💙side
わかってくれていると思っていた。気持ちなんてわざわざ伝えなくても。
3月のある日。
俺は、好きな人の誕生日を待たずに失恋した。
その終わりは突然。
事を済ませた後の、熱が少しずつ引いていく褥の上で。俺は、涼太の言葉に己の耳を疑った。
❤️「好きな人が出来たから、もう家には来ないでほしい」
💙「え………」
好きの始まりは、子供じみた告白なんかじゃなくてもいいと思っていた。俺たちはもういい大人だし、身体の関係から始まる場合だってある。
そう自分に言い聞かせて、涼太に初めて求められた時に俺は特に抵抗しなかった。
男に愛される屈辱も痛みも、全て簡単に喜びに変換するほど、俺は涼太に求められたことが嬉しかった。
それからは溢れる好きがバレないように、なるべく顔に出さないように、わざと素っ気なくして、付き合った。
涼太が疲れているのも無視して何度も我儘を言った。振り回した自覚ももちろんある。
それでも、必ずついてくると思っていた。
俺たちの間の主導権は、常に俺の側にあって、今まで涼太の気持ちなんかこれっぽっちも考えたことがなかった。
そうして長く付き合っていくうちに、いつのまにか涼太は俺に何も求めなくなり、求められなくなった自業自得で愚かな俺も当然涼太に何も返せなくなった。
それでも俺は本当に心の底から涼太のことが好きで、付き合う相手は涼太しか考えられない。
涼太にちっとも優しく出来なかったくせに、一生隣りにいるのは自分だと、子供のように純粋にそう信じていたのだ。
涼太に家に来るな、と言われた瞬間。
まず頭の中が真っ白になって、言葉の意味を理解するのに時間がかかり、これはもしかして聞き間違いか、悪い冗談じゃないだろうかともう一度涼太を見た。
涼太の目は真剣で、俺への罪悪感からか、酷く辛そうに見えた。
さっきまでの自分たちを思い出す。
涼太はいつも以上に俺を優しく扱い、愛し、最後には二人で悦びを感じていたはずだ。
キスもした。
キスって、好き同士じゃないとしたくならないものではなかったか?
この数分間を思い出したことがきっかけになり、ここ数ヶ月の、いやもっと前からの、二人の記憶が立て続けに頭の中にフラッシュバックした。続いて、理解が追いつき、突如訪れた大きな悲しみに思わず涙腺が緩みそうになり、何とか顔を背けて堪えた。
泣くもんか。
絶対に涙なんか見せてやるもんか。
俺は唇を噛み締めて、足元にあったバスローブを羽織り、ベッドを下りた。
💙「了解。うまくいくといいな」
声が震えないように気をつけながら、俺はシャワーも浴びずに服を着て、そのまま涼太の家を後にした。預かっていた鍵は、玄関に置いて出た。
コメント
4件
ありがたいことだけど、👍早いです😅出した後、文章修正したりもしてるから、落ち着いて読んでほしい🤣🤣
切ない始まりだぁ 続き楽しみ♪