テラーノベル
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シンヤとミレアが夜を共にしてから一週間ほどが経過した。
あれからというもの、彼らは毎晩のように体を重ねている。
そのせいで、最近ではすっかり朝起きるのが辛くなっていた。
だが、今日は少し事情が違う。
「シンヤ、おはよウ」
「ああ、おはよ」
ベッドの中で目を覚ましたシンヤは、目の前で微笑むミレアに挨拶を返す。
既に彼女は服を着ており、いつでも出かけられる格好だ。
「張り切っているな」
「ああ。今日は一階層のボスに挑むんだロ? シンヤの足を引っ張るわけにはいかナイ」
ミレアは気合十分といった様子である。
毎日少しずつ探索を進め、昨日はとうとう一階層の最奥に辿り着いたのだ。
今日はボスに挑む。
一階層なのでそれほど強敵ではないのだが、念のために昨日の夜のお務めは無しにした。
シンヤもミレアも、心身共に万全の状態である。
「無理するなよ。危なくなったら逃げることも大事だ」
「分かってル。でも、あたしは逃げない。シンヤのために戦う」
ミレアはそう言って、シンヤの頬に口付けをした。
「よしっ! じゃあ行くか」
「うんっ!」
二人は勢いよく起き上がる。
それから身支度を整え、屋敷を後にしたのだった。
「ここだな。改めて見ても、大きな扉だ」
シンヤ達は一階層ボス部屋の前に立っていた。
「見かけだけだ。一階層のボスは大したことナイ。シンヤなら大丈夫ダ」
「おう。では、開くぞ」
シンヤはゆっくりと扉を開ける。
すると、中には巨大な魔法陣があった。
「これがボスを召喚する魔法陣か」
「そうだ。入ってきた扉を閉めると、ボスが出てくル。シンヤ、準備はいいカ?」
「もちろん」
シンヤが答えると同時に、ミレアが扉を閉じた。
その直後、魔法陣の中央に光が集まり始める。
そして、光が収まるとそこには魔物がいた。
ぽよん、ぽよん。
現れたのは大きなスライム。
体長一メートルほどの球形の体を揺らしている。
その体は半透明で、あまり強そうには見えなかった。
「こいつがボスなのか? なんかやたら大きいが」
「そうダ。こいつはスライムの中級種、ビッグスライム。グラシア迷宮の一階層に出てくる中では一番強い個体ダ」
「なるほど」
シンヤは魔力を開放し、戦闘態勢を整える。
「【ファイアーアロー】」
まずは遠距離攻撃。
シンヤの手から放たれた火の玉が、スライムに直撃する。
しかし、ダメージを与えた様子はなかった。
「ほう。やはり通常のスライムよりも耐久性があるようだ。効かないか」
「なら、次はこっちダ!」
ミレアが拳に魔力を纏わせ、突撃していく。
「はあっ!!」
ミレアの渾身の一撃が、スライムに炸裂した。
スライムの体が一部削り取られる。
千切れた体は魔力が霧散すると共にただの水分となり、迷宮の地面に吸い込まれていった。
だが、本体はまだまだ健在だ。
先ほどまでよりほんの少しだけ小さくなったものの、それでもなお大きく見える。
「【アイスニードル】」
シンヤはすかさず氷の針を放つ。
それはスライムの体に突き刺さり、凍らせた。
「ここダっ!! はぁぁぁぁっ!!!」
ミレアが全身の魔力を高める。
彼女の体が一瞬にして赤色に輝き始めた。
「おお!?」
驚くシンヤの前で、ミレアは飛び上がり、そのままスライムに飛び蹴りを放った。
ミレアの両足がスライムの体を捉える。
シンヤによって凍らされていた体の一部が粉々に砕け散った。
「やるなあ、ミレア」
「ありがとう。だが、まだ倒しきれていナイ」
ミレアの言葉を裏付けるように、スライムがぽよぽよと体を振るさせる。
今の体長は三十センチほど。
最初に比べればずいぶんと小さくなったが、それでも油断はできない。
「どうすル?」
「問題ない。もう終わりだ」
シンヤは両手を前に突き出す。
「【ウッドランス】」
その言葉に従い、樹木の槍が出現する。
それらは次々とスライムに突き刺さっていく。
とうとうスライムのコアが破壊され、スライムは魔力を失い霧散した。
「やったナ! お疲れ、シンヤ」
「ああ。ミレアもな」
二人は笑顔でハイタッチをする。
こうして、一階層のボス戦は無事に終わったのであった。
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