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残された善悪とコユキはと言えば、とても普段通りに待っている事など出来なかった。
とは言え、本堂で七人が、大変な術式に魔力も技術も集中しているすぐ外、境内で賑やかに戦闘訓練をする訳にもいかない。
落ち着かない気持ちを誤魔化す様に二人で出来る時間潰しを始めるのであった。
最初に始めたのはトランプゲームであった。
とは言っても、ツイッターを使って陰謀論的な事を匂わしたりする訳ではなく、シンプルにババ抜きであった。
が、二回もやると、毎回最後の方でババが行ったり来たり、最終的には丁半博打(ちょうはんばくち)の様に『さあ、どっちだ?』と無駄に悩む時間が多くなってしまう事が分かり、止めた。
それから、あっちむいてホイ、なぞなぞクイズ、叩いて被ってジャンケンポンと繰り返して行き、程無くしりとりへと辿りついた。
普通にやっていてもなかなか勝負が付かないので、動物や食べ物、植物、有名人などの無茶な縛りをして時間を潰していった。
途中で簡単に夕食を済ませてからも、しりとり勝負は続き、一旦茶糖家の様子を確認に行った後は、珍しくコユキも幸福寺に戻ってきて、スプラタ・マンユの皆が無事探索を終えるのを、寝ずの番よろしく、待つ事にしたのであった。
日付も変わろうとした頃、しりとりに飽きた二人が、不毛の極み、頭とりをやっている時だった。
「あくま」
「あらいぐま」
「あわおどり」
「あさるとらいふる」
「あくあ」
「あるつはいまー」
「あ! オルクス君!」
「ん?」
「フゥー、ワカッタ、ヨ…… ツカレタ、ツカレタ」
言葉とは裏腹に、元気一杯の感じで居間に入ってきたオルクスとは違い、後に続いた六人は顔を青褪(あおざ)めさせて、明らかに魔力枯渇(こかつ)状態であった。
恐らく、オルクスを術式による探索に集中させるために、残りのメンバーが全ての魔力供給を担(にな)ったのであろう。
それにしても、全員揃って枯渇するとは、たぶんオルクスが他人の魔力だと思って、ばかすか消費したのではなかろうか。
「ツイデ、ニ、ホカノ、クラック、モ、サガシタ、ヨ…… カンケイ、ナカッタ、ケド」
案の定だったな。
善悪が労い(ねぎらい)の言葉を口にする。
「みんな、お疲れ様でござる、まあ、お茶でも飲んで一息つくのでござる」
そう言って淹れ直した緑茶を注いでいった。
「んで、何処だったの? 魔界の入り口って」
コユキがオルクスに聞くと、オルクスは隣に座っているモラクスに顔を向けて一つ頷いて発言を促した。
モラクスは飲んでいたお茶を座卓に置くと、疲れた表情を引き締めながら言葉にした。
「クラックが存在するのは富士山麓、六合目でございました、因(ちな)みに富士宮口五号目から西に数キロ移動した位置でございます」
「富士山でござるか」
「割と近く、ってか県内なのは助かるわね、正直独りで遠出って精神的に結構辛いものがあるのよね」
神妙に返した善悪に対して、コユキは距離の近さを喜んでいる、メンタル強過ぎである、だって魔界だよ、魔界。
ここでモラクスは二人が予期していなかった提案をしてきたのである。
「いえ、今回はコユキ様だけではなくて、善悪様、のみならず、我等兄弟も同行いたします、お一人ではございませんよ、コユキ様」
「うほぉ! みんな一緒か! よっし、じゃあ、準備が出来たら乗り込もうじゃない!」
独りじゃないのが余程嬉しかったのだろう、コユキは続けて大きな声で宣言した。
「いざっ! 魔界へ!」
「で、ござる!」
「「「「「「「マラナ・タ」」」」」」」