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気絶させた男達を縛り付けて攫われた子供に振り返る。
「大丈夫?」
地面にペタリと座り込んだ子供は唖然(あぜん)として僕を見上げる。
男の子だろうか、白い肌に澄んだ薄水色のボブに水色に近いアンブリゴナイトのような透き通った黄緑色の瞳がよく映えている。
見る人によったら女の子にも見えるかもしれないな。
何処か儚さのある雰囲気を纏った男の子だ。
例えるなら輝く霧のようだな。
「あ……ぁ、あり、がとう……」
「どう致しまして、次からはしっかり護衛を近くに置いてくださいね」
そう言って踵(きびす)を返そうとしたら袖(そで)を掴まれた。
「?」
「あ、の…な、名前は……」
「あぁ、初めまして僕はアビュラル公爵家令息のリースです。年は8つです」
「俺は*ルティーサ・ネオン・ウィーリア。この国の第二王子だ。年は同じだ」
「…………え?」
オウジ???コノクニノ?ダイニ、オウジ…
えええ!?王族の王子様ですか!?
バッ
「す、すみません!王子様とは知らず御無礼を!」
僕は咄嗟(とっさ)に片膝をついて頭を下げる。
やばい。完全にやらかした。
王族に初対面でタメ口、上から見下ろしたり、身体に触れてしまった。
図に乗っていると言われるだろうか?
間違いなく不敬に当たる。
間違いなく罰せられてしまう。
僕だけだと良いが、家族にまで罰が下れば会わす顔がない。
「いや、気にしていないよ。…ありがとう」
お、御礼を言われた?王族に?王子様に?
し、心臓の寿命縮む…助けて()
「い、いえ僕は何も……」
「いいや、君のお陰で俺は助かったのだ。心から感謝しているアビュラル公爵令息」
「は、勿体なき御言葉です」
「……ところでその敬称(けいしょう)と敬語を外してくれないか?同い年だし仲良くしようじゃないか」
「い、え…と、それは……」
王族にタメ口で話せと???
そんなの恐れ多すぎて本当に胃が痛む……。
僕の首とか飛んでいかないか?
そこの保証はあるのだろうか???
僕が言葉を濁(にご)していると、王子様はしばらく考えた後、僕に向く。
「アビュラル公爵令息」
「…は、い」
「これは王子命令だ。敬称と敬語を外して俺の事はルティーサと呼べ」
と、悪戯な表情で言う。
王子命令を使うだなんてズルいじゃないか…!
「わ、分かりまs……分かった…では、僕の事も気軽に、呼んでくれ……ルティーサ様」
僕がそう返事すると王子様……じゃなくて、ルティーサ様は満足気に頷いた。
「本当は”様”も取って欲しいのだが、立場上しかたない……これからよろしく、リース!」
「よ、よろしく……ルティーサ様……」
出された右手に戸惑いながらも、恐る恐る手を重ね握手を交わす。
僕は女だという事を家族と家と自分のために隠している。
___絶対にバレてはいけない。
だから、大人しく、目立たず生きて行こうと、そう思っていたのに……
何故こうなる。僕が何をしたと言うのか。
ルティーサ様とは、これきりであまり会わないことを切実に願う。