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[深夜の部屋、モニターの前]
俺はぼんやりと、薄暗い部屋の中でモニターを見つめていた。ニュースサイトには大きな見出しが躍っている。
「ファンボック!、内部不正と殺人教唆疑惑で事務所解散へ」
「13年前の暗殺計画、告発動画が引き金に」
視線をずらすと、SNSには俺の投稿がまだ議論の的となっている様子が映し出されていた。
誰も真実なんて知らない。誰も俺の計画が何だったのか気づいていない。
俺が動画の台本を書いていたとき、すでにその結末は決めていた。ファンボック!が皇様を恐れて暗殺を計画していたという話、それ自体は俺の作り話だ。けど、それがどれだけ大きく広がるかは予想以上だった。
すべては「復讐」だった。
いや、「贖罪」かもしれない。
「結局、俺は何も変えられなかった。」
モニターの前で呟く。震える声が部屋に虚しく響いた。
ファンボック!は潰れた。
それだけじゃない、皇様が築き上げた夢も、ファンの希望も、すべてが崩壊した。
俺は皇様の推しとして、最悪の形で彼女の事務所を壊滅させた。
「俺がやったことなんて、ただのデマ情報でしかなかった。それで推しの世界を壊しただけだ。」
拳を握りしめても、その震えは止まらない。俺の中の何かが欠け落ちたような感覚だけが残る。
あの時、俺が彼女を殺したことに気づいてしまった瞬間。
彼女が「皇様」だったと知った瞬間。
「なんで俺が……」
何度も頭の中で繰り返した問い。それでも答えは出なかった。
だから、俺は自分に課す罰として、彼女の事務所を潰そうと決めたんだ。
俺が壊すことでしか、彼女のためにできることはないと思ったから。
俺の顔はどこか泣きじゃくったように濡れていた。
感情なんてとっくに捨てたと思ってたのに、どこかで「後悔」というものがまだ残っていたのかもしれない。
モニターには、自分の告発動画の再生回数が映っている。100万再生を突破していた。
「なんとかごまかせたみたいだな……」
デマ情報を本当のように信じ込ませることに成功した。社会は俺の作り話を信じ、ファンボック!を糾弾した。
けど、その代償は大きかった。
「皇様、ごめんな。」
その言葉だけが空気に溶けて消えた。
モニターの光が薄暗い部屋を照らしていた。やがて電源を落とすと、部屋は完全な暗闇に包まれた。
推しの事務所を潰した俺に、何が残ったのかなんて、もう考える気も起きない。
ただ、この静けさが、俺にとっての罰だと感じていた。