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翌日の夜、富貴さんからLINEが来た。
「昨日はありがとうね、あの、子どもの父親にはすごく喜んでもらえたんだけど、結婚とかはまた別の問題だからって言ったらこの世の終わりみたいな顔されたわ」
「そりゃ、富貴さんのこと好きなんだよその人」
俺は苦笑した。実際、まともな男なら、好きな女の人が自分の子を生むとなったら、できるだけのことをしたいだろう。
「そうなのかなあ? あ、他の人には言わないで欲しいけど、和泉くんには言うね、相手江井さんなの」
「あっそうなの!?」
「付き合うには楽しかったけど、結婚はまた別かなって、あの人バツイチだし」
江井さんは今40前半で、確かにバツイチだが。
「でも江井さん、離婚原因、奥さん側の浮気だよ?」
江井さんはそういうことを自分から話す人ではないが、デリカシーの概念を知らない部長が江井さんに「お前嫁寝取られたって!?」とクソデカボイスで話しかけていて、江井さんが困っていたので知っている。ていうか浮気相手が社内のイケメンだったから、社内全体の噂になってたし。
で、そのことを、富貴さんは全然知らなかったらしい。
「えっそうなの!? 江井さん、自分がさみしい思いさせたからしか言わなくて」
「仮に江井さんがさみしい思いをさせたとして、浮気まで行くのは奥さんのほうが悪くない? さみしいなら、江井さんにそう言って怒ればいいんだしさ」
「それはそうだわ、え、そうだったんだ……」
「江井さん、転職決まったあとも俺が困らないように仕事叩き込んでくれるような優しい人だ、ってことは確実に言えるよ。実際一緒に住むかどうかは別にしても、江井さんは別に結婚に不向きな人じゃないと思う」
「まあ、そうねえ」
その時はそれで終わったのだが、後日、江井さんホストのリモート打ち合わせの時、いつものように早めに入っていたら、江井さんも早めに入ってきてめちゃくちゃ感謝された。
「和泉くんが口添えしてくれたおかげで富貴さんと籍入れられそうだよ! 本当にありがとう!」
「いや、口添えなんて大したことはしてませんが……」
「でも、和泉くんが私のことを推してくれなかったら絶対に無理だったよ!」
「まあ、江井さんにとっていい決着なら良かったです」
ところで、富貴さんが独身とわかってからの千歳には大いに抗議された。
『お前なあ、なんで前に富貴さんが独身って言わなかったんだ、今別の種妊娠中でも、口説いて一緒になれば次はお前の種で産んでくれるかもしれなかっただろ!』
「いや、精子バンクで子供産もうって時点で男いらない女の人じゃん、無理だよ」
『そもそもお前が学生の時の富貴さんのプロポーズにハイって言ってればワシは困らなかったんだぞ!』
「そしたら俺はこの辺に越してきてないから、そもそも千歳と出会わないよ」
『くそっうまくいかん!』
千歳は頭を抱えた。
……富貴さんのプロポーズにハイって言ってれば、俺はそれなりに幸せに生きられたと思うし、もしかしたら今頃子供もいたかもしれない。
でも、俺は、千歳と出会わなかった人生は、もう考えられないよ。
コメント
1件
読んだよ〜!!😭💕✨ ふたりをちゃんとくっつけた和泉くん、マジでいい人すぎるでしょ…!江井さんのこと「優しい人だ」ってちゃんと伝えてくれたのがエモい。そして最後の千歳とのやりとりで「俺は千歳と出会わなかった人生は考えられない」って言うところ、完全にキュン度MAXでした…!😭💖 今がいいと思える選択って、すごく尊いね。
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