コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
―さすがにこの女はたいした玉だ―
後藤田は心を引き締めた、彼の心臓は速く鼓動し、目の前の女がどれほど危険かを改めて悟った
「これからあなたを「(福建省女子監獄、※中国の刑務所)に連行します、 そこでしばらく待機してもらうことに成りますが、日中間の引き渡し手続きが済み次第、和歌山刑務所の女性棟で判決を待ってもらう事になります、おそらく無期懲役でしょう」
後藤田の声は低く、断定的だった
「すいませんね、決まりなんて失礼します」
彼は立ち上がって百合に手錠をかけた、縁側の木がきしむ音が静寂を破る
「戸締りはしなくていいですか?」
「盗られるものなど何もないわ・・・」
私はとっくの昔に心を盗まれたまま・・・生きているのが不思議なぐらい
手錠をかけられた百合はすっと立ち上がった、その動きはとても優雅で、まるで舞台の幕が上がる前の女優のようだった
後藤田警部は最後の見納めとも言いたげな仕草で、畑の下に広がるアモイの街並みを見渡す
「最後にお聞かせください・・・二人を殺害しようとした動機は?」
百合は太陽に顔を向けた、彼女の豊かな髪が風に揺れ・・・アモイの太陽の光が彼女の横顔を照らす、その瞳には言葉では言い表せないほどの闇が広がっていた、そして彼女はポツリと囁いた
「殺したいほど・・・愛していたから・・・」
・:.。.・:.。.