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天井がやけに高い。背中に感じる地面はやたらと硬い。
右、左、右振り上げ左フック……どれも躱され顔面を掴まれたかと思うと綺麗に回転し仰向けに叩きつけられた。
もう何度目かわからないが、まだレオから拳で殴られてもいない。レオは右腕だけで俺を転がし続けている。
あの狩りの翌日からは練習場を借り切ってこうしている。
「殴られる方が好きか。では次からはそうしよう。あと、次からは避けん。存分に打ちつけるがよい」
ガバッと立ち上がる。興奮に鼻息が凄いことになっているが、この憤慨ではそれも仕方ないだろう!
「闘いの経験では叶わなくとも、このパワーは別だ! 当たればその涼しい顔も今に出来なくなるぞ!」
なんとも情け無い宣言だと思う。まともにやりあえば掠りもしない攻撃で虚勢を張っているだけだ。粋がったただのガキだ。
「ふん、ならば現実にしてみればいい」
内心の自虐さえ見透かされ、どう繕っても恥の上塗りでしかない。ならやるだけだ。
天井がやけに高い。背中に感じる地面はやけに硬く痛い。
腕はおろか指1本動かすこともできない。
ワンパン。俺の攻撃を無警戒にその身に浴びてからのワンパンで毎回俺は立てなくなる。それを数度繰り返しいまは立つことさえままならない。熊さえ圧倒するというのに。
「そうだな、それだけ今の我とお主では練度も種族的にも大きな開きがあると言うことだ」
「獣人ということが、人間であるということが、これほどの差を作るものなのか?」
熊と正面から殴り合い勝つことができる人間は他にはいないと、あれだけの連戦をやり切って傷ひとつ負わない俺は最強に近づいているのだと。そう信じていたのに。
「お主が人間? なにを寝ぼけたことを」
レオが何か言っている。何のことだ? 俺は人間以下のゴミだとでも言って罵倒するつもりか?
そう次の言葉に身構える俺に
「さっさと目覚めさせろ、巨人族の血を。クォーターだろうとそれが出来れば我と互角にもなろうものを」
妄言だ。俺の種族は人間だ。周りもそう言ってきたし、俺自身が人間と変わらないことに落胆してもいた。確かに母ちゃんは2mあるし、幼い頃にみたばあちゃんは山のようだったけど。5歳の子供から見た大人なんてだいたい山だろ。
「いや、流石にそれはないだろ。そんな婆さんがいてたまるか」
ひとが記憶を辿っているところにツッコむとか、この獣人はなんでもありか? 獣人種特有の何かか?