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ミモリン達の元へ紳士服やメイド服を来た
羊達が幅13センチ、高さ20センチぐらいの
樽に入ったスパークリングワインを運んできました。
「あの……私まだお酒……..。」
モッツァレラ王国ではお酒は二十歳を過ぎてからでないと呑めない決まりでした。
「おや、忘れたのかい?君はもう人間じゃない。つまり人間の法律に縛られなくてもいいんだよ?」
悪い顔でバルザルドは笑いました。
ミモリンは樽からわずかに聞こえるシュワシュワ~。という音を聞きごくり、と生唾を飲みました。
(今までお父さん達に飲んじゃダメって
言われてたけど……どんな味なんだろう。
飲んでみたい……..!!!)
ミモリンはちょっぴり悪い子になってしまいました。あーあ、バルザルドのせいですね。
「ミモリン、君は今日からボクたちの仲間だ。だから君にここでの流儀を教えよう。
ここでは乾杯する時はまずこうやって
【豪快に樽の蓋を割る音】
………素手で樽の蓋を割るんだ。」
右手で軽く樽の蓋を割ったバルザルドは
そう言ってミモリンに微笑みかけました。
「今の君の腕ならきっとできるさ。
ミモリン、やってごらん?」
バルザルドに促され、ミモリンは見よう見まねで樽の蓋を割りました。
「え……えいやっ!!!!」
樽の蓋は驚くほど簡単に割れました。
(これが……私の力……?)
ミモリンは手についたスパークリングワインをじっと見つめ、強くなった自分に
少しだけ身震いしました。
ミモリンはちょっぴり悪い子になってしまいました。あーあ、バルザルドのせいですね。
バルザルドの幹部達も各々のやり方で
樽の蓋を割りました。
ヤッホーちゃんは肘で豪快に樽の蓋を割りました。
フージャはなんと踵落としの要領で樽の蓋を割りました。きったないですね。衛生面とか
考えない人なんでしょうか?
ガランドは必要最小限の力と動きで
樽の蓋を割りました。樽の蓋にピシリッと
まっすぐな亀裂が入り綺麗に割れました。
各々が樽の蓋を割ったのを確認したバルザルドはこういいました。
「そしてこれが僕ら流の乾杯だ。
乾杯!!!!!!!!」
魔王バルザルドはそう言って高々と酒樽を
掲げました。
「「乾杯!!!!!!!」」
ヤッホーちゃんとフージャは口々にそう言い
酒樽を掲げました。
ガランドは喋れないので酒樽を掲げるポーズをしました。
ミモリンも見よう見まねで皆の真似をしました。
「ざ、ざるーて…….?」
そして各々、スパークリングワインを
豪快に飲みだしました。
ミモリンはおっかなびっくりといった具合に
スパークリングワインをペロッと一舐めしました。そして目を見開きました。
そしてグビグビと豪快にスパークリングワインを飲み干してしまいました。
(なにこれッ……なにこれおいしい!!!!!!)
語彙力の乏しいミモリンはモッツァレラ王国の国王が飲むスパークリングワインに匹敵するほどの美酒をはじめて呑み、素直にそう感じました。
その様子をみたバルザルドは嬉しそうに
笑いました。
「おかわり、いるかい?」
その言葉にミモリンは
「あ……はい、すいません。」
と顔を赤くしながら言いました。
「どーよ私の山で育てたぶどうわぁ!!!!
さいっこうでしょおぉ!!?」
すでにベロンベロンに酔っ払ったヤッホーちゃんはそう言ってミモリンの肩を組みました。
「私の配下達が発酵させたんですよぉ。」
スマートにスパークリングワインを呑みながら、フージャはどこか誇らしげに言いました。
「……….。」
ガランドは酒を一滴も飲んでいません。
お酒が苦手なのでしょうか?
「あー新入りィ気にしなくていいわよ。
ガランドはゴーレムだから飲み食いしなくて
いいの。ってかできないのーゴーレムだーかーらぁー。……..アッヒャヒャヒャヒャ!!!」
ヤッホーちゃんはそう言って笑いながら
ミモリンにダル絡みしました。
すっかり酔っぱらってしまったヤッホーちゃん。
こんな調子で大丈夫なのでしょうか?
「次は前菜だ。
羊達、持ってきておくれ。」
バルザルド達がそう言うとちっちゃな羊達が
えっほえっほと前菜のバーニャカウダを
持ってきました。
バーニャカウダにはトウモロコシ、パプリカをはじめとした色とりどりの野菜が揃えられ
その野菜たちをソースをつけてたべると
ニンニクとオリーブオイルの芳しき香りが
口いっぱいに広がりました。
「あ、そうだミモリン。このおそろし山では
基本食事は手掴みで豪快に。これがこの山の流儀だ。」
そう言ってバルザルドは豪快にトウモロコシにかじりつきました。
「どうよ新入りィ!!!!私の山で作った野菜はぁ!!最ッ高でしょう!!?最高っていわなきゃ
ぶち殺すわよぁ!!!!!」
一歩間違えればパワハラで訴えられかねない
発言をするヤッホーちゃん。
しかしここは おそろし山。
おそろし山にパワハラなんて 概念は存在しません。
「あ…..すっごくおいしいです。お母さんたちにも食べさせたいくらい …..。」
なんてことなしにミモリンは言いました。
「…….フンッ。」
とヤッホーちゃんはそっぽ向きました。
「あらためて僕から自己紹介をしよう。
僕はバルザルド。このおそろし山で長いこと
不老不死の研究をしている魔法使いさ。
魔王だのとモッツァレラ王国の者達はいうけれど、僕の本分はどちらかというと研究者さ。 よろしくミモリン。」
そう言った後バルザルドは豪快にスパークリングワインを一気飲みしました。
「そしてここにいる可愛い女の子が
ヤッホー。」
「おだてても何もでないわよ。」
ヤッホーちゃんはまんざらでもなさそうに
言いました。
バルザルドは続けます。
「ヤッホーはこの山の精霊。モッツァレラ
王国の者達からしたら神様に近い存在だね。
そして僕はうっかり禁忌を犯してこの山から
出られなくなったのでここに居候させて
もらってるわけだ。」
「ほんっと随分と態度のでかい居候よねー。」
ぷいっと顔を背けながら、それでも嬉しそうにヤッホーちゃんは言いました。
これを見て、鈍感なミモリンでも流石に
(ああ、ヤッホーちゃんはバルザルド様が
好きなんだな。)
と察しました。ヤッホーちゃんは
分かりやすいですね。
「それと、こっちの胡散臭そうなのがフージャ。」
「へへっ、言われ慣れてまさぁ。」
フージャはスマートに野菜を食べながらそう言いました。
「彼は知性を持った細菌達の主だ。見えざるもの達の王にして声なき者達の主さ。 山に引きこもっていて退屈な僕らに山の外の 情報をくれたり配下達にチーズやヨーグルトを作らせてこのおそろし山に恵みをもたらしてくれてるわけだね。」
「ま、そういうわけで以後、お見知りおきを。」
どこまでも胡散臭い笑顔でフージャは言いました。
「それでこの陶器のような男はガランド。
この子は僕の異国の知り合いの魔法使いから
譲り受けた魔道具でね。これがおもしろいんだよ。」
「またでた……この魔道具好きは。気を付けなさい新入り、バルは一度 魔道具のことを
話し出すと三日は喋り続けるわよー。ほら、さっさと次の料理もってこさせなさいよ。」
呆れたような表情でヤッホーちゃんは言いました。
「あぁ、そうだねヤッホー。第一の皿を食べながらにしよう。」
バルザルドが指を鳴らすとミモリンをおしくらまんじゅうするような屈強な羊達が
ラグー•アッザ•ボロネーゼ(モッツァレラ王国のスパゲッティーみたいな料理)
をもってきました。
バルザルド達はそれを何の迷いもなく
手掴みで頬張り始めました。
ミモリンは戸惑いましたが思いきって
手掴みで頬張りました。
(おいしい…….!!!でもあれ?この肉
豚肉じゃない…….。)
モッツァレラ王国の家庭ではラグー•アッザ•ボロネーゼは豚肉を使用するのが一般的でした。しかし、ミモリンはこの料理に使われている肉が豚肉じゃないと気づきました。
そしてミモリンのお母さんから教わった
人を丸ごと食べる魔王の話を思いだしました。ミモリンは青ざめました。
(ま、まさか人肉……。)
「あぁ、この肉は屈強な羊の魔物の肉だよ。
豚肉よりも赤身の味が濃くてこっちの方が好みなんだ。」
豪快にラグー•アッザ•ボロネーゼを頬張りながらバルザルドは言いました。
「よかったぁ~……..はっ!!!」
ふと、ミモリンは思い出しました。
ミモリンを押しくらまんじゅうしていた
屈強な羊達の数が気持ち少なくなってたことに。
きっと彼らの内の誰かが犠牲になったので
しょう。
魔王が人を食べるという話も あながち間違いではないのかもしれません。
「おそろし山ではお祝い事の日にこの山で
一番屈強な羊の魔物の肉を食べる習わしなの。 ……..噛み締めながら食べなさい。」
ヤッホーちゃんはそういいながら
ラグー•アッザ•ボロネーゼを獣のように
素手で豪快に食べました。
ミモリンもつられてラグー•アッザ•ボロネーゼを素手で豪快に食べ、スパークリングワインをガブ飲みしました。
「……それでガランドの話だ。彼を作った
魔法使いは偉大な数学者だった。彼は数学と魔法を融合させる画期的な魔術を生み出した。 私は彼の魔術に興味を持ち、私の睾丸の半分とこのガランドを交換してもらったんだ。」
なぜか嬉しそうにバルザルドは言いました。
バルザルドの睾丸の価値はわかりませんが
ガランドが大変貴重な存在であることは
ミモリンにもなんとなく分かりました。
「《ガランドは数で世界を見ている。》彼を作った魔法使いはそう言ったんだ。僕も彼の真意は分からないがガランドに込められた魔術の 精密さだけはよく分かった。ガランドは与えられた命令を正確にこなすんだ。正確過ぎて 怖いくらいにね。このガランドの手入れも 掃除係であるミモリンのお仕事だから、 ゆっくり覚えていくといいよ。ガランド、 ミモリンに挨拶をしてくれ。」
バルザルドがそう言うとガランドは無言で
起立し、無言で礼し、無言で着席しました。
ミモリンはぺこりとガランドにお辞儀しました。そして
「あっはい、がんばります…….。」
とバルザルドに言いました。
「さて、いよいよ第二の皿、本日のメインだ。本日のメインは
………なんと……..!!!!溶岩竜のマグマステーキだぁ!!!!!!!!!!!」
魔王バルザルドは拳を天高く突き上げました。溶岩竜のマグマステーキが食べられることにテンションがあがってるようです。
「ィヤッホォォォァ!!!!!待ッッッてましたァァ!!!!」
ヤッホーちゃんもこれにはテンション
ぶちあげです。
「今日はついてやすねぇ。」
フージャはにやにや笑いました。
ガランドはずっと無表情のままです。
(そんなに…..そんなにおいしいお肉…..
いったいどんな味なんだろう……!!!)
ミモリンは口から零れそうなよだれを
フッサフサに毛の生えた腕でぬぐいました。
ばっちいですね。
今までの羊たちとは格の違うエレガントな
羊達が溶岩竜のマグマステーキを持ってきました。
ミモリンが肉を手で掴もうとすると、
肉汁が滝のようにジュワワ~ッと溢れだしました。
食欲に負けてしまったミモリンは 思いきって溶岩竜のマグマステーキの肉を 噛みちぎりよく噛んでからごっくんしました。
ミモリンは目を見開きました。
(これは……..!!!!!これはッッ…………!!!!!?
なんか脂身がギットリしててしつこいっ。
一口食べただけで胃もたれがしそう….. !!!)
どうやら溶岩竜のマグマステーキの肉は
ミモリンの口には合わなかったようです。
他の三人は美味しそうにムシャムシャ食べ
おかわりもしてました。ミモリンもなんとか
出された分は食べきりました。
「…..ふう、食った食った。そしたら食後のドルチェだ。これは異国でフージャが見つけてきた 《イチゴ大福》という幻のドルチェだ。 このドルチェは異国の王様でも年に一度か 二度ぐらいしか食べられない貴重な美味だ。 ミモリン、食べてごらん。」
バルザルドに促されるままミモリンは
《イチゴ大福》と呼ばれる白くて粉っぽい
謎の物体をぱくりと一口で食べてしまいました。
(何これ?なにこれなにこれなにこれ …..!!?
口の中に優しい甘さとほんのりとしたイチゴの酸っぱさが広がるッッ……!!!ドラゴン肉で
ギトギトしていた口の中が洗い流されて
口の中いっぱいにしあわせが広がるッッ!!!!
び …….び ……….)
「美味ーーーー!!!!!!!!!」
ミモリンは思わず叫んでしまいました。
フージャはミモリンが突然叫んだので
びっくりしました。
そこで、ふとミモリンは我に返って言いました。
「あの……バルザルド様…….リュカにも
…….リュカにもこの料理を食べさせてあげることはできますか……?」
バルザルドは驚いた顔をした。
そして、目を 細めた。
「もちろん。ミモリン、君がリュカに渡してくれるかい。リュカは今すやすや眠ってる。
今ならこの料理をリュカの檻の側に置いておけるだろう。ミモリン、間違ってもリュカを
起こしちゃダメだよ。君は私の心臓を移植されたからといって不死身でも不老不死でも
ないんだからね。」
「わか……りました…….。」
ミモリンはリュカのためにちょっぴりのバーニャカウダとラグー•アッザ•ボロネーゼ、
溶岩竜のマグマステーキとイチゴ大福を一皿にまとめました。
「それじゃ、魔法でリュカのとこまで送るよ。ミモリン、死ぬんじゃないぞ。」
そう言ってバルザルドはなにやら呪文を
唱えました。
リュカの檻のある部屋はパン窯のオーブンの
ように熱くただそこにいるだけでミモリンは
汗びっしょりになってしまいました。
ミモリンが前のように全身火傷まみれになっていないのはリュカがすやすや眠ってることと ミモリンがもう人間ではなくなってしまったことが原因でしょう。
(リュカ……ここに置いておくね。)
ミモリンは檻の中にそっと料理の盛られた皿を置きました。はじめて合った時から
ミモリンはどうもリュカが気がかりでした。
きっとずっとひとりぼっちだったミモリンにはずっとひとりぼっちのリュカの気持ちが
痛いほどよく分かるのです。
(あのね、リュカ。私いろんなことがいっぺんに起こってまだよくわかんないけど。
1個目標ができたよ。)
それはどんな魔法使いが逆立ちしても叶えられないほどの無理難題でした。
(いつかリュカを皆とおんなじ場所でご飯を食べさせてあげるの。私はただの掃除係だけど。いっぱいがんばるね。待っててね、リュカ。)
ミモリンはすやすや眠るリュカに微笑み、
そして魔法でバルザルド達の元へ戻って行きました。
《数時間後》
「いやー、ヤッホーもミモリンもすっかり酔いつぶれて眠ってしまったね。ガランド、持ち場に戻っていいよ。」
バルザルドがそう言うとガランドはコクリと
うなずきシュッと姿を消してしまいました。
これで、この場で起きてるのはバルザルドと
フージャの二人だけです。二人はお互いの顔を見合わせてニヤリと笑いました。
フージャは食べずにとっておいたイチゴ大福を食べ、 またニヤリと笑っていいました。
「ね?言ったでしょう。ミモリン•ヒル•ブラックウェル、この子はモッツァレラ王国一の
綺麗好きだと。私の配下達の情報は、どうやら正しかったようですねぇ。」
フージャはバルザルドを見てにやにやと
笑った。
「どうだろうね?国一番の綺麗好きといったら君がその前に見せたステラナイトおばさんの方が適任だったんじゃないかい?」
バルザルドは樽に入ったスパークリングワインを呑みながら言った。
「でもぶっちゃけ旦那好きでしょう?ミモリンみたいなかわいくて素直でおっぱいのでかい女。」
フージャはゲッスい顔で笑った。
「君は僕のことがよく分かってるね。」
バルザルドは目を細めて笑った。
「……にしても魔王様も人が悪い。
ミモリンを魔法でおそろし山まで誘導し、
うっかり祠を壊すよう仕向け、心臓を与えたことで罪悪感で縛り、おいしいごはんで懐柔しようとするなんてねぇ。」
足を組みながらフージャはクックッと笑った。
「後半はただの事故だよ。まさかミモリンが
リュカに抱きつくとは思わなかった。最初は
自殺しようとしてたのかと思ったがどうやら
違ったみたいだね。」
「前半は計画どおりなんじゃねぇですかい。
やっぱりアンタは根っからの魔王でさぁねぇ。」
「褒めても何も出ないよ。それにしても
ミモリン、ミモリン•ヒル•ブラックウェル。
彼女ならもしかしたら、リュカを救えるかもしれないね。」
「是非是非救って貰いやしょう。リュカの
身体はいずれ私のものとなるのだから。」
「…….親友の君とは言えどもしそんなことをしたら 君の配下もろとも君達を滅ぼして
あげるよ。」
「おーこわいこわい、こわくてイチゴ大福が
喉に詰まりそうでさぁ。」
「フ、フフフフ………。」
「クックックックッ……。」
「あーはっはっはっは!!!!!!!!!!」
「フージャッジャッジャッァ!!!!!!」
魔王とその幹部フージャは大きな声で
高笑いをしました。
「んぅぅ、うるっさいわねあんらたひぃ……。」
ぐーぐーいびきをかきながらヤッホーちゃんは寝言をいいました。
「リュカ……私……がんばるねぇ……。」
すぴすぴと鼻提灯を出しながらミモリンも
寝言をいいました。
斯くして魔王達の策略によっておそろし山の
おそうじ係になってしまった 元人間のミモリン。
彼女の苦難はまだまだ 続くのです。
ハッピーエンドになるといいですね。
がんばれミモリン。
(次回、ミモリンピンチ!!?おそろし山には
危険がいっぱい!!!! お楽しみに)
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)