テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その翌朝
遮光カーテンの隙間から、穏やかな朝の陽射しが寝室の床に柔らかな筋を作っていた。
ベッドの上でゆっくりと目を覚ますと
すぐ隣には、まだ心地よさそうにスヤスヤと寝息を立てて眠っている純一の姿があった。
昨日あれほど泣き疲れたせいだろう
白い肌に対して、その目元は痛々しいほどに赤く腫ぼったいままだ。
(……今日は、たくさん癒してあげないとな)
社会の荒波に揉まれ、ボロボロになるまで張り詰めていた彼の心を
この休日でどれだけ解きほぐせるか。
それは恋人としての俺の、何よりの使命だった。
俺は純一を起こさないよう細心の注意を払いながら、頬に軽く触れるだけのキスを落とした。
そっとベッドから抜け出し、冷ややかなフローリングを踏んでキッチンへと向かう。
まずはシンクで丁寧に手を洗い、エプロンを身につけて下ごしらえを始めた。
使い慣れたまな板と包丁をセットし、冷蔵庫から取り出したベーコンをまな板に載せる。
キッチンペーパーで表面の余分な油を軽く拭き取り、純一が一口で食べやすい大きさに等分にカットしていく。
次に野菜室から、乾燥を防ぐためにラップで厳重に包み
さらにポリ袋に入れて保管していたアボカドとトマトを取り出した。
こういう食材の管理ひとつとっても、純一と暮らすようになってから自然と身についた習慣だ。
アボカドに包丁をぐるりと一周入れ
種を綺麗に取り除いてから丁寧にしなやかなスライスにする。
みずみずしいトマトも、型崩れしないよう包丁の刃先を滑らせて薄めの輪切りにカットした。
それらをバットに並べ終えると、今度は冷蔵庫から取り出した新鮮なバジルの葉を5枚
冷水で丁寧に洗い、キッチンペーパーで水分を優しく拭き取る。
爽やかな香りが鼻腔をくすぐり、まだ少し眠気の残っていた俺の頭を明晰にしていった。
準備が整うと、厚めにカットされた食パンを2枚取り出し、トースターにセットする。
その間にフライパンに薄くサラダ油をひいて火にかけ、ベーコンを並べた。
じわじわと脂が溶け出し、香ばしい匂いが立ち込め始める。
(純一、カリカリに焼いたベーコンが大好きだしな)
じっくりと時間をかけ、極限までカリカリに焼き上がったベーコンを
一旦キッチンペーパーの上へと引き上げて余分な油を切る。
ちなみに、純一の皿に盛るベーコンの量は、あえて少なめに調節してある。
高次脳機能障害の特性もあり、彼はその日の体調によって消化機能が著しく落ちやすい。
朝から脂っこいものを胃に入れてしまうと、一発で胃もたれを起こし、その日一日を不意にしてしまうのだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!