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俺が放ったレーザーは、確かにhappyに直撃する軌道を描いていて、俺も、指揮も、happyでさえも、その場にいた人々全てが

俺と指揮の勝利を確信していた。

だが、そんな中ただ一人だけネームドの、happyの勝利を確信している者が居た。

それがblossomだ。

原理は分からないが、blossomが急に俺のレーザーの軌道上に現れ、happyを庇う形で文字通り散った。

happyを生かすために自分の命を燃やしたのだ。


「邪魔しやがって」

「blossomさんが出てくるところまで想定内の出来事ですか?」

「……そんな……そんなことさせるわけ……」

「ま、何はともあれ俺達は計画続行か?」

「ええ。上手くいってよかったです、最後の締めもよろしくお願いします」

「へへ、任せろよ」


結局、指揮の「この部屋氷で出来てる説」は正しかったので、床を破壊することに成功した。

そのため、部屋から少し落下した地点にいる。

最下層の下にも階があるということなのか、とも思ったが、今俺達が居る部屋から落下した地点は花芽の部屋から行ける場所に近く、おそらくガチ最下層だ。

少し難解だが、要はhappyと戦った氷の部屋は実は最下層ではなく、最下層の一つ上の階層に作られていて、

その床をぶち抜いたからガチ最下層に来れたということだろう。


で、今のhappyは椅子を失い、最低でも反射が出来なくなっている。

氷塊もへなちょこな感じになっていて、確実に弱体化しているのが見て取れる。

だから、もう最下層だし、俺の毒も回ってきているのでもう殺そうという作戦とも言えないような作戦。

まあ、もう作戦を考えなくてもいい程勝利が確定してるわけだが。


俺は溜めに入った。

後10秒くらいか。

たった10秒で勝利が確定するんだ。





「blossom!!」


俺が叫んだ声は炎によってかき消されてしまった。


blossomに特段大きな感情を持っていたわけではないが、初期からずっと一緒にそばにいてくれたネームドの仲間、といった認識であった。

時々俺の事で暴走することもあったけど、やっぱ頼りになるやつではあったのかもしれない。

というか、彼女を失ってはじめて、自分がどれだけあいつの存在を当たり前に思っていたかがいたく分かった。

俺の目の前で、死んでも俺を推すと言って散ったあいつの顔が脳裏に浮かぶ。

そんなに思い詰めているわけでもなさそうな無垢な笑顔が。

正直、あいつがあんなに俺に言い寄ってきてるのも全部ネタだと思ってたし、あの状況で自分の命を投げ打つほど俺の事が大好きだとは微塵も思っていなかった。


頭痛がする。


俺のホームグラウンドである部屋に飛ばして、参加者二人になら余裕で勝てると思っていた。

でも違った。

奴らは本当に頭がおかしい。

前回までの記憶を消去したはずなのに、なぜだか俺の部屋の構造を理解し、そしてその構造を逆に利用し俺を窮地に追い込んだ。

つまり、一発であの部屋の構造に気付いたということだろう。

普通気付けるか?あの氷は特殊な加工が施されているから、炎以外の衝撃にめっぽう強いし、冷たさとかも一切感じないものだ。

それを氷っぽいし燃やしてみて、みたいな発想になるか?そしてそれをノータイムで実行できるか?


いや、氷と気づくのと氷を壊すのは別人物が行っているからできたのか?

発想がぶっ飛んでる指揮に、その発想を成功させる木更津。

二人だからこそ成功できただとか、そういうことを信じてみた事なんて一切なかったが、もし事実だとしたら。

俺にももう一人仲間が居たはずなのに、あくまで傍観者の域を出ないやつだと、結局戦ってるのは俺だけだと思っていた俺の負けか?

blossomだって本当は戦っていた、それに俺が気づけなかっただけ。

もし気づけていたら……


死ぬのは俺一人で済んだかもしれない。


いや、blossomは俺の勝利を信じて死んだんだぞ、俺を庇って死んだんだ、だから俺が諦めるわけにはいかない。

どんなに醜くても勝たないと、あいつのためにも、上の為にも。


とはいえ、あいつのレーザーは既に溜まっている。

早打ち勝負で負ける可能性を排除してきたわけだ。

俺が今から氷塊攻撃を溜めても、その溜めが終わる前にレーザーで今度こそ焼き殺される。

流石にレーザーは溜まっても多少ラグがあるとは思うが、そんなリスキーなことできない。

そのラグの間で木更津をレーザーが撃てなくなる状態にする手段、というか攻撃する手段。

もうあれしかないのか。





その炎が放たれる数秒前、いや数十秒前か、レーザーとはまた一味違う音、数倍軽くて数倍重い音が鳴り響き、

私は懸念していた事象が起きたと感付いて、すぐさま星斗さんの前に飛び出した。


炎の勢いが一瞬収まったように見えて、私に構わなくてもいいのにだのと考える間もなく、本来星斗さんの中にあったはずの銃弾を、私が回収する運びとなった。

鋭い痛みが襲い、心臓の鼓動の二分の一くらいの速度で血が零れ落ちるが、案外意識を保てている。

銃弾は右腕のあたりに命中した。


happyは、最後のあがきとして氷塊を撃つのは時間が足りないと判断したか、能力を使わず銃弾を撃ち込んで、星斗さんの動きを封じようと企んでいたらしい。

私もhappyなら最後のあがきはあるんじゃないかと思っていたので、この結果は予想できたことだ。

だから私はhappyと星斗さんの間に入れるような位置で待機していた。


レーザーが発射された音が聞こえた。


右腕を庇う形で倒れこんでいたため、レーザーには当たらなかったが、髪の毛が焼ける音がして、頭が軽くなった。

頭上の熱い物体が消えて、ふと顔を上げる。

もはや人だったとも分からないhappyと、今にもこちらに駆け寄ってきそうな星斗さんが見えて、

かろうじて大丈夫ですよ、だなんて言ったが最後、意識のレベルが低くなった。


「指揮!おい急にどうしたんだ……!」

ーー

「……死んじまったわけではないよな?」

ーー

「……なぁ……」

ーー

「……」

ーー





最期に放った銃弾は、射線に割り込んできた指揮によって妨害されてしまった。

そんな指揮に目もくれず、奴は機械的にレーザーを撃つ。

指揮が倒れこむタイミングと見事にかち合い、味方ともどもレーザーに当たらず俺のみに当てることに成功したらしい。

一見二人の信頼から生まれたファインプレーとも取れるが、俺は真実を知った。

”奴”の目は明らかに”こちら側”だ。

一回目の頃のbloodに似ている。

自分の事を庇って銃弾に当たった女が居ることを、第三者の事としかみて居ない。

あくまで銃弾に当たったやつが居る、くらいにしか思っていない。

「自分の事を庇った」なんて思わず、なんなら偶然庇ってくれたくらいにしか。

自分に向けられている感情に気付かない。


ああ、なぜ俺は奴を、木更津星斗という人物を、


もっと早く殺さなかったのだろうか。



そうしたら何もこんな悲劇は起こらなかった。


そもそも木更津は第一ゲームの時点で死んでるはずだったんだ。

なぜ死ななかった?それは花芽が貴志を殺害したから。

第二ゲームが始まる直前に、俺は一時的に木更津を最下層に誘拐した。

最下層はネームドが集う魔境だし、誰かが殺してくれるだろなんて思っていたが、

実際に神化人育成プロジェクトの繁栄を願うものは俺とblossom、jealousyくらいしかいなかった。

他の奴らは誰かにこのゲームを壊してほしいと願ってたんだ。

それこそ、圧倒的な力を持っている誰かに。


……思えば俺もそちら側だったかもな。

俺の母は所謂教育ママで、父は酒カスギャンブル野郎。

両親は別居していたが、離婚はしていなかった。

母のパート代だけで俺を養えないから、父のあってないような仕事の給料をもらうための、いわば愛のない結婚をしていた。

それで、俺は当然母の方にいたのだが、週一で父の方に行ける日があった。


母はよくこう言っていた。毎日6時間は勉強する、プラスで塾にも行く、そうじゃないと”リーダー枠”はもらえないと。

母は教育ママというよりも、輝煌グループ狂い、の方が合っていたかもしれない。


ネームドは応募で選ばれる。

そして、各名前に生じて役割がある。

参加者を監視する「meutrue」、情報伝達の「blossom」、秘密を知った参加者を”粛清”する「messiah」「tear」、

役割が不明だった(敗者復活戦みたいなところで勝ち抜いた奴が選ばれるらしい)「ambition」、

そしてそれらのまとめ役の「happy」。

俺が応募させられたのは当然happyだった。


happyはまとめ役だけあって、なんでもできる様な奴じゃないといけない。

俺は運動系はできた方なので勉強を強制された。

学校でも勉強、家でも勉強、塾でも勉強。

地獄のような日々であったことは覚えている。


しかし、父に会いに行く日だけは違った。

なぜなら勉強をしなくてもよかったから。

父は中学校を卒業した後、バイトを転々として家族の資金を稼いでいたらしい。

だから、勉強とは無縁の人生だったと話していたし、子にもそれを受け継がせようとしていて、教育ママの母と対立していたようだ。

全く両極端な両親だ。

俺は、その週一の休みを大切にしつつ、心のどこかで父に母を止めてほしいと願う気持ちがあった。

母に従うくらいなら父に従いたいと。


でもその願いはかなわず、父は違法賭博と暴行罪で逮捕された。

当面出所はできないと、最低でも俺がネームド試験に行くまでは叶わぬと言われた時は、本当に心の何か大切なものが壊れたような気がした。

あの時の母の顔といったら、本当に可笑しかったよ。

おおよそ人間がしていい顔ではなかった。

最低でも、親が子に見せていい顔ではなかった。

だってそうだろ、

目に光が無い笑みでさ、思いっきり高笑いして。

「あんな奴いなくなって良かった」「とっても大変な思いをしてきたのね」「もう大丈夫だからね」

驚いたろ、これ全部ひとりのセリフなんだよ。

俺が父に対して何か言ったわけじゃなくて、俺は何も言葉を発して無いのに、さも俺も母に同意して「父なんて逮捕されて当然だ」と言ってるかのように。

さも自分は被害者かのように、自分は正義だと疑わないように。おかしいだろ、これが親か?


俺はネームドの試験に参加して驚いた。

みんな辛そうな顔をしていない。

みんなネームドになれるのは本望だと言った顔をしている。

試験に参加した奴らは口をそろえて、「この試験に自分から参加した」と言っている。

俺みたいに、親に言われて参加した奴もいたけど、みんな練習するうちにネームドになりたくなったとか言うんだ。

全部親に決められてて、ネームドになんて正直なりたくないやつとかは俺しかいなかった。


でも、最終選抜になって、最後に相手と戦う時に、俺は始めてネームドになりたいと思った。

そこでネームドの全貌が明かされたからだ。

ネームドは100年も飛行船の中で過ごすらしい。

衣食住が完備された100年を。

その100年の間で、母も父も死ぬ。

それに気づいたとき、ネームドになる=親から離れられると気づいたとき、俺は心底ネームドになりたいと願った。


最終選抜の相手は、俺より二回りデカい男だった。

男は、ネームドになりたいと一番大きく宣言していた男だった。

だから戦う時も、ずっとネームドになるのは俺だとか言いながら戦っていて、ネームドになるべきはこいつだななんて思いながら戦っていた。

結論俺が勝ったわけだが、男は最後に笑って、


「もうやめよう、こんな悪しき負のスパイラルは」


と言った。

男は、本当はネームドになんてなりたくない、普通の家で生まれて普通に暮らしたかった、と言った後、


「ありがとう、みんなの身代わりになってくれて」


と呟いてこと切れた。


俺だってそうだよ、と返したかった。

俺だって普通の両親のもとに生まれてたら、普通に生活できてたら。


そうか、みんな普通が欲しかったんだな。

みんなネームドなんてなりたくなかった。

俺はみんなの総意で生まれた存在なんだな。

これを思い出すたび、いつも勝手に涙が出て来そうになって、母のあの顔をみて恐怖で相殺する。


でもな、木更津。

俺はお前の顔を見て確信した。

お前のあの光のない、でも確実に光のある顔って言うのかな。

人殺しをなんとも思ってないけど、なんなら正義のためにするべきことだって思ってて、それは間違ってるけど、

殺す相手は悪い奴。

手段は間違ってるけどやろうとすることは正しい。こういうのを、ダークヒーローって言うのか?


お前ならこの負のスパイラルを壊せるかもしれないって。

思ったんだ、ひたすら正直にそう思った。


やっぱお前兄に似てるな。

霧斗、とか言ったっけ。あいつもそうだろ。

でも確実に兄とは違う点がある。

兄は誰かを守るためにやってる。

お前と切斗を守るために殺人をしてる。

でもお前とは違う。


お前は自分のために殺す。

多分今はそんなことないんだろう。

俺を殺したら何か参加者の脱出に近づくと思ってる。

それは正しいよ。でも。

お前は確実に自己中だ。

自分が何かするために、何かいいことを巻き起こすために、

お前は絶対殺人を犯す。

本当に、絶対に。

だってお前の顔はさ、

正義を信じて目を濁らせるお前の顔はさ、


まるで俺の母だ。



やがて自分もろとも焼き尽くす炎が、隠しきれない醜さで俺を襲う。

流石の火力だ、この人殺しめ。


炎の中、たった一人立ち尽くし笑うやつは、


まるで悪魔だった。




”happy”こと、氷室幸間は、


次世代の悪魔が放つ炎に、


地獄で待つ両親の元へと送られた。



デス・ファイア・ゲーム~混沌の世界へ~

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