テラーノベル
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3人並んだ布団の中、元貴は完全に寝落ちしている。
若井も静かな寝息を立てていた。
その中で、涼ちゃんだけが眠れていなかった。
身体が重い。
薬の副作用のせいか、関節も筋肉もじわじわ痛む。
それでも2人の寝息を聞いていると、少しだけ安心できた。
その時。
「っ……」
元貴の足が無意識にぶつかる。
結構強かった。
涼ちゃんは反射的に息を止める。
鈍い痛みが身体に広がった。
でも声は出さない。
元貴は昔から寝相が悪い。
いつもなら、
『元貴、もうちょいそっち行って〜』
って笑いながら押し返していた。
でも今日は違った。
涼ちゃんはただ静かに布団を握る。
数分後、また軽く蹴られる。
「……っ」
唇を噛む。
痛い。
思っていた以上に、今の身体には響く。
でも言いたくなかった。
こんな何気ないことですら、もう愛しかったから。
元貴の寝相の悪さも。
若井の静かな寝息と面白い寝言も。
全部、いつもの“3人”だった。
それを壊したくなかった。
涼ちゃんは顔を少し埋めて、苦しそうに呼吸を整える。
痛みに耐えるたび、頭の中に思う。
――明日も、こうしていられたらいいのに。
その時。
隣で若井が少し動いた。
薄く目を開ける。
「……涼ちゃん?」
寝ぼけた声。
涼ちゃんはすぐ笑う。
「起こした? ごめん」
「……んー……」
若井は半分眠ったまま、ぼんやり涼ちゃんを見る。
暗くて表情まではよく見えない。
でもなんとなく、苦しそうに見えた。
「元貴また蹴った?」
「……まぁ」
若井は小さくため息をつく。
「寝相終わってんなあいつ」
そう言いながら、若井は眠そうなまま元貴を軽く押して距離を空けた。
「これで平気」
「……ありがと」
若井はそのまま自然に、涼ちゃんの頭をぽんと撫でる。
「おやすみ」
優しい声。
涼ちゃんは少しだけ目を細めた。
「……おやすみ」
その声は、泣きそうなくらい小さかった。
最近、少しずつわかるようになってきた。
――もう、長くないのかもしれない。
スタジオの階段を上がるだけで息が切れる。
キーボードを弾く指にも力が入らない。
それでも涼ちゃんは、何も言わなかった。
「涼ちゃん最近ほんと顔白いよね」
「寝不足?」
元貴と若井は軽く心配するくらい。
まさか“死”に近づいているなんて思っていない。
涼ちゃんも、それでよかった。
病院でもらった薬は机の上に置いたまま。
飲めば少しは楽になると言われた。
でも現実は違った。
副作用で気持ち悪くなって、身体は重くなって、結局また吐く。
食べて、吐いて。
薬を飲んで、また吐いて。
繰り返すたびに、何のために頑張ってるんだろうと思った。
だから、もう諦めていた。
どうせ治らないなら。
残った時間くらい、普通に笑っていたかった。
その日も、スタジオ帰り。
元貴がコンビニでパンを買いながら振り返る。
「涼ちゃんなんか食べる?」
一瞬迷ってから、小さく頷く。
「……食べる」
本当はあまり入らない。
でも2人と同じように食べたかった。
3人で並んで歩きながら、他愛ない話をする。
その時間だけは、苦しさを忘れられた。
けれど家に帰ったあと。
食べたものを全部吐いてしまって、涼ちゃんは洗面台に額を押し付けた。
苦しい。
喉も痛い。
涙まで出てくる。
それでも頭に浮かぶのは、さっきの2人の笑顔だった。
「……もっと、一緒にいたいな」
掠れた声が、静かな部屋に落ちた。
次回500
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( ᐛ )<ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ! チ───(´-ω-`)───ン