に恋をしていた。
でも、君はSubだった。
しかも、Sクラス。
そして、俺は──その隣に立てるDomじゃない。
それでも、俺は期待していた。
いつか、気づいてくれるんじゃないかって。
でも、現れた。
──SSクラスのDom、ジョングクが。
彼が君を見つめたとき、
その視線の奥にある「飢え」と「優しさ」に、俺は気づいた。
「あ、ダメだ」
そう思った。
あれは、俺には持てない“強さ”だった。
それでも、俺は諦めたわけじゃなかった。
ただ、君が笑っていてくれたら、それでいいと思っただけ。
“俺には何もできない”
そう思った夜も、少しだけ誇らしかった。
「君の“安心”に、ほんの少しでも、俺が関われたなら」
君が彼とつがいになった日、俺は何も言わなかった。
泣きもしなかった。笑いながら、手を振った。
でもその夜、スマホを見ながら、ずっと写真を消せなかった。
君が泣きながら笑ってたあの一枚──
ずっとホーム画面に残ってた。
でも今は、ちゃんと前を向けるよ。
君の未来に、俺はいない。
でも、俺の未来には、君の幸せがある。
それだけは、ずっと、変わらない。
⸻
【End:ジミン視点】