コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「なぁ・・・今夜お前さんの独房に行ってもいいだろ?そろそろ俺の想いを受け止めてくれてもいいんじゃねぇか?」
チュンが百合の肩を抱き寄せる
「まぁ・・・今夜はダメよ」
「どうしてだい?他に良いヤツでもいるのか?殺すぞっっ!」
チュンはムッとして眉を寄せ、一瞬で殺人鬼の本性を現した
「だって今夜は入浴の時間がないでしょ?明日の夜ならいいわ、二人の初めての夜は綺麗な私を見せたいの」
デレデレチュンは鼻の下を伸ばした
デヘへ・・・「なんだ・・・乙女心ってヤツか、あいにく俺は体は女だが心は男なんだ、分かった!明日の夜な」
チュンの目は今まで何百人の男が百合を見てきた目つきだ、なるほど・・・チュンは体は女だか実際には男なのだろう、こんな人間もいるのだ
初めて会った時から、すかさず本能でそれを感じ取った百合にとって、チュンを手玉に取るのは簡単だった、おかげで刑務所では、チュン・リーの息のかかった百合に誰も手出しはしなかった、百合は優しくチュンの頬にキスをした
「女同士は初めてかい?」
「ええ・・・色々教えてね・・・」
「俺と寝たら、男なんか眼中に入らなくなるぜ、リーファン・・・俺お前に夢中だよ」
「明日の夜を楽しみにしててね」
「待ちきれねぇぜ」
百合はチュンにしなだれかかった
「やべっ!クソ監修が来た!早くそれを隠しな!」
「うん!」
女監修が怒りで顔を歪ませてこっちにやって来た時にはもうチュンは洗濯室からいなくなっていた
「黙れ!黙れ!ただ口を閉じやがれ!許可された時以外は止まるんじゃねぇ!働け!働け!!わかったか?このうすのろども!!」
その剣幕と言葉使いに初めはショックをうけていた百合も今では慣れっこだ、チュンから貰った茶色の包みを百合はその夜、洗濯物の中へ隠して自分の独房へ持ち帰った
・:.。.・:.。.
朝方・・・真っ暗な独房で百合は一人・・・チュン・リーから貰った、茶色い包み紙を開けた
そこには黒光りした拳銃、「ベレッタM9」と「パラベラム弾丸」が3発入っていた、それと見覚えが有りすぎる小さな紫の小瓶・・・『リキッド・エクスタシー』も入っていた
百合は小瓶の蓋を開け、クイッと一気に飲み干した、途端に世界がいくつも割れ、万華鏡のように様々な方向へ回り始めた
キラキラ・・・
「きれ~い・・・」
百合がうっとりと回る世界の幻覚を眺めていると、やがて、背の高いさっそうとした男性が百合の前に現れた、百合は満面の笑顔で男性に囁いた
「会いたかったわ・・・隆二」
初めて妖精の滝で愛し合った頃の彼が百合に微笑んだ、相変わらず目も覚めるほどのハンサムだ、彼を見ているだけで百合の心は幸せに震えた
「殺しちゃってごめんなさい・・・でも、そうせずにはいられなかったの」
百合の言葉に光に包まれた隆二はニッコリ微笑んだ
―今となってはどうでもいいことさ―
・:.。.・:.。.
「愛してるわ、隆二」
―俺もだよ―
・:.。.・:.。.
百合はさらに隆二に囁いた
「生まれ変わったら・・・今度こそ、私だけを愛してね」
―約束するよ・・・さぁ・・・おいで―
・:.。.・:.。. ・:.。.・:.。.
百合は冷たいベレッタの銃口を自分のこめかみに当てた
・:.。
朝方、刑務所中に銃声が響き渡った時、チュン・リーはガバッと独房の中で飛び起きた
サイレンが鳴り、監修達がバタバタと百合の独房へ走って行く
クソッ
「あのっ!バカっっ!!」
チュンは親指を噛み、そっと涙を流した
・:.。.
銃の引き金を引いた瞬間、同時に激しい痛みが百合の頭を貫いた
しかし血だまりの百合の肉体から魂が解放された途端、彼女は目の前で両腕を広げている隆二の腕の中へ飛び込んだ
二人は満面の笑顔で見つめ合った、百合は涙を流しながら何度も彼の名前を呼び、力いっぱい抱き着いた
二人は光の塊となって、とても幸せそうだった、やがてぴったり唇が重なり、空中をグルグル回りながら暫く漂ったのち・・・
そのまま闇と静寂の彼方へ去って行った
・:.。.・: