「黒崎隊長、入ってもええですか?」
隊長の自邸に響く俺の声。書類の判子が抜けていて戻ってきた書類に再度判子を貰おうと書類作業を抜け出して…一旦中断して訪ねた。けれど、隊長はどこにも居ないし、見当たらない。
霊圧探ると一番奥の部屋から微かに霊圧を感じた。
自邸には好きな時に来て良いと言われていたから門を潜れたものの、流石に部屋に勝手に入るわけにはいかない。
部屋の前の廊下から声をかけても許可が降りない。
普段の隊長なら裸の時以外だったらほぼほぼな確率で直ぐに許可が降りる。それなのに襖の奥からはうんともすんとも声が聞こえてこない。
「黒崎隊長、おります??」
やっぱり返事がない。急用でもないから今じゃなくても良いけれどもし、隊長が何かあって倒れていたのだとしたら一刻を争うことになる。
何もなかった場合、罰は後でたんまり受けます。そう誓って腰に携えておいた斬魄刀に手を添えながら襖を思い切り開けた。
部屋を見回すと、隊長は縁側に座り外を眺めるように柱にもたれ掛かっていた。その姿はまるで人形のようで、萱草かんぞう色の長く美しい髪を真下に下ろし、黒装束に腕を通している。
それが五番隊隊長黒崎一護だった。
「隊長?」
急いで近づき顔を覗く、閉じた瞼、それに連なり下を向いた長く細い睫毛。少し開いた口からは穏やかそうな小さな寝息が聞こえた。
何事もなく寝ていただけだったことに力が抜けて安心した。
寝ていたとは…そう思いながら顔を上げた。
隊長の直ぐ横には壁に立て掛けられている木刀があった。その木刀は所々錆色のように変色していて、しかも刀身にはささくれや欠けた部分も多くある。
隊長の中でも、八番隊の京楽隊長や十三番隊浮竹隊長と並ぶ程の有力者でありながらもそれを鼻に掛けるでもなく、1人兀々こつこつと人目が付かない所で楔を打ち続けるような死神だ。
人のいる所では弱みも悩みも何もかもを隠して穏やかに笑う、そんな隊長。
だから非番の日だというのにも関わらず黒装束を着て木刀を振っていたのだろう。
それこそ血が滲むほどに。
誰かを護るために強くならなくては。と隊長はいつも言うけれど、これではいつか自分が先に壊れてしまうんじゃないか…隊長を見るたびにそんな考えが頭を占領する。
不器用だけど其の根幹には計り知れないほどの優しさが溢れている。困っていれば手を差し伸べて、手を伸ばさなくても手を取ってくれる。
別名、護廷一のお人好し隊長。そんな隊長に救われて憧れを抱くものも少なくはない。いやむしろ多い。
他の隊長、副隊長にすら頼られるレベル。
「せめて副の俺には、少しぐらい頼ってほしいんやけどなぁ…」
副隊長と隊長では格差が天と地ほどある。だからと言って肩を並べようと他の隊の隊長になろうとは思ったことはない。
まぁ、そもそも俺はこの隊長の下で働きたいのだ。俺は黒崎隊長だからついて行きたいのだ。隊長の側にいて、隊長の後を歩きたい。支えさせてくれないけど背中を護る手伝いくらいはさせてほしい。
それが俺の願い。
他の隊長など眼中にない、興味などない。
そう思うほどに慕っている。
まぁ、そんな事をひよ里にボヤいたら「キモいわ、ハゲ。」とド直球に貶されたけど。
『平子さんのそれは、慕したいの忠誠ですか?はたまた恋慕の情なんスカ?』
ふと頭には茶を啜りながら俺を見てニヤニヤと笑う浦原の声が響いた。
「どっちなんて、俺にもわからんわ。」そう呟いきながら隊長の後ろで綺麗に畳まれていた隊長羽織を掴み、そっと肩に掛けた。羽織の下に入った髪を掬い羽織の外に出す。
あぁやっぱりこの人以上にこの羽織が似合う人を俺は知らん。
さて、日差しの元で夢を見ている隊長のために俺はお茶でも淹れてこようか。そう思い足を上げて部屋を後にした。
ーーーーーーーーー✂︎キリトリーーーーーーーーー
軽ーい設定
黒崎一護
五番隊隊長
京楽や浮竹よりも後に霊術院を卒業して、スルスルと隊長になったヤベェ人。
木刀は一心さんから小さい頃に貰ったものを今でも丁寧に使ってる。
流魂街で倒れそうになった平子を抱えて自邸でお粥を食べさて、回復した平子の霊圧を見て優秀な死神になると思い誘った。
髪は願掛けとして伸ばしていて、普段はポニーテールか低い所で一纏めにしている。
引くほどお人好し。
更木の手綱を握れる珍しい人。更木と対戦した時は月牙天衝を使うことなく圧勝してしまった。対戦後に傷一つもつけずに黒装束に付いた砂埃を払った後に更木の応急処置をした。
休憩も無しに笑って書類作業をしていることもある、ワーカーホリック。休んだほうがいい。
平子真子
五番隊副隊長
流魂街で空腹でぶっ倒れそうなところを一護に拾ってもらった今作の主人公。
他のところで隊長にならないかと推薦が出ているけど、全部断っている。既に隊長格の力は持ってるけど一護の側に居たいが故に努力を惜しまない。
頭いいけど隙あらば仕事をほっぽって一護の側に行こうとしている。一護は笑って許してるけど後々ひよ里にドロップキックを喰らってる。
霊術院では一護に恩を返そうと死ぬ気で勉強しまくった、まぁもう死んでるけど。
両親は知らないし、自分が元々どこの流魂街にいたのかも覚えていない。
一護の事が恋愛の方で好きと自覚しているけれど、自分が抱いている思いが恋愛でのものか忠誠心なのかよく分かってない。
一護の事が好き。多分拾ってもらった時に一目惚れしてるんだろう。
浦原喜助
五番隊三席
胡散臭い下駄帽子
一護に興味を持って五番隊に入った、他の隊から推薦が来ているけど今の所は全て避けている。
そのうち夜一さんに連れられて二番隊に入れられる。仕事が嫌いだけど、色々作るのが好き。
研究が恋人。
平子とは霊術院で同じクラス(一組)だった、まぁまぁ長い付き合い。
猿柿ひよ里
平子よりも後で一護に拾われた。10年か20年ぐらい後。
口癖はハゲ、平子のことは真子呼び。
一護には恩を感じているけど、それより平子がウザい。側から見れば仲が良い。
平子と浦原と三人でよく甘味処に行ってる。
浦原と気が合うけど、多分ソリが合わない。
平子はハゲ。
一護はめっちゃ強い師匠と思ってる。
五番隊で一番まともかもしれない死神、仕事はちゃんとするし、休憩も適度に取る。
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