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本当に……
あんなことさえなかったら、今頃もう少しまともな恋愛をして、結婚だって……してたかも知れないのに。
『トラウマ』
そんな言葉で私の人生を縛りたくはない。
できることなら、私に取り憑いてしまった悪夢をさっさと消してしまいたい。
『美味しいよ。毎日、雫が焼くパンを食べたい』
ある意味、プロポーズだと思った。
涙が出るくらい嬉しくて、私は彼に抱きついた。
まさか……
私以外にも付き合ってる女性がいるなんて、微塵も思ってなかったから。
『本当は、パンよりご飯の方が好きなんだ』
彼はとても綺麗な女性を連れてきて、私にそう言い放った。
ご飯屋さんで働くその人と結婚したいと思ってるからすぐに別れてくれって……
あまりにも突然で、何が何だかわからなかった。
しばらく体が動かなくて、でも、少しずつ自分が裏切られたんだと悟った。
ようやく全てが理解できた時、嘘みたいに涙がどんどんこぼれ落ち、私は2人の前でみっともなく……泣いた。
それからは、何日経ってもなかなか立ち直れなくて、ただつらくて悲しかった。
『もう二度と恋なんかしない』
そう誓ってしまうくらい落ち込んだ。
そんな時、落胆した私を見かねて、あんこさんはたくさんのパンを作ってくれた。
愛情のこもった美味しいパンと、周りの人達の温かい励ましで、私はなんとか少しずつ元気を取り戻していった。
本当に、みんなには感謝してる。
恋なんかしないっていうバカな誓いは、そんな周りの人達の優しさで破られたんだ。
だけど、現実は想像以上に厳しかった。
なかなか勇気が出せないまま、もう25歳になって。
私だって胸がドキドキするような、小説や漫画みたいなキラキラした恋がしてみたい。
恋愛の1つや2つにちゃんと向き合いたい。
でも、結局は、誰かを好きになることができなくて、それに、こんな私を好きになってくれる人なんて……どこにもいなかったんだ。