誠実で優し過ぎるその言葉に、息ができないくらい苦しくなった。
彼氏でもない正孝君に、いつまでも甘えちゃダメだってわかってる。
きっと……彼女だっているだろうし。
でも「お願い助けて」って、勝手にまた心が叫んでた。
あの時と同じように。
『真美ちゃん?』
『正……孝く……』
言葉にならない声。
『ねえ、今から会える?』
『え……?』
今度もまた……私の気持ち、正孝君にさとられてしまった?
この人には全部わかるんだね。
他人のつらさを感じられる心底優しい人。
その優しさに、やっぱり私は甘えてしまいたくなる。
『あの公園。あそこに1時間後に行くから。いいね』
『でも、こんなバカな私のために……わざわざ来てもらうなんて……』
『何言ってるんだ。すぐ行くから。公園まで気をつけて来て』
そんなことまで心配してくれるの?
きっとめちゃくちゃ忙しくて疲れてるはずなのに、本当に…ごめんね。
公園に着いて待ってたら、正孝君が息を切らしながら私の前に現れた。
駅からここまで走って来てくれた?
小さな夜の公園には、今日も誰もいない。
全くの2人だけの空間。
荒くなった息遣いが治まらないうちに、
『ごめん……待たせて』
って、優しい声で言ってくれた。
正孝君、全然、変わってない。
ううん、見ない間に男らしさがずいぶん増した気がする。
お父さんの会社に就職したって言ってたけど、何ていうか……すごくカッコいい。
再会して、改めて思った。
私をフッた彼氏よりも、正孝君は何倍も何万倍も素敵な人だって。
学生時代は、たぶん、この見た目に慣れてしまってたんだろうか。
目の前にいるこの人は、息が乱れてても、まるで白馬の王子様みたいにキラキラしてて、公園の薄暗さの中でも眩し過ぎる程輝いて見えたんだ。
『真美ちゃん、何かあった?』
真剣な眼差しで私を見る。
『正孝君、仕事は? 大丈夫だったの? 急に……ごめんね』
私の声は少し震えてる。
『謝らなくていいよ。今日は、仕事が早く終わったんだ。だから電話した。最近、ずっと残業だったから。早く連絡したかったけど、真美ちゃんの携帯通じないし、お父さんの会社も遅い時間だと誰も出なかったから』
『ごめん……』
私は頭を下げた。
本当に申し訳ないと思った。
『心配した』
ポツリとつぶやいたその一言に、私は胸がキュッとなった。
『正孝君、私ね……一緒に日本に戻ってきた彼氏に……すぐにフラれたの』
『えっ?』
『5年も付き合ってた彼女がいたのに、私と付き合ってたんだって。それなのに私にプロポーズしたんだよ。ひどいと思わない? 情けなくて笑っちゃうよね。本当に……ひど……いよね』
涙が、どんどん溢れる。
無理に笑おうとした私のこと、正孝君はギュッと抱きしめてくれた。
本当に、いつだって優し過ぎる。
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