テラーノベル
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拓人の墓参りを終えた二人は、公園墓地からほど近い海岸へ立ち寄った。
快晴の空には、陽光が降り注ぎ、海と空を結ぶ水平線がクッキリと見える。
かつての上司に手を繋がれている優子は、海に視線を伝わせている、端正な顔立ちを見上げた。
「どうした? 優子」
彼が彼女と向き合い、唇を緩めている。
「専務。今日、アイツのお墓参りに誘って下さって、ありがとうございます」
軽く会釈をした優子が、吹っ切れたように笑みを覗かせた。
「なぁ優子。もう俺の事を専務って呼ぶの……やめてくれ……」
「すみません。やっぱり元上司だから……つい……」
海風で顔に纏わりつく髪を、優子は大雑把に搔き上げる。
「俺と優子は…………互いの想いを通わせただろ? だから……また俺の事を…………廉って呼んで欲しい」
「はい…………廉……さん」
照れながら微笑む優子を、廉はそっと抱きしめた。
「来年から、優子の皮革工房も丸山町に移転して、俺の部屋で、君と一緒に暮らせる。公私共々、忙しくなるが、楽しみだよ」
「…………私も……楽しみ…………です……」
廉の腕に包まれながら、優子が、はにかみながら言葉尻を窄めた。
「あ。今、間があったな? 俺と一緒にいる事に迷ってるんだろ」
「そっ……そんな事ありませんっ」
ムキになって答える優子に、廉が、ハハハッと笑う。
「それにしても、優子が拓人の墓前に言ってた言葉だが…………いつもあんな調子で二人は会話してたのか?」
「はい。こんな事言うのも気が引けるのですが…………アイツの前では、気取らずに、素の自分を曝け出してたので。昔の私は、男性の前で『いい女』を気取っていましたが…………本来の自分を引き出してくれたアイツには…………感謝してます」
「…………そうか」
廉が抱きしめていた腕を緩めながら、優子の両肩を掴むと、刺すような視線を向けられた。
コメント
1件
お疲れ様でした。優子の運命ってやっぱり拓人さんの事を想い、廉さんを想いつめていくの?