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羽海汐遠
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#創作
こと-koto
46
紗桜🌸💜
1,663
ruruha
533
早朝。住宅街の脇に鬱蒼と生い茂る今川の森には、昇ったばかりの朝日が差し込みセミがせわしなく鳴いていた。
「お、いたいた。見つけたぞ、クワガタ!」
コナラの木に登っていた大牙はクワガタを捕まえると、木の下から見上げている橘博士、凛、菜緒、元気、誠にクワガタを見せる。
「やったぁ!」
「やっぱりクワガタは上の方にいるんですね」
「よーし、俺も登るぞぉ!」
菜緒と誠が喜んでいたら、元気が木に近づく。
「無理だよ、元気くん」
「やめといた方がいいんじゃないです」
止めようとする二人の背後で、凛が「そうね」と冷静な声で言った。元気、誠、奈緒が振り返る。
「あんな高い所まで登れるの、片桐くんとお猿さんくらいだわ」
「お猿さんで悪かったな」
太い枝に腰掛けていた大牙は、クワガタを虫籠に入れながら呟いた。すると、皆の後ろで様子を見ていた橘博士が「そうじゃ」と何かを思いつく。
「サスペンダーを使えばいい」
「サスペンダー……ですか?」
誠がキョトンとする。
「あ、さっき博士んちでもらったこれか?」
大牙がズボンのポケットからサスペンダーを取り出して見せると、橘博士が頷いた。
「そうじゃ。ワシが改良しておいたから。ボタン一つで百メートルまで伸縮自在じゃ。ボタンを押し続けている間は伸び続けて、次にボタンを押すと素早く縮むのじゃ」
大牙は腰掛けていた枝にサスペンダーを取り付けボタンを押す。するとサスペンダーがスルスルと下へ伸び、根元にいた元気がその両端を掴んでズボンの上裾に止めた。彼が再びボタンを押すと、サスペンダーが元気を吊り上げたまま勢いよく木の上へ戻っていき、元気は枝に思い切り頭をぶつけてしまう。
「うわったぁ!」
「わ、わりぃ……」
「……ったく、気をつけろよ」
元気は頭をさすりながら、コナラの幹を見た。すると、目の前をクワガタが登っていく。
「あっ!クワガタみっけ!」
「ははは……」
「よかったね、元気くん!」
ちゃっかりクワガタをゲットした元気に誠と菜緒が苦笑いしていると、目の前を一匹のカブトムシが飛んでいった。
「カブトムシです!」
誠と菜緒はカブトムシを追いかける。カブトムシは少し離れたクヌギの大木に止まり、幹の樹液を吸っているメスのカブトムシを手に取った。
「このメスのカブトムシ、翅にテープが貼られてます。ほら」
「ほんとだ。ひどーい!」
カブトムシを見せられた菜緒は頬を膨らませる。カブトムシの翅には二本のテープがV字型に貼られ、翅が開かないようになっていた。
「ん? 何か字が書いてありますね。えっと……」
誠はテープに文字が印刷されていることに気づく。
「ああ、〈OPEN〉じゃな」
歩み寄ってきた橘博士が覗き込んで言った。
「よくコンビニの弁当に貼られているテープじゃろう。昨日買った、唐揚げ弁当にも……」
言いかけてハッとする。横にいた凛が鋭く目を光らせた。
「からあげ? またこっそりメタボってるのね」
「あ、いや……どれどれ、ワシが取ってやろう。誰じゃ、こんなイタズラをしたのは!」
彼女の目から逃れるように誠に近づいてカブトムシを受け取ると、テープを剥がし始める。誠は幹に止まっていたオスのカブトムシを手に取った。
「でもオスとメスってことは、もしかしたら恋人同士かもしれませんね」
「じゃあ、菜緒が名前をつけてあげる! えっと……男の子は彦星で、女の子は織姫!」
「いいですねー」
「そういえば、もうじき七夕ね」と凛。
「七夕といえば……よし、取れたぞ」
テープを剥がした橘博士が誠にカブトムシを渡し、「お待ちかねのクイズの時間じゃ!」と得意げにテープのついた人差し指をピンっと立てる。
「誰も待ってねぇーて」
いつの間にか木から降りてきた大牙が、すかさず博士に突っ込んだ。
「ある年の七夕の晩、大雨が降って織姫と彦星が会えなくなってしまったんじゃ。困った二人は考え抜いて、『恋人と共に過ごす日』略して『恋、共の日』を作って勝手に会うことにしたんじゃ。さて、その日は次のうちどれかな?一番、一月一日の元旦。二番、二月二日頃の節分。三番、三月三日の桃の節句。四番、五月五日の端午の節句」
橘博士が出したクイズに皆考えていたら、菜緒が「わかった!」と手を挙げる。
「三番、桃の節句でしょ! だって恋人同士ってお内裏様とお雛様だもん!」
「いえ、四番の端午の節句ですよ。恋人と踊るのは、情熱のタンゴですから」
「俺は一番! 元旦に恋人とお雑煮を食うんだ!」
「ほぉー、いろんなことを考えるんじゃのお」
「博士、正解は?」
博士が感心していると、菜緒が催促した。
「四番の五月五日じゃ」
「やった!」
正解を答えた誠がガッポーズをして喜ぶ。
「ただしワシと考え方が……」
大牙が博士の解説を遮るように言う。
「『子供の日』を分解すると、『子、イ、共の日』……『恋、共の日』だろ?」
「なるほど!」
誠と菜緒はすぐに理解できたが、元気はポカンと口を開けたまま。
「だからわざわざ『恋人と共に過ごす日』を略したんだろ」
「ははははは……」
「『恋、共の日』かぁ。この彦星さんと織姫さんも、ずーっと一緒にいられればいいね」
菜緒がそう言って、誠の虫籠に入った二匹のカブトムシを見つめた。
「にしても、カブトムシに彦星と織姫って合わないんじゃねーか」
大牙が不満げに言うと、凛が「そうかしら」と口を挟む。
「案外ピッタリなんじゃない。織姫の星は『VEGA』、メスのカブトムシに貼られていたテープはその頭文字が『V』に見えるでしょ」
「ほんとだ、ピッタリですね」
「うん!」
誠と菜緒は顔を見合わせて大喜びしたが、大牙は浮かない顔をした。
コレラの木に吊り下がったままの元気は盛り上がっている誠たちを見て、「で、俺どうやって降りんの?」とぼやく。
コメント
3件
え〜!!第2話もめちゃくちゃ良かったよ〜!😭💕 まず冒頭の夏の森の描写だけで一気に引き込まれた!!セミの声とか朝日が差し込む感じとか、もう夏休みの朝って感じで最高〜☀️🦗 大牙くんのクワガタ捕りからのサスペンダーで元気くんが頭ぶつけるシーン、お腹痛いほど笑ったwww「うわったぁ!」からの「わりぃ」のやり取りがリアルすぎる😂✨ そしてカブトムシに貼られたテープ…「OPEN」ってコンビニ弁当のテープってとこから博士の唐揚げ弁当バレで凛さんに怒られる流れもツボ!「またこっそりメタボってるのね」って鬼怖いけど愛がある(笑) 何より七夕クイズからの「恋、共の日」の謎解き!菜緒ちゃんの桃の節句説も可愛いけど、誠くんの端午の節句が正解でよかったね!「子供の日→子イ共の日→恋共の日」って発想、大牙くん頭いいじゃん!?🤯🌟 最後の凛ちゃんの「VEGA」解説でテープのV字と織姫星がリンクするところ、マジでエモすぎてもう…💫😭 彦星と織姫がずっと一緒にいられますようにって菜緒ちゃんの願い、私も同感!!カブトムシカップル末永く幸せに!!!!🐞🐞💕 カナリアさん、今回も夏の空気感たっぷりで一気に読めたよ!次回も楽しみにしてるね✨