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#不倫
#離婚
#ヒトコワ
莉奈は、言葉通り黙々とルーツ・ガーデンの草むしりやトイレ掃除をこなしていた。
かつてブランド品で身を固めていた指先は泥に汚れ、爪は短く切り揃えられた。
その姿は、数字という虚構に踊らされていた女が
初めて「現実」を掴もうとしているようにも見えた。
そんな折、私の元にスイスで開催される「世界経済再生フォーラム」への招待状が届いた。
黒田が失脚し、混乱を極める世界市場。
名だたる大富豪や各国の大臣たちが
ルーツ・ガーデンが提唱する「信頼の計数化」という新しい解を求めていたのだ。
「詩織さん、これはあんたが世界を『買収』するチャンスだ。俺のシステムを全言語に対応させた。これで準備は完璧だ」
海斗が、晴れやかな顔で端末を閉じた。
彼はその日の朝、ある手続きを終えていた。
直樹の姓を捨て、母の旧姓でもない、新しい「自分自身」の名前───
「海」として生きるための改名。
直樹の息子ではなく、一人の開拓者としての再スタートだった。
私は、父の万年筆を胸に、世界の頂点へと続く壇上に立った。
そこには、かつて父や私を「取るに足らない小作人」のように扱った資本家たちが、固唾を呑んで座っていた。
私は、スクリーンに父の名簿と、莉奈が泥だらけの手で握っていた一円玉を映し出した。
「これからの世界に必要なのは、巨大なレバレッジではなく、隣人の努力を肯定する『一円の証言』です。ルーツ・ガーデンは、今日から全世界の経済を、誠実さという名の資本で再定義します」
会場は静まり返り、やがて地鳴りのような拍手が巻き起こった。
一人の「サレ妻」の復讐劇が、世界経済の「最終決算」へと昇華した瞬間だった。
【残り4日】