テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
理化学実験準備室のシンクは広くて深い。
野草を洗うには、大変適している。
僕が洗った蕗を、2人が葉っぱと茎に分ける。
終わったら、葉っぱはとりあえず保留。
茎は塩をまぶして、まな板の上をごろごろ転がす。
この作業を板ずりというそうだ。
そして茎も、別の鍋で茹でる。
この部屋の実験用ガスバーナーは、見た目にも火力が強い。
あっさりお湯が沸く。
5分位したら、どっちも火を止めて水にさらしてと。
「悠さんは葉っぱを刻んで下さい。彩香さんは、私と一緒に茎の皮を剥いて下さい」
美洋さんの指示で、作業を進める。
不在だった川俣先輩が部屋に入ってきた。
手には、地元スーパーの白い袋を持っている。
「鶏の挽肉。こいつが入った方が、個人的には美味しいと思うぞ。鶏肉が苦手なら別だけれどさ」
「すみません、ありがとうございます」
フキという言葉と、用意してある材料で、何を作るかを読み取った後、
わざわざスーパーまで買いに行ってきてくれた訳か。
流石先輩。
「なら、まもなく葉っぱの方を刻み終えると思いますので、先輩、そちらの方の調理をお願いしてよろしいですか。鶏肉は茎用にも残していただけると嬉しいです」
「了解。葉っぱの方が少なめで大丈夫だろ」
という事で、葉っぱを刻んだ後は、僕と先輩が選手交代。
「葉っぱの方が佃煮、茎の方が煮付けでいいな」
「その予定でした。ありがとうございます」
「なら、茎の方も下準備だけしておくぞ」
先輩は、大きい鍋をそれぞれガスバーナーにかけ、鶏胸挽肉を投入。
油を敷かないで、直接炒め始める。
そして、小さい鍋に刻んだ葉っぱを入れ、まな板を洗って。
「そろそろ剥き終わりそうだから、まな板を渡すぞ」
「ありがとうございます」
「そして、炒まったお肉の一部を、こっちに入れて、だ」
大鍋の方は火を止め、そして小鍋の方に火を付け、
小鍋の方は、お肉を葉っぱと混ぜながら、みりんと醤油を入れた。
「こんなものかな。普段は蕎麦つゆで手抜きするからなあ」
「あ、そうすれば、もっと簡単なんですね」
先生は自分の仕事をやりながら、時々こっちを笑顔で見ている。