この作品はいかがでしたか?
51
この作品はいかがでしたか?
51
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「もしもし、そこで何をしているんですか?」
!!
突然後ろから声をかけられ驚いたが、ふりかえると警察官の恰好をしたおじいさんがいた。駐在員というやつだろうか。
「あっ……、すいません。子ども達がノートを落としたみたいで」
「ほう、ノートですか」
駐在員にノートを渡すと、おじいさんはパラパラとめくってみていた。
「これ、中はご覧になりました?」
「いえ……」
あの異常な内容について報告した方がいいのだろうか、とも思った。けれど、なんとなく嫌な予感がして、ノートの中身を見たことを知られない方がいい気がして、とっさに嘘をついた。
「そうですか。いや、ありがとうございます。あとで学校の方にでも届けておきますわ」
「よろしくお願いします」
「ところで、お嬢さんはここまでバスで来たのかね?」
「あ、はい」
「そうかい。この村、バスはあんまり本数がないから、乗り遅れないようにね」
「わかりました~」
これは、遠回しに早く帰れと言われているのかも……。駐在員のおじさんに挨拶をして、私はバスを待つことにした。ところが……。
「お嬢さん、バスを待っているのかい?」
「あ、はい」
バス停でバスを待っていると、通りがかったおじさんに話しかけられた。
「それは残念だったな。ここに来る途中事故があったらしくて、今日はもうこの村にバスは来ないよ」
「そんな……」
「そうだなぁ、なんならわしが、近くの街まで送って行こうか? そこなら別のバスもくるだろうし」
「ありがとうございます」
近くの街まで相当距離があるため、さすがに歩いて帰るわけにはいかない。おじさんに送ってもらうことにした。
「わしの家はそこじゃが、車は少し離れたところに止めていてな。まあ、お茶でも飲んで待っててくれ」
「あ、お構いなく……」
といったものの、おじさんは親切にお茶を出してくれた後、車を取りに行った。しばらくおじさんの家で待つと、おじさんが戻ってきた。
「おまたせしましたな」
「いえ、ありがとうございます」
おじさんと車に乗りこみ、街を目指した。
「ところでお嬢さん、こんな村に来るなんて、どうして?」
「田舎を旅するのが趣味で……」
「そうかい。何もないがいいところじゃろ」
他愛のない会話をしながらしばらく車を進めていると……、あ、あれ? なんだか急に眠気が……。
「おや、お嬢さん、眠くなってしまったかな?」
「え、ええ……」
「まあ、少し寝なさい。ついたら起こしてあげるから」
「すいません……」
私はそのまま眠ってしまった。そして……。
・
・・
・・・
「……い! おじょうさん!」
おじさんの声で目が覚めた。なんだか頭がぼーっとしている。あれ? 私なんで眠っていたんだろう?
「お目覚めですかな?」
「はい……。あ、あれ?」
私は自分が不自然な体勢でいることに気がついた。両手が縄で縛られ、両足も縄で縛られた状態で床に転がされていた。
「え? あ、あぐう……」
なに? 何なのこれ!? なんで私縛られて……? パニックになる私に、おじさんは笑顔で話しかけてきた。
「お目覚めかな? おじょうさん」
「おじさん……? なにこれ……?」
「おじょうさんが悪いんだよ? あのノートを見るから……」
「ノート……? あ、ああ!? し、知らない! 私そんなの知りません!」
私は必死で否定した。何なのこの状態? なんで私が縛られて拘束されて!? そんな私に構わずおじさんは話を続ける。
「とぼけても無駄だよ。あのノート……、君は読んだね? この村の秘密を知ったからには帰すわけにはいかないよ……」
「いやあ! いやあああ! 帰して! ここから出してえ!」
私は必死に抵抗した。手足を縛る縄をほどこうと暴れたけれど、きつく縛られていてどうにもならない。私は部屋を見渡したが、窓もなくて、ドアはおじさんの後ろにある1つだけ……。逃げられない……。
おじさんはそんな私を楽しそうに見ながら話を続けた。
「君の処遇について話し合いが持たれた結果、君には実験体になってもらうことになったから」
「じ、実験……?」
「そう……。君はあのノートに書かれていた『じっけん』を体験することになるんだよ……」
おじさんのそのセリフで、私の脳裏にはあのノートの内容が蘇った。
「い、いや! いやああ! いやあああ!」
あらん限りの声で私は叫んだ。けれど……。
「さあ、始めようか……。みんな入っておいで」
おじさんがそう言うと、部屋のドアが開き……。何人もの子ども達が部屋に入ってきた。中には小学生くらいの子から中学生くらいの子までいる。
「こ、来ないで! 」
私は恐怖にかられた。必死に暴れるが、拘束は解けない。子どもたちは笑顔で私に近づいてきて、「この女の人をじっけんに使っていいの?」と1人の子どもが聞いた。
「ああ、このおじょうさんをみんなで好きに『じっけん』しなさい」とおじさんはいった。
「わあい! 何のじっけんをしようか? 虫集め? それともクラスでペットとして飼う?それともミミズをつかう?」
みんなが楽しそうに喋っている。私は涙を流しながら、やめて!と叫んだ。けれど、その願いは聞き入れられなかった……。
(続く)