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奏斗side
雲雀と付き合って半年と2ヶ月たった頃。
それは始まった。
半年記念日に、雲雀が
僕にブレスレットをくれた。
嬉しくて、毎日付けてた。
なのにある日突然、そのブレスレットが
なんであるのか分からなくなった。
風「これ⋯」
ただ大事そうに置いてあるから
大切なものなんだと制服のポケットに
突っ込んでいく。
学校で雲雀に会えば少し怒った顔をして
「ブレスレット」なんて言ってきて。
⋯あ。これ雲雀からのプレゼントじゃん。
何やってんの僕。
その時から、徐々に色んなものが
わからなくなっていく。
雲雀のこと限定で。
写真を見て場所を思い出すのに
時間が、かかったり。
週に一回はこのブレスレットのことを忘れる。
おかしい。そう思ってた。
そんな時、久しぶりに従兄弟に会った。
風「叶さーん!!」
叶「おぉ、奏斗。久しぶり元気にしてた?」
風「うん、何とか?毎日高校生してる」
叶「そっか、あ、この前、言ってた彼女。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎⋯雲雀くん?だっけ?どうよ」
風「⋯雲雀?」
叶「うん、奏斗の彼女って
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎雲雀って名前じゃ無かった?」
風「⋯あぁ、そう!雲雀!いい感じよ、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎毎日ラブラブ」
僕⋯今、雲雀を忘れた?
⋯怖い。
なんで。
叶「⋯なぁ、奏斗」
風「なに?」
叶「奏斗⋯」
忘愛症候群。
叶さんから言われたのはそんな名前だった。
愛する人だけを忘れる。
治療法は、愛する人の死。
そうしなければ思い出さない。
叶「⋯大丈夫か?奏斗」
一通り言われて、頭の中はぐちゃぐちゃになる。
風「⋯⋯大丈夫なわけ⋯」
思い出すことは⋯ない。
限りなくゼロに近い。
怖い。
それと同時に安心感もあった。
なんで雲雀だけ忘れるのか。
その理由が分かったから。
その日から僕はできるだけ
雲雀のことはメモに残して
忘れないようにした。
そして、1年記念日。
僕から別れを告げた。顔も見ずに。
顔みたら泣いてしまいそうで。
好きなやつが出来た。なんて嘘をついて。
僕、雲雀しか好きじゃねぇのに⋯。
風「じゃ」
そう言って背を向けて歩き出したのに
次の瞬間には腕を掴まれて歩いていた。
「⋯雲雀!」何度呼んでも気づかない。
ただ黙って僕の手を引く。
バスに押し込まれて、降りて、
また手を引かれて。
着いたのは何十回目の雲雀の家。
リビングから顔を出した
雲雀の母さんの言葉を
雲雀は無視して部屋へと僕を押し込んだ。
風「痛い、痛いって、雲雀」
もう一度そう言えば、
ハッと僕の腕を解放した。
渡「⋯ごめん」
なんて謝ってきて。
泣きそうな顔になってて。
ああ、可愛い雲雀の顔が。
なんて考えちゃって。
ダメになる前に帰ろう。
そう思ってドアノブに手をかけた。
ギュッ。
ガチャりと扉を開ける前に 、
雲雀に抱きしめられた。
優しく、そっと。
僕を包み込むように。
風「離せ」
ダメだよ、雲雀
僕、離れられなくなるから。
自分でもびっくりするくらい低い声。
渡「やだ」
離して欲しいのに、さらに強くなった力で
抱きしめられるから離して欲しくなくて。
風「⋯⋯雲雀⋯」
ごめん。
やっぱり僕、雲雀のこと好きだわ⋯。
渡「俺は離さない」
そう言われた時、凄く安心して。
クルっと向きを変えて、
雲雀の肩に顔を埋める。
離さない。その言葉に一気に体に力が
入らなくなって。
「うわっ」なんて言いながらも
僕を抱きしめたまま、
ベッドに座った。
普段なら恥ずかしすぎて出来きないけど。
今は⋯今は、なんか雲雀に甘えたい。
そんな気分だから。
止まることを知らない涙。
怖い。辛い。雲雀を忘れていくのが怖い。
風「⋯っ、ひっ⋯ば」
無性に、雲雀を呼びたくなって。
渡「ん?」
風「ひば⋯り」
優しく大好きな声。
渡「どうした?」
風「ひ⋯⋯ばり」
何度も何度も雲雀を呼ぶ。
そこに、僕を抱きしめてるのが
雲雀って感じたくて。
渡「⋯大丈夫。奏斗、好きだよ」
耳でそっと囁かれた言葉。
雲雀⋯僕、僕ね
風「⋯僕っ⋯ぼ⋯く、ね」
渡「うん」
風「ひば⋯り⋯が好きっ⋯⋯⋯」
離したくないくらいに、雲雀が好き。
ごめん。
雲雀。
弱くて、ごめん。
風「治らない⋯だから別れよう⋯」
雲雀に全部話した。今までの事を。
そして、治らないということを。
だから、別れたいということを。
忘愛症候群だということも。
雲雀は知らないだろうなぁと思いながらも
伝えればやっぱり知らなくて。
風「だよな。僕、それになったみたいで。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎愛してる人のことだけ忘れてくんだって。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎だから雲雀のこと、いつか忘れるの。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎辛いじゃん?雲雀が」
僕は忘れてく。
いつか完全に雲雀が分からなくなる。
この瞬間の辛い気持ちも無くなる。
だけど、雲雀は。雲雀は違う。
1番辛いのは、雲雀なんだよ。
なのにさ、なんでもっと好きにさせてくわけ?
離れたく無くなるじゃん。
渡「一番辛いの、お前じゃん。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎忘れてく恐怖と闘うんだろ?
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎確かに辛い、けど俺以上に辛いの
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎奏斗じゃないの?」
⋯
渡「完全に忘れるその瞬間まで隣に居させて」
風「それじゃ、雲雀が・・・」
違う。雲雀。
それだと、ひばりが壊れる。
自分を忘れてく奴が隣に居ても、
本当に苦しむだけなんだって。
渡「んぁ!もう!ごちゃごちゃうるさい!
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎この病気、愛してる人のことだけ
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎忘れるんだろ? ってことは奏斗、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎お前が俺を愛してた証拠になる。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎だから、俺は大丈夫。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎俺の隣に居て、その瞬間まで」
でも。だって。
そう繰り返す僕に呆れたのか
デカめの声を出して僕の頬っぺを
グニッと押し潰した。
愛してた証拠⋯。
確かにそうかもしれない。
でも、僕にその記憶はないことになる。
それでも⋯いいの? ⋯雲雀。
風「今から言うことすげぇ残酷だけどいい?」
僕は、雲雀が死なない限り
雲雀を思い出すことはない。
風「この病気の治療法。てか治る方法。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎それは、愛する人の死。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎なんだって⋯雲雀⋯ひ⋯⋯ばり⋯」
自分から言っておいて、
また止まらなくなる涙。
怖い。
僕の知らないところで雲雀が死んだら。
その時、思い出すなんて。
渡「俺、死なねぇよ?
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎死んでから思い出されるとか無理!
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎嫌すぎる。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎だから、俺はまた1からお前に
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎アピールしてやる。 好きにさせてやる。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎大丈夫。俺を言じて」
あぁ、雲雀ってやっぱりすげぇや。
僕が先に好きになったのに。
今度は、雲雀が先に僕の事
好きになってるんだ。
明日急に忘れるかもしれない。
雲雀のこと、全てを。
何も言わず背中を摩ってくれていたおかげで、
落ち着いていく。
そして、ガサガサとカバンを漁って
雲雀に渡す。
風「⋯雲雀」
渡「なにこれ」
風「僕がさもし、もうなにも雲雀のこと
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎思い出せなくなったら僕に渡して?」
絶対読まないで。なんて釘を刺して。
忘愛症候群だとわかった時、
叶さんから言われたこと。
覚えてるうちに、自分に手紙を書いておけ。
なんで⋯なんて思ったけど
叶さんの寂しそうな
そんな表情にそれ以上は聞けなかった。
風「⋯僕、雲雀が彼女で良かった」
雲雀の膝の上で、向かい合わせになりながら。
雲雀の家で最後の会話。
次の日からも僕は雲雀の彼氏として過ごした。
ただ、少しづつ薄れていく雲雀のこと。
写真を見て、どこに行ったのか思い出すのに
時間がかかったり。
挙句の果てには、雲雀と言われて
思い出すのにすごい時間がかかった。
怖かった。
忘れてく僕が。
そんな時は必ず、雲雀が僕を抱きしめた。
渡「渡会雲雀。お前の彼女」
そう何度も自己紹介をして。
2人で行こうと決めていた
大学に無事に受かって、
薄れていく記憶と共に通った
入学して2ヶ月。
6月。
僕は【雲雀が彼女で良かった】
それだけメッセージに残して眠りについた。
朝、目覚めていつも通りに支度をして
携帯を確認。
そして1番上に居る、
知らない人からのメッセージ。
【俺も、奏斗が彼氏で良かった】
なに?
え?
怖。
てか、雲雀って誰?
そんなモヤモヤを抱えたまま、
大学に入れば後ろから
「⋯はよ、奏斗」なんて挨拶されて。
⋯誰?
僕この人知らないんだけど。
風「⋯あの、誰ですか?」
そう聞けば、驚いた顔をして
悲しい顔をして
謝ってきた。
渡「いや⋯ごめん」
それだけ言って僕の前から走り去っていく。
なんなんだ?
⋯でも、なんか面白そう。
友達とかなれねぇかな。
僕はその後ろ姿を追いかけて
風「友達になってください!」
そう伝えた。
独特な笑い方をする。
それがなんか心地よくて。
なんで、2ヶ月も
知り合ってなかったんだろう。
考えれば考えるほど不思議で。
あれから半年たった頃には親友に昇格した。
風「ひば~」
渡「なんだよ、KNT」
そう呼ぶ瞳の奥がグラッと揺れたのは
僕の気の所為だろうか。