どぞ
第4話「罪と記録」
夜の監視塔は静かだった。
訓練帰りのセツナは、偶然ひとつのドアが開いているのを見つけた。
中にいたのは情報部幹部——ショッピ。
照明もつけず、彼はひとつの端末を覗き込んでいた。
「……それ、監視ログですか?」
言葉をかけた瞬間、ショッピは動きを止め、こちらを振り返った。
「黒瀬セツナ。用件は?」
「いえ、ただ……さっきの演習データが気になってて」
「演習データ?」
小さく笑い、ショッピはモニターの一部を映した。
そこに映っていたのは、過去の記録——既に処分された兵士たちの戦闘映像だった。
彼らは皆、14歳から16歳。
セツナと同じ年頃だった。
「これは、ラグナ・プロトコルと呼ばれた作戦の映像だ。君と同じくらいの少年兵を“試験的に運用”した国家の記録」
「……どうしてそれを、僕に見せるんですか」
「偶然だよ。君がここに来たことも、画面にその映像が出ていたのも、全部」
そう言いながら、ショッピは真顔で言った。
「だが君は、それでも“見る側”でいられるか?」
⸻
その夜、セツナは自分の手のひらを見つめていた。
この手は、命を奪った。
そして、国家にとって“都合のいい駒”だった兵士たちと、何も違わなかった。
違うのは、生き残っていることだけだった。
あはは