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#衝撃のラスト
山根利広
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阿久津は自分自身の結婚を前に美佳子に会いにきた。美佳子が台所で病死した後、この部屋は事故物件として扱われてしばらく別の入居者が事故物件と承知で安い家賃で住んでいたためなかなか入ることができなかったのだ。 今回はこのアパートの老朽化で解体されることを聞いた阿久津は除霊師としてネット動画配信で活躍していたコウをたまたま見かけ、ウジウジとした彼を見かねた婚約者が気持ちを切り替えてきなさい! とのことで依頼したのである。
そして亡くなったとされる時間帯に2人は待機していたところ、美佳子の霊が現れたのだ。管理人さんも住居人の一部からその時間帯に美味しそうな匂いがすることがある、というのを聞いていたそうだが住居人は霊感がない者ばかりで特にクレームもなかったそうだ。
後日、コウの元に阿久津から卵がいくつか送られてきた。
無事結婚したという報告と、美佳子の親子丼レシピをぜひコウの実家でも作って欲しいという旨が手紙に書いてあり、ちゃっかり卵の定期販売のチラシも織り込まれているのを見て
「阿久津さんも『買ってください』って書けばいいのにねぇ、そこは変わらないなぁ」
と独り言を言う。
「さて、さっきの除霊動画の編集でもするかねー」
その時だった。なにかいい匂いがするのだ。ご飯は先程とある寿司屋に幽霊が出たと依頼があって除霊して褒美として寿司をたらふくたべてきたばかりである。
「えっ……」
コウは台所に向かう。だんだん臭いは近づいてきた。ニンニクの匂いも強くなる。
「よっす!」
台所に見覚えのある金髪の女性がフライパンで炒飯を炒めていた。
そう、美佳子だ。
「よっす! やない! って、しまった……勝手に消えたからちゃんと除霊してなかったんや。で、なんで俺の家に?! 普通阿久津さんのところやろ」
狼狽えるコウ。美佳子は笑っている。
「もうあっくんは他の女と結婚してるでしょ。過去の男には執着しないわ。それよりも、コウくんにまだまだ作ってあげたいのよ」
「えっ……そのために?」
「私、コウくんに惚れてしまったのよ、ふふふ」
「うそーっ!?」
「ほんとよ、わたし年上好みじゃん。あっくんも年上だったでしょ?」
「いや、実際美佳子さんがご存命だと……俺よりも年上になるんやけどなぁー」
「ん?」
「なんでもないです……」
美佳子はお皿にチャーハンを乗せる。熱々で湯気がボワッと出ている。
「ニンニクマシマシ納豆チャーハン!」
確かににニンニクと納豆の匂いが漂う。美佳子の笑顔にたじたじのコウ。
「いや、おいしそうだけども……」
「食べて食べてー」
美佳子は期待している。しかも生姜の匂いがする鶏ガラ卵スープもあるようだ。
「まだまだ色々作るから、あなたが素直に美味しいっていうから……また親子丼も作らせてね」
「……はぁい……あ、なんだかお腹空いてきた」
「あと食後のプリンも用意してあるわよー、カラメルはしそうだったから特別につけときました♪」
ということで美佳子はたびたびコウの台所に現れては料理を作り、コウは腹を満たされるのであった。
「こりゃ、阿久津さんちの卵買わないとなぁ……」
「そやな、そんな思い出があったなー」
「うわっびっくりしたー」
虹雨がいつの間にか風呂から出て美佳子の話にわって入っていた。
「誰に話しとったんや。由貴は寝てるで」
「……なんで寝ちゃうのよっ、もぉ。お風呂も入らず寝るなんて」
虹雨はそっと由貴に毛布をかけてやる。それを見た美佳子は惚れ惚れと見る。
「なんで優しいこと……」
「そうかなぁー」
「もっと好きになっちゃうわー」
虹雨は苦笑い。すると
「やめとき、こんな男と」
と、由貴がむくっと起きた。自分の肩にかかった毛布を自分で巻いた。マフラーのように。
「こんな男って……コウクンかっこいいもん、普通寝てる人にサラッと毛布かける人いる?」
「……おらんなぁ」
「でしょでしょ!」
美佳子と由貴は盛り上がってる。虹雨は自分のしたことが恥ずかしくなった。顔を真っ赤にして由貴の巻いてある毛布をとってソファーに投げた。
「何するの」
「さっさとご飯食おうぜー冷めちまうってもう由貴、盗み食いしただろ」
「バレた?」
「バレバレやろ。先に食べやがって」
「……へへへっ」
2人は我先にご飯を突っつく。うまいうまいと舌鼓を打っているうちに美佳子はスーッと消えていた。
「美佳子さんに気に入られちまったな、俺ら」
「まぁ嫌われるかよりはいいよな」
「んだんだ」
「お前、食べ過ぎだろ」
「虹雨だっていつもすぐ食べちまうから先に食ってるだけだろ」
「弱肉強食だ、この世界は」
と由貴が食べようとしたお肉をスッと掬ってこれ見ようがしに目の前で食べる。
「クッソぁおおおおおお」
2人はまた喧嘩の始まり。
「もう、かと思ったからまだ作ってあるから食べなさい」
消えたかと思った美佳子が持ってきてさらによそった。由貴と虹雨は喜んだ。
「気がきくなぁ美佳子さん」
「ふふふ~もっといって!」
再び美佳子と由貴がわいわいと盛り上がっている姿を見て虹雨はふふっと笑った。数ヶ月前は死んだような顔をしてまさしく今すぐに飛んで死ぬ前だった由貴が笑っている。それだけでも虹雨は嬉しいのだ。
そしてこっそり由貴の食べる分を分けておく虹雨であった。
コメント
1件
あああ、美佳子さん生きてる(?)ときより元気じゃない?! 前回は切ない感じで消えたのに、今度は「惚れた」って言い出すし、台所でチャーハン作ってるし、笑顔でプリンまで用意してて可愛すぎるわ。コウくんもたじたじで「阿久津さんちの卵買わないとな」ってぼやくの、もうファミリー感あってほっこりする。最後の由貴の「クッソぁおおおおお」もツボった。日常の温かさがにじんでて、読後感がすごくいいエピソードだったわ🔥