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重機による強行突破の失敗と、過去の談合事件の暴露。
帝国開発は市場の信頼を完全に失い、株価は紙屑同然となった。
大河原は取締役会で解任され、帝国開発は解体の危機に瀕していた。
私は、山崎さんを通じて
彼らが手放さざるを得なくなった「教育・福祉部門」の事業譲渡を、二束三文の価格で提案した。
「詩織さん、本気ですか? 泥船を買い取るようなものですよ」
「いいえ。彼らが『金にならない』と放置していた地方の保育所や介護施設……そこには、一円の狂いもなく働く真面目な職員たちが大勢いるわ」
「彼らをルーツ・ガーデンのネットワークに『振替』するのよ。……資本の失敗を、現場の汗で埋め合わせる。これが私のやり方よ」
巨大な「帝国」が崩れ去る中、私はその残骸の中から
誠実さという名の原石だけを拾い上げ、再生させていく。
そんな折、陽太の元に一人の公証人が現れた。
「……陽太君。これは直樹被告が、死刑が確定した直後に、誰にも知られぬよう公証役場に預けていた『自筆証書遺言』です」
私は陽太の横で、その封筒がけっこうな厚みを持っているのを見つめた。
直樹が遺したもの……。
また、私たちを縛るための呪いだろうか。
しかし、陽太が震える手で開いたその書面には
数字ではなく、歪な「謝罪」の形をした、彼なりの計算式が記されていた。
『陽太へ。お前はもう俺の姓を名乗っていないだろう。それでいい。……俺がこれまでの人生で、一円の狂いもなく積み上げてきた「悪の貯蓄」
そのすべての証拠と、海外に分散させていた最後の隠し資産のアクセス権をお前に譲る。
……ただし、これを使う条件はただ一つ。
「お前の母親(詩織)の帳簿を、一生、黒字に保つために使え」。
それが、俺が唯一、計算式に入れ忘れていた「愛」の代償だ』
アクセス権を開くと、そこには十億円を超える資金と
彼がこれまで関わってきたすべての「悪事」のリスト
そしてそれを公的に告発するための道筋が完璧に整理されていた。
彼は死ぬ間際
自分の「悪」をすべて陽太に、そして私に、自分を裁くための「武器」として差し出したのだ。
「……最期まで、人を試すような真似を」
私は、その遺言書を父の万年筆でなぞった。
これは、彼なりの「懺悔」なのか。
それとも、死んでもなお私の人生に影響を与え続けたいという「執着」なのか。
けれど、今の私にはわかる。
この資産は、直樹の「償い」ではない。
彼が壊してきた人々、そして私に支払うべき、あまりにも遅すぎた「遅延損害金」なのだ。
これが、直樹が夢見た「支配」の、本当の終着点よ。
【残り19日】