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「あの鎧の魔道具は、魔力を使って敵を誘引するチャームの効果をその周辺に与えるものでな」
そばで本を片手に観戦していたダリルが言う。
「ビキニアーマーと呼ばれるのはその露出した肌でもって視覚的にもチャームの効果を与えるための女性用の魔道具だからだ」
気にしないようにしていた女性用というところばかりが強調されて頭の中でこだまする。許すまじこの男。むきっ。
「だが、そうするとただでさえか弱い女性が肌を多く露出した防御力なしの状態で自分にばかりめがけてくる獣の中にいることになる。そんな人身御供のような事をやる者などないだろう」
ダリルは読みかけの本を閉じて立ち上がり説明を続ける。
「そこでもう一つの効果。というよりこっちが本来なのだが、鎧は魔力により全身に薄い透明の膜を張る。それは人によるがとても強靭なものとなり、いくらかの身体能力向上効果ももたらす。故に、非常に高価で手に入れたくてたまらない女性冒険者はいくらでもいる。そういった鎧だ」
つまり傷ひとつなかったのはその膜のおかげ? 確かにいくらなんでも爪が食い込んで何も無いのはおかしすぎたか。
「さらにそんな卑猥な変態さん扱いされてしまう鎧をお前に渡した理由は別にあってだな……通常魔道具と言えばこの世界に空気のように存在する魔力を使って効果を発揮するのだが、あの鎧に関してはそれに加えて装着者の魔力も供給源にしている。でなきゃ流石に熊に殴られて平気ではいられん。お前から魔力を引き出すように補助用の魔道具も初期のうちに使わせてある」
ダリルの手には最初の頃に貼られた薄い板があった。
「だからこそ、あの鎧の膜は人によって強度がかわる。さて、ここで疑問だが明らかに通常より強固な膜が張られたお前は、人間種か? それとも他か?」
そこまで聞けばもはや疑いようもない。だがその種族がなぜ分かる? 確かに俺のばあちゃんは山みたいに……。
「お主には見た目に人間の特徴以外は何も出ていない。該当するなら2つだが、人より背丈は高く、明らかに肥大しやすい筋肉。そして力に対する執着」
ネコ科の獰猛な瞳が俺の中にある何かを見つめて言う。
「血が薄いお主はそれが平和な自己鍛錬という形で現れていたわけだが。そこから出る答えは巨人族しかないのだ。純粋な巨人族は大きな者で4mにはなるが、それがクォーターであるならば丁度お主くらいなのだろうな」
人間には敵なし。そこはもしかしたら間違っていなかったのかもしれない。あくまでも人間には。
「我を越えると。その気持ちがまだあるのなら、お主がなすべきはまず巨人族の力を引き出す事だ。そしてその感覚もきっかけも鎧の魔道具によってすでに与えられてある」