テラーノベル
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かごの中の宝物たちに、星の粉がひとつ落ちた。すると、不思議なことがおきた。
笑顔花の花びらがふわっとひらき、
金色の卵の殻がちいさな鈴みたいな音をたてた。
ぐにゃぐにゃのお手紙の上には、
やさしい光のもじが浮かびあがっていった。
「……!」
そして、透明なキャンディがころんと跳ねて、
その中の金色の粒が夜空みたいにきらめいた。
ひとつひとつの宝物の光が、
やがてまるで手をつなぐように重なっていき、
かごの中は小さな星空になった。
広場の人たちはみんな息をのんで見守っている。
子どもも、大人も、おばあさんも、
だれも声を出さない。
わたしは両手をそっとかごに添えて、
心の中で強くとなえた。
──女王さま、どうか出てきてください。
お兄ちゃんを、元気にしてください。
すると、光が一気にふくらんで、
夜空へと高くのぼっていった。
広場ぜんたいが昼間のように明るくなり、
空に道がひらかれていく。
その先から、やさしい歌のような声がした。
『ミナ……』
空の奥に、だれかがいる。
村のみんなもわたしも、
その瞬間を待っていた。
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