テラーノベル
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スタジオに置いてある布団を3人で引っ張り出し、床へ並べた。
久しぶりの光景。
元貴が「俺ここー」と適当に場所を決めて転がる。
若井も「狭」と笑いながら隣へ寝転んだ。
その時。
「……真ん中がいい」
ぽつりと涼ちゃんが言った。
2人が同時に振り返る。
「え?」
元貴が吹き出す。
「涼ちゃん いつも端っこじゃん」
若井も少し笑った。
「珍し」
普段の涼ちゃんなら、“どこでもいい”って言う。
むしろ壁側とか端ばかり選ぶのに。
涼ちゃんは少しだけ目を逸らした。
「……今日はいいじゃん〜」
その声が少し甘くて、元貴は笑いながら身体をずらす。
「はいはい、どーぞお姫様」
「うるさい〜!」
若井も「しょうがねぇな」と笑って場所を空けた。
真ん中へ入る。
左右に2人の体温がある。
それだけで、不思議なくらい安心した。
スタジオの電気は消えていて、機材のランプだけがぼんやり光っていた。
元貴が眠そうな声で話す。
「なんか修学旅行みたい」
「男3人で?」
「夢ないこと言うなよ」
若井が呆れたように笑う。
そのやり取りを聞きながら、涼ちゃんは静かに目を閉じた。
好きだった。
こういう時間が。
何でもない会話も、笑い声も、全部。
左を向けば元貴がいて、右を向けば若井がいる。
それだけで幸せだった。
元貴がうとうとしながら言う。
「……涼ちゃん今日めっちゃ可愛い…」
「なんでやねん笑」
「真ん中がいいとか初めて聞いたし」
若井も小さく笑う。
「まあたまにはいいんじゃね」
その声が優しくて、胸が痛くなる。
涼ちゃんは布団を少し握りしめた。
――この時間が終わらなければいいのに。
心の中でだけ、静かにそう願った。
元貴はもう半分寝ていて、若井も目を閉じかけている。
その時。
涼ちゃんがそっと身体を動かした。
「……若井」
「んー……?」
眠そうな返事。
次の瞬間、涼ちゃんは静かに若井へ抱きついた。
若井の身体が少しだけ固まる。
「……どした」
「ちょっと寂しかったから」
掠れた声。
若井の服に顔を埋める。
落ち着く匂いだった。
シャンプーと柔軟剤が混ざった、安心する香り。
ずっと隣にいた匂い。
忘れたくなかった。
若井は少し戸惑いながらも、結局小さく笑った。
「今日ほんと甘えん坊だな」
そう言って、ぽんぽんと背中を軽く叩く。
その瞬間。
若井の手が止まった。
細い。
抱き返した身体が、思っていたよりずっと軽かった。
服の上からでもわかるくらいに。
一瞬、眉をひそめる。
「……涼ちゃん、お前」
痩せた?
そう聞きかけた時。
「はーいはいはい!ねえ涼ちゃん💢」
元貴がむくっと起き上がった。
「なんで若井だけ!?」
眠そうな声なのに、しっかり不満そう。
「俺も!」
そう言いながら元貴も反対側からぎゅーっと抱きついてくる。
「暑……」
「いいじゃん今日くらい」
結局、両側から挟まれる形になった。
若井は呆れたように笑う。
「なにこれ」
「サンドイッチ」
「意味わからん」
3人で小さく笑う。
でも若井だけは、少し気になっていた。
さっき抱きしめた時の感覚。
軽すぎる身体。
前より明らかに細い。
けれど今それを言う空気じゃなくて、若井は黙った。
涼ちゃんは静かに目を閉じる。
左右から感じる体温が温かい。
元貴の柔らかい香り。
若井の落ち着く香り。
全部、忘れたくなかった。
次回500
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