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はの @EBiDANキテる
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室温・湿度が快適に保たれたリビングの一角。長いソファの隅で小説を捲っていた阿部の耳に呟きが届き、文字を追う目を止めてそちらを見遣った。
「……なにか言った?」
「あ…ごめん。邪魔するつもりなかったんだけど」
呟いた側の岩本は、人一人分隣で済まなそうに眉尻を下げている。どうやら空耳ではないようだ。阿部は白い歯を見せて頭を振って見せ、穏やかに問い直す。
「ちょうど切りが良かったから大丈夫。…で、なんて言ったの?」
「あー…うん。いや…最近色気、凄いよなって」
「…、はい?」
「だから、阿部の色気が凄いって話」
「えぇ?んっふふ…~急になんだよ」
突然降って来た脈絡のない言葉に笑い声を奏で、何時も通り無意識にこてんと首を傾げた。そんな仕草は慣れっこなはずなのに、何処か眩し気に岩本が見詰める。
「ほら…その、首傾げるヤツ」
「…あぁ、もう癖になっちゃってるんだよね」
「それがさ、ちょっと前までは可愛いなって思うだけだったんだよ」
「う、ん…~ありがと。照に言われると、凄く嬉しい」
面と向かって褒められては流石にはにかむしかない。熱くなった瞼を伏せる阿部の頬に指が這う。愛おしい、口に出さなくても伝わる撫で方で肌を滑って落ち、下唇で止まった。
「…やっぱり色っぽい。前はもっとイノセンスな感じだったじゃん」
「ははっ…小粋な英語挟むな、っ…ん」
再び覗く歯列を爪で弾かれ、反射的に指を含んでしゃぶる。阿部なりに精一杯睨み返してやったのに綺麗に破顔した岩本に歯茎を弄られ、慌てて後退った。
「んん~…もう!人の口で遊ばないっ!」
「ふふっ。可愛い目で誘ってくるからだろ」
「いっ、今のは睨んでたの!」
「…マジで?阿部の事、まだまだ分かってないんだなぁ」
台詞とは裏腹に笑みを深め、唾液に塗れた自らの指を舐める岩本に阿部の胸がキュンと鳴いた。~…ちくしょう、ときめいちゃったじゃないか。
「で…さ。まだ分かってない俺に、阿部が色っぽくなった理由教えてくれない?」
思い掛けず近距離から声が響いて振り返ったらば。一気に間合いを詰めたらしい岩本が真隣で足を組み、ちゃっかり阿部の腰を抱き寄せて覗き込んで来た。
会心の一撃、THE・AB型の睥睨も効かないとなれば抗う気など起きる故もなく、逞しい肩へ側頭部を乗っけて思案しだす。
「う~ん…照に恋をしてるから、じゃあ最近っていうのと合致しないし。強いてで言えば前よりもっと、もーっと照が好きになってる…ぐらいかなぁ 」
「ゔっ…~そ、そう。…凄い事さらっと言うな、お前」
「だって、照以外で思い当たる節ないんだもん。色気でしょ?…やっぱり恋関係なんじゃないのかなぁ」
「なに阿部ぇ…俺にメロメロなワケ?」
「~…顔がニヤケてて認めたくないけど、メロメロだよ。後ね、メロメロって表現オジサンっぽい」
デレぇ~と溶け切った岩本の頬っぺを淡く摘む。ムニムニする。ちっとも痛みのない悪戯のお返しにと阿部の掌をれろぉん♡と舐め上げた。「ひゃっ!?」甲高い叫びを放ち、今度はうるるん涙目攻撃を打って出る天然策士・阿部。
「いっ…悪戯すんなっ」
「先にしたのはどっちだよ、…んっ…泣くほど喜ぶなって」
流れるまでは行かずに睫毛で留まる雫を、唇で丹念に吸って清めて行く。そんな慈しむ愛情に絆されて然るべき。騒がしく高鳴る心音につれ、阿部の顔はあどけなさと艶っぽさの両方を巧みに醸し、岩本の胸もまた煩く鳴り始める。
「……照」
「ん?」
「悪戯ならこっちにして」
こっち。そう言って阿部が唇を突き出す。どんな悪戯を望んでいるのか明白だ。岩本は密かにほくそ笑む。悪戯と言われたからには遊ばない手はない、舌先を尖らせ熟した唇をチロチロ擽って焦らしに焦らす。
「やぁ…~ちゃんとしてぇ」
「欲しいなら、阿部から吸ってみ?」
「ん…んん、…いじわる」
ちゅ。ちゅー…。
おっかなびっくり啄み、そっと重ねる。触れ合ったらもう止められない。吸って、噛んで、思うがままに貪り始める。髪を梳かれたら項を引っ掻き、阿部の足裏が岩本の脹脛へ甘え出した頃。二人の体に衝撃が走った。
岩本は股間に、阿部は後孔に。
「っく…~阿部。…いい …か?」
雄の色香を惜しみ無く振り撒き、岩本が嗄れた声音で囁き誘う。さぞかしウットリとした恍惚な眼差しが帰ってくるだろうと見た阿部は、何故か丸めた目に知性の光を宿らせていた。
──え……え?…あれ?
戸惑って言葉が出ない岩本とは対照的に、クイズ番組で正解を導き出す正にあの時の顔で、意気揚々と言い放った。
「分かった!俺に最近色気が出てきた理由っ!」
「は…はぁ?」
「…そっかぁ、分かったらすんなり腑に落ちた。うん…照に恋してるからっていうの、あながち見当違いじゃなかったんだな」
「阿部。ちょっと…」
「あっ、…ムードぶち壊してごめん。答えが分かって嬉しくて、どうしても言いたくなっちゃった。…~あの、ベッド…行く?」
「……行く。行くけど、その前に俺には答え教えてくんないの?」
「えぇっ!?…んん~…ほんとに言うの?は、恥ずかしいなぁ」
「あーーべっ!」
惚れた弱みの忍耐も限界ギリギリ。あくまで優しくだが、阿部のこめかみへ拳骨を当ててグリグリの刑に処してやる。
「いたっ!?いたた…!~…分かった、教える!だからグリグリ止めてぇっ!」
「よーし…いい子だ」
泣きの乞いに岩本はすんなり拳を外し、微かに赤くなった肌をキスで癒す。
「う~…聞いても引かないでよ?」
躊躇いがちではありながら口を岩本の耳へ近付け、こしょこしょ話の体で阿部が語り出した内容は。
「前まではね、一人でする時は前だけだったんだけど…ここ数ヶ月かな、後ろも…~その、触ってみるようになって。今じゃ後ろでないと…~み、みたいのが色気と関係ある、のかも。~…あくまでかも、ね?」
岩本の思考回路がショート寸前になるには十分過ぎで。たっっぷり時間を要して絞り出た返答は、詰問に近しいものだった。
「……一人で、ヤってたの?」
「え…、…う、うん。我慢出来ない時、とか…」
「で、後ろを弄ってた?」
「うっ…~そ、そう」
「それは玩具とか使って?」
「…っ、まさか!指っ…指しか挿れて、ない」
「俺の指だと思って…?」
「~…ばかっ!照以外の誰想像すんだよ!玩具だって挿れる気起きないのに…照じゃなきゃ嫌なんだってば、…分かれっ!」
度を越えてしまった、と気付いた時には既に遅し。しゃくりあげながら抱き着いて来る阿部を前に、岩本の胸中は泣かせた後悔と、例えようのない恋慕と、押し寄せる欲情とが三つ巴でせめぎあっていた。
「……意地の悪い聞き方してごめん。思ってもみなかったカミングアウトだったから、かなりテンパって。…怒った?」
眉根を顰めて寄り添う体を抱いて包み、髪へ口付けを落とす。幾つも、幾つも、心からの詫びを伝えるように。
「…怒ってはない。ただ…一個教えて。照は一人でする時、……俺を想像するの?」
「もちろん。阿部じゃないと勃たないし。阿部以外の人となんて考えた事もないよ、…阿部が俺以外の誰かと、なんてのもな」
「ん…なら、いい」
赤くなった鼻をスン、と啜り艶やかに微笑む阿部。その健気さに三つ巴の均衡が崩れ始める。主に、欲情方面へ。岩本は細い首筋に吸い付きつつ腕の中の愛おしい人をソファへ押し倒して行く。
「こーら。ベッドへ行ってからでしょ?」
裏腹な弾んだ声を上げ、阿部は岩本のシャツを肌蹴させる。同じく阿部のシャツのボタンを器用に片手で外して行く岩本。
「…ベッドへ行く間も惜しいんだよ」
長い夜の続きは、またいずれ。
コメント
3件
💚ちゃんのあまりの天然天使あざと策士っぷりに唇噛み締めながら昇天しそうになりました!そら💛もベットまで待てないわぁ…長い夜の続き、お待ちしてます🫶
あー、これめっちゃ良かった…!第2話でここまで空気感出せるのすごいわ。阿部の「分かった!」って途中でムードぶち壊すとこ、クスッときたけど、そこからの後ろの話ってカミングアウトがめちゃくちゃ生々しくてドキドキした。照が「俺の指だと思って?」って問い詰めるとこ、嫉妬と愛情と欲情が混ざってて痺れる…。最後のベッド行く間も惜しいって台詞、雄の色香やばかったわ。続き読みたい🔥