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「あなたが応募する前から」
31番は震えながら言った。
「ずっと見てた」
俺は言葉が出なかった。
「……誰が?」
31番は周囲を見回す。
警察署の前。
人通りは多い。
でも、その中に誰かが紛れているかもしれない。
「ここじゃ話せない」
31番が言う。
「逃げよう」
「どこへ?」
「分からない」
「でも、ここにいたらダメ」
その言葉に違和感があった。
警察署の前なのに。
警察を頼れない。
それどころか、警察署から逃げようとしている。
「31番」
俺は聞いた。
「お前は、何を知ってる?」
31番は俺を見る。
その目には、恐怖があった。
俺に対する恐怖じゃない。
俺の知らない何かを知っている人間の目だった。
「あなたが応募した日」
「覚えてる?」
もちろん覚えている。
金が必要だった。
スマホに突然表示された高額報酬の広告。
あの時は、それだけだった。
「その前の日」
31番が言う。
「私、あなたの家の近くにいた」
「……え?」
「あなたを見てた」
頭が混乱する。
「何のために?」
「分からない」
31番は首を振る。
「私が命令されたのは、あなたを監視することだけだった」
「誰に?」
「組織」
「なんで俺を?」
31番は答えない。
俺が一歩近づく。
「教えてくれ」
31番の顔が歪む。
「あなたが……」
その瞬間。
パァン!
乾いた音が響いた。
何かが近くの壁に当たる。
「伏せて!」
美咲が叫ぶ。
俺たちは地面に身を伏せた。
周囲から悲鳴が上がる。
31番が震えている。
「また……」
「また?」
#闇バイト
るしゅ
847
油味噌
17
2,331
翠
36
俺は聞き返す。
31番は自分の口を押さえた。
「違う」
「何が違うんだよ!」
「あなたが狙われてる!」
その言葉と同時に、31番が俺の腕をつかむ。
「悠真!」
美咲が叫ぶ。
「逃げて!」
俺たちは人混みへ走り込んだ。
背後から複数の足音。
誰かが追ってくる。
俺は走りながら31番を見る。
「答えろ!」
「俺は何なんだ!」
31番は泣きそうな顔をしていた。
「あなたは……」
「組織が最初に狙った人」
足が止まりそうになる。
「……俺が?」
「そう」
「あなたは、闇バイトに応募したから狙われたんじゃない」
31番が言った。
「あなたを狙うために」
「闇バイトを使ったの」
俺は立ち止まった。
頭の中で、何かがつながっていく。
あの広告。
あのタイミング。
あの金額。
全部、偶然じゃなかった。
31番が俺を見る。
「あなたが応募する前から」
「組織はあなたを知ってた」
「ずっと見てた」
その時。
後ろから誰かが走ってくる。
「いたぞ!」
美咲が叫ぶ。
「走って!」
俺たちは再び走り出す。
でも。
俺の頭の中には、一つの疑問だけが残っていた。
俺はなぜ選ばれた?
そして。
俺を最初に見つけたのは――
一体、誰だったのか。
(第四十一話へ続く)
コメント
1件
ああ、めっちゃ重い展開来たな……。「あなたを狙うために闇バイトを使った」って31番の告白、ゾッとしたわ。最初から悠真だけが標的だったってことか。警察署の前で撃ち合いになるとこ、一気に緊張感ヤバかった。悠真が「俺はなぜ選ばれた?」って立ち止まるシーン、すごく伝わってきた。続き気になりすぎる🔥