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受験シーズンもいよいよ佳境に入り、私たちは毎日遅くまで図書室やカフェで勉強に励んでいた。
でも、不思議と辛くはなかった。休憩時間にユウキくんが淹れてくれるコーヒーや、「あと少し頑張ろう」という彼の一言があるだけで、私の心はいつも満たされていたから。
キララ:「(ペンを置いて伸びをしながら)ふぅ……! やっと今日の分、終わった! ユウキくん、進み具合はどう?」
ユウキ:「(手帳を閉じながら)僕もバッチリだよ。……キララ、本当に毎日よく頑張ってるね。偉いよ」
キララ:「(照れながら)ユウキくんが隣にいてくれるからだよ。一人だったら、きっと途中で投げ出してたもん」
ユウキ:「(私の頭を優しく撫でて)二人で合格して、最高の春にしようね。……あ、そういえば、前に話した温泉旅行のことなんだけど」
ユウキくんはスマホを取り出すと、いくつかの宿泊プランの画面を見せてくれた。そこには、雪景色が見える露天風呂や、美味しそうな懐石料理の写真が並んでいた。
ユウキ:「この宿、どうかな? 部屋に露天風呂がついてるんだ。ここなら、周りを気にしないで二人でゆっくり過ごせると思って。……少し奮発しちゃったけど、キララへのご褒美にしたいんだ」
キララ:「(目を見開いて)えっ……! 部屋に露天風呂!? そんな贅沢、いいの? すっごく素敵……!」
ユウキ:「君が喜んでくれるのが、僕にとって一番の幸せだから。……卒業したら、もう『幼馴染』なんて言葉に縛られることもない。僕たちは、僕たちだけの未来を歩むんだ。……ねえ、キララ。温泉で、ゆっくり将来の話もしたいな」
ユウキくんの言葉には、いつも確かな未来への熱があった。ミナトとの関係は、いつも「今」を維持するだけで精一杯で、明日がどうなるかも分からなくて不安だった。でも、ユウキくんはいつも、私を「その先」へ連れて行ってくれる。
キララ:「(幸せを噛みしめて)……うん。将来の話、たくさんしようね。私、ユウキくんと一緒なら、どんな知らない場所に行っても、どんな新しい生活が始まっても、全然怖くないよ」
ユウキ:「(私の手を握って、指先を優しく絡ませながら)僕もだよ。……キララ、愛してる。温泉旅行、絶対に最高の思い出にしよう」
キララ:「(顔を真っ赤にしながら)……私も、愛してるよ、ユウキくん」
図書室の外では、冷たい冬の風が吹き抜けていたけれど、私の心の中には温泉の湯気のような温かさが広がっていた。
ミナトがサッカーでどこまで勝ち進んでいるのか、今どこで何をしているのか。そんなことは、もう今の私の世界には一滴も関係のないこと。
私の世界にあるのは、目の前で優しく微笑むユウキくんと、彼が約束してくれた、湯気の向こう側の明るい未来だけだった。
つづく