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第14話:夢の終焉
広場は瓦礫と血に覆われ、息をしているのは遠藤 蓮ひとりだった。
灰色のパーカーは裂け、全身に泥と返り血。眠そうな瞳の奥には、燃えるような光だけが残っていた。
地面には、仲間だった者たちの亡骸が散らばっている。
茶色のショートボブの相原 凛。水色のシャツは赤に染まり、包帯は真っ赤に崩れ落ちていた。
筋肉質の高城 翔。拳を握りしめたまま、無言のまま地に伏している。
紫のワンピースを纏った霧島 静。長い黒髪が血に濡れ、笑みを残した顔で静止していた。
スーツ姿の八坂 圭吾。冷笑の面影を消さず、胸に深い傷を刻んで横たわっている。
「……俺だけ、か」
その瞬間、仮面が現れた。
夢の管理者。長い外套が風に揺れ、歪んだ声が響く。
「お前は勝者だ。願いを叶える権利を得た。何を望む?」
蓮は唇を噛み、血の味を確かめながら仲間たちを見渡した。
ひとりひとりの顔が脳裏に焼き付いて離れない。笑った顔、苦しんだ顔、そして死の瞬間。
「……俺の願いは決まってる」
仮面が揺れる。
「金か? 権力か? それとも永遠の命か?」
蓮は拳を握りしめた。皮膚が破れ、血が再び滲む。
「……俺の願いは――みんなの死を、無かったことにしてくれ」
広場に静寂が走った。
管理者は数秒黙し、やがて低い笑いを漏らした。
「ふふ……愚かな。お前の願いは“自己否定”だ。勝ち残った意味を消すことになるぞ」
「かまわない」蓮は叫ぶ。
「俺ひとりの勝利なんて、意味がない! みんながいたから、ここまで来られたんだ!」
仮面の目の奥で光が揺らぐ。
「……ならば見せてやろう。その願いの行き着く果てを」
空が裂け、光の奔流が広場を飲み込んだ。
幻のように血の跡が消え、瓦礫が元に戻る。
倒れていた凛が目を開き、茶色の髪を揺らして息を吐いた。翔が拳を上げて立ち上がり、玲央が眼鏡を直し、瑠衣が涙を浮かべて笑った。
次々と仲間たちが蘇っていく。
蓮は膝から崩れ落ちた。全身が痺れ、意識が遠のいていく。
「蓮っ!」凛が駆け寄り、血に濡れた手で彼を抱き締める。
「……これでいい……これが、俺の夢だから……」
最後にそう呟き、蓮の瞳は閉じられた。
管理者の声が虚空に響く。
「願いは叶えられた。だが勝者は――消えた」
光が完全に消えた時、そこに残っていたのは、生き返った仲間たちと、蓮の不在だけだった。