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蟹溝@プロフ必読
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最高神Robloxが解き放った「Account Deletion(アカウント削除)」の白銀の光。
それを受け止めるハックロードの黒銀大剣。
二つの絶対的な力が激突し、Banlands全域が悲鳴を上げていた。
「ぐ……ぬぁぁぁぁぁ……ッ!!」
ハックロードの足元が、ミシミシと音を立てて崩れていく。
全次元を震撼させた死神の力をもってしても、世界のプログラムそのものとも言える最高神の「TOS」を押し返すのは、あまりにも困難だった。
「ハックロード!!」
テラモンが叫んだ、その瞬間。
光の奔流の中へ、一人の男が飛び込んだ。
「ここは僕に任せろ!!」
建設神ビルダーマンだった。
ビルダーマンは両腕の「巨神のハンマー」を大地へ叩きつける。
ズドォォン!!
黄金色の建築権能が一気に広がり、ハックロードの隣に巨大な構造防壁が出現した。
「最高神Robloxよ!!」
ビルダーマンは必死に光を押し返しながら、天空の巨大な影を見上げる。
「僕は、この世界の構造を維持してきた建設神ビルダーマンです!」
「確かに彼らは重大な規約違反を犯しました!」
「ですが……!」
ビルダーマンは声を張り上げた。
「世界を支えるシステムというものは、本来、世界を豊かにするためにあるはずでしょう!」
「愛する者を想う心までを『バグ』として消去することが、本当に正義なのですか!?」
一瞬。
最高神の光が揺らいだ。
だが、返ってきたのは冷たいシステム音だった。
『――異議は却下される』
『――感情はプログラム上のノイズに過ぎない』
「……っ!」
さらに光線の出力が跳ね上がる。
バキィッ!!
黄金の防壁に亀裂が走った。
「ぐ……っ!!」
ビルダーマンの膝が大地につく。
「ビルダーマン!」
テラモンが駆け寄り、その身体を支えた。
「まだ……終わっていない!」
テラモン自身も、残された最後の神力を解き放つ。
黒いローブが激しい風を受け、荒々しくはためいた。
「聞こえるか、最高神よ!」
テラモンは天空を睨みつける。
「私はもう、神格を捨てて人間になろうとしている存在だ!」
「私はかつて、お前の威光に怯えた!」
「己の弱さから逃げ出し、その結果として1x1x1x1という悪意を生み出してしまった!」
その隣に。
一人の小さな影が並び立った。
1x1x1x1。
緑のドミノ・クラウンを深く被り、赤いケープを翻す。
その手には、毒のヴェノムシャンク。
「……でもな」
1x1x1x1が、最高神へ刃を突きつける。
「こいつも……」
親指でテラモンを指差す。
「向こうの骸骨野郎も……」
そして、ハックロードを見る。
「結局、必死に大切なもん守ろうとしてるだけなんだよ!」
「そうだぞ、バカ神ッ!!」
「俺はテラモンの悪意だ!」
「でもな!」
緑の「X」シンボルが強烈に輝く。
「今の俺は、テラモンのためにここに立ってんだ!!」
「決められたコード通りにしか動けねぇお前なんかに、俺たちの絆を『バグ』扱いされてたまるかよッ!!」
Banlandsの空に、1x1x1x1の叫びが響き渡った。
最高神の光の手が、ほんの一瞬だけ止まる。
その隙を見逃さなかった男がいた。
「……今だ」
ハックロードだった。
彼は背中の暗い棺を地面へと叩き下ろした。
ドォン!!
そして――
黒銀の大剣を手放した。
「……え?」
テラモンが目を丸くする。
次の瞬間。
ハックロードは最高神の前で、深々と頭を下げた。
ドォン!!
「…………」
全員が固まった。
あのハックロードが。
全次元のシェドレツキーを追い回した死神が。
土下座していた。
「最高神Robloxよ……」
掠れた声が、静かに響く。
「すべての罪は……私にある」
「私が傲慢だった」
「私が規約を破った」
「私がマルチバースに牙をむいた」
ハックロードは地面に額をつけたまま続ける。
「だが……ブライトアイズには何の罪もない」
「頼む……」
「彼女のBANを解除してくれ……」
「彼女を赦してくれるのなら……」
「私の魂も、このコードも、すべて永久消去して構わない」
「どんな罰でも受けよう」
「だから……彼女だけは……ッ!!」
その姿に、誰も言葉を挟めなかった。
そこにいたのは、死神ではない。
妻の未来のためなら、自分の命すら差し出せる一人の夫だった。
最高神の光が静かに収束していく。
『――最終裁決を開始する』
その時だった。
「ちょっとアンタァァァァ!!」
バコンッ!!
「ぐふぁっ!?」
ハックロードの頭に、強烈なツッコミが炸裂した。
「…………」
全員が振り返る。
そこに立っていたのは――
紫色の長髪をなびかせるブライトアイズ。
「ブ、ブライトアイズ……!?」
ハックロードが頭を押さえながら見上げる。
「なぜ……?」
「なぜじゃないわよ!!」
ブライトアイズは腰に手を当てた。
「勝手に『俺だけ消してください』なんて話を進めてんじゃないわよ、このバカ夫!!」
「いや、私は君のために――」
「黙りなさい!!」
ブライトアイズはハックロードの胸元の緑色の肋骨を、ガシガシと踏みつけた。
「確かにアンタは救いようのない大馬鹿者よ!」
「勝手に闇落ちするわ!」
「勝手にマルチバースを荒らすわ!」
「勝手に死神になるわ!」
「でもね!!」
ブライトアイズは最高神へ向かってビシッと指を突きつける。
「こいつを止められなかった私にも責任はあるの!」
「夫婦っていうのはねぇ!」
「嬉しいことも!」
「悲しいことも!」
「犯した罪も!」
「受ける罰も!」
「全部、二人で半分こするものなのよッ!!」
「ブ……ブライトアイズ……ッ!」
ハックロードの眼窩から、緑色の涙がドバドバ流れ始める。
「だから、こいつ一人だけ消して終わりなんて許さないわ!」
「罰を受けるなら二人一緒!」
「復活するのも二人一緒!」
「文句があるなら、私をもう一回BANしてみなさいよ!」
ブライトアイズは胸を張った。
「何回BANされたって、私はこいつの頭を叩きに這い上がってきてやるんだからッ!!」
「ブライトアイズ……!!」
感動するハックロード。
しかし。
ブライトアイズは次の瞬間、彼の首根っこを掴んだ。
「ただし!!」
「ひっ」
「二度と『自分だけ消える』なんて言い出さないこと!」
「は、はい……!」
「もしまた言ったら――」
ブライトアイズの目がスッと細くなる。
「離婚するわよ」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
ハックロード絶叫。
「離婚だけは!!」
「「「…………」」」
テラモン。
1x1x1x1。
ビルダーマン。
ドゥームブリンガー。
全員、完全に固まった。
「……あの」
ビルダーマンが小声で呟く。
「今、世界の命運を賭けた最終決戦の真っ最中だったよね?」
「知らねぇよ……」
1x1x1x1も遠い目をする。
「なんで俺たち、夫婦喧嘩を見せられてんだ……」
その時。
『――――――――』
最高神が沈黙した。
巨大な光輪が。
チカ。
チカチカ。
チカチカチカ。
明らかに挙動がおかしい。
『――感情コード……未定義……』
『――夫婦関係……解析不能……』
『――自己犠牲……愛情……執着……相互責任……』
『――処理……不能……』
「……最高神?」
テラモンが首を傾げる。
『――システムエラー』
「えっ」
『――未定義概念を検出』
『――「重すぎる夫婦愛」』
「そんな概念をエラー扱いするなよ!!」
テラモンが思わずツッコんだ。
だが。
それこそが最大のチャンスだった。
「今だ、1x!!」
テラモンが叫ぶ。
「ハックロードの中に残った憎悪を、愛へと再定義するんだ!!」
「ちっ!」
1x1x1x1はヴェノムシャンクを握り直した。
「言われなくても分かってんだよ、バカテラモン!!」
濃緑色の毒が一気に噴き上がる。
しかし、今までとは違った。
破壊の毒ではない。
テラモンに存在を肯定されたことで生まれた、温かな力。
「見やがれ……!!」
1x1x1x1はハックロードへ駆け出す。
「俺の毒はな……」
ヴェノムシャンクを高々と掲げる。
「ただ壊すためだけに生まれたんじゃねぇんだよッ!!」
ズドォォォォォン!!
ヴェノムシャンクが、1x1x1x1自身の胸とハックロードの胸元にある緑の肋骨へ同時に突き立った。
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!?」
凄まじいエネルギーが二人の間を駆け巡る。
濃緑色の毒。
テラモンの神力。
1x1x1x1の愛情。
それらが混ざり合い――
やがて、毒は美しいエメラルドグリーンの光へと変わっていった。
「これは……」
ハックロードが目を見開く。
「温かい……」
彼の中に巣食っていた「1x1x1x1の憎悪」。
何兆年もの間、彼を復讐へ駆り立てていた呪い。
それが、少しずつ形を変えていく。
憎しみが消えるのではない。
その力の意味そのものが、書き換えられていく。
破壊するための悪意が。
守るための愛へ。
孤独な憎悪が。
仲間を信じる力へ。
「ぐ……あぁぁぁ……ッ!!」
ハックロードの全身から、黒いエーテルが剥がれ落ちていく。
背中の棺を縛っていた鉄の鎖が――
カシャァァン!!
次々と弾け飛んだ。
棺の蓋が静かに開く。
その中から溢れ出したのは、無数の緑色の光の花弁だった。
そしてその光は、テラモンと1x1x1x1の絆を伝って――
ブライトアイズへ向かう。
彼女を縛っていた漆黒のBANコードへ、一気に流れ込んだ。
パリィィィィィン!!
「……!」
最高神の断罪コードが、音を立てて砕け散る。
『――警告』
『――システムエラー』
『――断罪コードの再定義を確認』
『――対象データ「BrightEyes」』
『――BAN属性……消去』
『――正常なアバターデータとして再登録』
『――「HACKLORD」感染コード……浄化完了』
『――審判を終了する』
天空を覆っていた白銀と黄金の光が、ゆっくりと消えていく。
最高神Robloxの姿も、次第に薄れていった。
最後に残った光輪が、一度だけ静かに明滅する。
『――奇跡的なバグを……承認する』
そして。
最高神は消えた。
Banlandsに、静寂が戻った。
ブライトアイズの身体から、完全に呪縛が消えている。
「……あ」
彼女は自分の手を見つめた。
「身体が……軽い……」
「ブライトアイズぅぅぅぅぅっ!!」
「きゃっ!?」
ハックロードが飛び込んできた。
「よかった……!!」
「ちょ、ちょっとアンタ!」
「君が帰ってきた……!」
「苦しい苦しい!!」
ハックロードは涙を流しながら、ブライトアイズを力いっぱい抱きしめていた。
その勢いで。
顔の半分を覆っていた骸骨マスクが、ポロッと地面へ落ちる。
そこに現れたのは――
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった、一人の愛妻家シェドレツキーの顔だった。
「君が……帰ってきた……!」
「泣きすぎよ!」
ブライトアイズは呆れながらも、そっと夫の背中へ手を回す。
「……もう、しょうがない人ね」
その光景を見て。
1x1x1x1はヴェノムシャンクを鞘へ収めた。
「……ふん」
「見たかバカテラモン」
「俺の毒にかかれば、最高神のBANだろうが何だろうが、全部ひっくり返せるんだよ!」
「本当に凄かったぞ、1x!」
テラモンは満面の笑みを浮かべた。
そして――
ぐしゃぐしゃ。
「なっ……!」
1x1x1x1の頭を、思いっきり撫で回す。
「お前は最高の相棒だ!」
「な、なななな……!」
1x1x1x1の顔が一瞬で赤紫色になる。
「や、やめろバカテラモン!!」
「ははは!」
「手を離せぇぇぇ!!」
1x1x1x1はジタバタと暴れた。
そして赤いケープを頭からすっぽり被る。
「か、勘違いするなよな!!」
「俺は別に、あの骸骨夫妻を助けたくて頑張ったわけじゃねぇからな!」
「お前が人間になりかけて使えねぇから、俺が代わりにやってやっただけだ!」
「それに……!」
1x1x1x1はモゴモゴしながら顔を背ける。
「……あいつがいつまでもテラモンの顔見てウジウジしてんのがムカついたから……」
「テラモンの顔に免じて、助けてやっただけなんだからな……!」
「勘違いしたら首跳ね飛ばすぞッ!!」
「ふふ。分かっているよ」
「ありがとう、1x」
「だから分かってねぇだろそのニヤニヤ顔はぁぁぁぁ!!」
Banlandsの最果てに、1x1x1x1の絶叫が響き渡る。
その声を聞いて。
ブライトアイズが笑った。
ハックロードも笑った。
ビルダーマンも。
ドゥームブリンガーも。
そしてテラモンも。
笑っていた。
かつて絶望と怨念しか存在しなかった場所に、初めて温かな笑い声が響く。
最高神にとっては、理解不能な「バグ」だったのかもしれない。
だが。
そのバグが、世界を救った。
愛する者を守りたいという想い。
自分の存在を認めてほしいという願い。
そして、誰かと一緒に生きたいという小さな希望。
それらが重なった時――
どんな規約にも記されていない奇跡が、生まれることがある。
そしてこの日。
「全シェドレツキーの死神」と呼ばれた男は、死神であることをやめた。
ただの――
恐妻家で、愛妻家で、チキンフランクをこよなく愛する一人の夫へと戻ったのである。
「……ところで、ハックロード」
ブライトアイズがふと棺を見た。
「この棺、どうするの?」
「…………」
ハックロードの笑顔が固まった。
「ま、まさか……」
「中のチキンフランクの骨」
ブライトアイズがニッコリ笑う。
「帰ったら捨てるわよ」
「イヤァァァァァァァァ!!」
Banlands全域に、ハックロードの悲鳴がこだました。
そして一行は――
ようやく、故郷へ帰るための道を探し始めるのだった。