テラーノベル
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最近、俺はスマホのキャリア乗り換えの勧誘のバイトを始めた。
「お姉さん、今ってどこのキャリア使ってますか?」
ショッピングモールの特設会場の前を通りかかった若い女性にティッシュを渡そうとするが、俺なんて存在しないかのように素通りしていく。
ため息が出そうになるのを何とか堪える。
スマホ会社のロゴが入ったTシャツを着て、厚紙でできたふざけた形の帽子を頭にかぶり、通りすぎる客に何とかティッシュを渡そうとするが、うまくいかない。
しかも、ティッシュだけを配れば良い、というだけの仕事内容ではない。
席に誘導し、客のスマホのキャリアを格安SIMに乗り換えさせるまでがセット、ティッシュはあくまでも切っ掛けだ。
顧客獲得は心理戦。
ティッシュの他にもバルーンアートで客の子どもの関心を引き、スーパーボール掬いに夢中になっている間に、気の弱そうな親や、デジタルに強くない中高年を取り込む。
『安さ』という目先の|キャッシュバックや商品券《エサ》に目がくらみ、その後の継続的な料金のお得さを計算する柔軟さを持ちあわせていない客達を、いかに短時間で契約させられるかどうか、それが|要《かなめ》だ。
「SIMカードを入れ替えるだけでそのまま使えますよ」
「キャッシュバッグが2万円のところ、本日ご契約なら5万円の商品券もお付けします!」
そんなうまい話があるかっ……てね。
……いや、語弊があるな。
客はキャッシュバッグも商品券も実際に獲得できるのだが、|予後《・・》があまり良くないのだ。
ところで、スマホ乗り換えやウォーターサーバーの勧誘スタッフがあれだけ必死に顧客を獲得しようと躍起になっているのは、何故だと思う?
上司からの叱責を恐れて?
顧客を取らなきゃ給料が発生しない?
ははっ……、見当違いも甚だしい。
スマホのキャリア乗り換えや、ウォーターサーバーの勧誘スタッフは全員、家族や恋人を人質に取られているからだ。
そうじゃないと、バイトがあんなに必死にしつこくティッシュを配るなんて、理屈に合わないだろう?
「あら、ティッシュくれるの?」
見ると50代くらいの女性だった。
向こうから声がかかるなんてラッキーだ。
「そうなんですよ。どうぞ!」
俺は5個のティッシュをまとめて渡す。
「あら、こんなに!ありがとうー」
そのままどこかに消えようとするので、俺は思わず進路を塞ぐ。
「お姉さん、1分だけお話しませんか?どうぞお席に」
俺はパイプ椅子を示す。
「ええー、忙しいのよぉー」
ショッピングモールに来ている時点で、さほど忙しくはないはずだ。
「1分だけ!お願いします。こちらにどうぞ」
俺は椅子を引く。
「じゃあ、旦那を呼んでくるわ。私に決定権はないから」
本当か?逃げる為の口実じゃないのか?
「あ、お父さーん!」
女性が手を振った先に、同じく50代くらいの男性がいた。
……嘘じゃなかったか。
++ まず、家族……、母親と妹の命が危険にさらされる事になったのには、俺にすべての責任がある。
父親は数年前に借金を残して蒸発。
母親は、俺と妹を養う為に朝から晩まで必死に働いてくれていた。
ある日、母親の誕生日プレゼントを買おうと、ふらっと立ち寄ったショッピングモールで声をかけられた。
「お兄さん、今ってどこのキャリアですか?」
目の前に出された大量のポケットティッシュに足止めをくらった。
ポケットティッシュは買うものじゃない。
鼻もかめるし、丸めて耳に詰めれば耳栓になる。
母親も、化粧をする時に使えるだろう。
ポケットティッシュをむんずと掴み、お礼のつもりで会釈をし、そのまま立ち去ろうとした。
「お兄さん、お話を……」
ポケットティッシュ、5個ゲットだぜぃ。
だが、歩を進めた背中に向けられたスタッフの言葉が、俺の決意を簡単に崩壊させた。
「本日契約されたら、5万円分のポイントキャッシュバッグと7万円分の商品券のプレゼントがありますよ!!」
7万円分の商品券があれば、母さんに食洗機を買ってあげられる。
5万円分のポイントを今月の食費に充てたら、足りなかった妹の修学旅行費も払える。
スタッフの方に振り向いた俺は、乗り換えを決心した。
でもそれが地獄への引き金だったんだ。
スタッフとプランやギガ数もろもろを相談していると、すでに1時間半が経っていた。
そろそろ終盤だろう。
首をコキコキと鳴らし、タブレットを操作しているスタッフに向き直る。
「では、ここにサインをお願いします」
スタッフは、タブレットとタッチペンを渡した
電子サインをした後、契約審査に通り、新しく発行されたSIMカードをスタッフが俺のスマホに挿し、開通テストをした。
「……はい、お疲れ様でした!これで完了です!」
スタッフが満面の、しかしどこか疲れたような笑顔で、俺にスマホを返す。
「それと、商品券7万円分ですね!ご確認ください」
たしかに7万円分ある。
俺はその足で、ショッピングモール内の家電量販店に向かった。
+
「こんな高いものどうしたのよ!?」
母親は、数日後に自宅に届いた食洗機を見て驚いていたが、事情を話すと瞳に涙を浮かべた。
「馬鹿ね……。でも、ありがとう……」
食洗機を購入してから、母親のあかぎれは少しマシになってきた。
「お兄ちゃん、これお土産!お母さんも一緒に食べようよ」
妹は無事に修学旅行に行き、楽しい思い出を作れたようだ。
「3人でこうやって一緒にテーブルを囲むなんて、久しぶりね」
「本当だね。お母さんは残業も多いし、お兄ちゃんもバイトで忙しいもんね。私も、早くバイトできる歳になりたいな」
「格安SIMにしたから、今月は金と時間に余裕ができたんだ。普段のバイトの他に、単発バイトも入れたいから、スマホを持たないわけにはいかないし……」
「大丈夫なの?体壊さないようにね」
「母さんこそ」
「あ、これ美味しい」
「お前ばっかり食うなよ」
久しぶりに食卓に笑顔が灯る。
本当に良かった。
あの時の俺の選択は間違っていなかった。
その時、俺のスマホにポップアップ画面が表示された。
【本プランの対応期間中、契約者およびその一親等内の家族の生命維持権は、甲(会社名Qとする)の管理下に置かれるものとする。万が一、指定された営業活動(ノルマ)において未達が生じた場合、甲は担保として、預かった生命(人質)をいつでも任意に回収できる権利を有する】
……何だこれ?ウイルスか?
ポップアップ画面を閉じようとするが、何度タップしてもスマホが反応しない。
固まった?
そもそも、ポップアップ画面ってこんなにたくさん文字が出たっけ?
『アップデートが完了しました』とか、『ストレージが残りわずかです』とか、もっと短文のはずだ。
なのに今、目の前にあるのは、役所の書類や利用規約のページをそのまま無理やり小さな枠に流し込んだような文字の羅列。
スクロールもできず固定されたまま。
……ははっ、格安SIM様よぉ!
安かろう、悪かろうってかぁ!!
いや、どうする?
乗り換えたばっかりなのに壊れた?
せっかくお得に乗り換えられたと思ったのに、どれだけツイてないんだよ。
再起動すれば直るだろうと電源ボタンを押すが、反応がない。
嘘だろ……、ん?
画面の下の方をよく見ると、【同意】の文字が浮き上がっている。
こんなの押したら更に危ないだろ。
誰が推すか。
その時、修学旅行のお土産の饅頭を食べていた母親と妹が苦しみだした。
「ゲホッ!げほ……っ!、お、お兄ちゃん……!」
「これ、何が入って、……あ、が……!」
さっきまで笑顔だった2人が、突然喉を掻きむしり、食卓に突っ伏していた。
「どうしたんだよ、おい!!」
駆け寄ろうとした俺の手の中で、スマホが震えた。
びっしりと並んだ文字の下、さっきまで空白だった部分に、新たな1文が浮かび上がった。
【これより、契約プランに応じた生命維持エネルギーの配給を開始します。当日の通信量:制限超過。一親等内家族の生命維持権を20%まで一時凍結中】
何だよこれ……。
意味が分からない。
分からないが、母親と妹に危険が迫っている。
パニックになりながら、俺は狂ったようにスマホ画面を叩いた。
「おい、やめろ!同意する!同意するから!!」
親指を押し付けた【同意】ボタンが鈍く光り、画面が切り替わった。
【規約への同意を確認しました】
【未達ノルマの支払いの為、即座に営業活動(Q社)への従事を命じます。速やかにショッピングモール○○店、3階催事場に向かってください】
【本日の獲得ノルマ∶0/1件】
【残り時間∶4時間21分】
【未達の場合、本日24:00をもって担保(人質)を回収(処分)します】
++
「それでは、こちらに必要事項のご記入と、サインをお願いいたします」
何度も繰り返し、いろんな客に発してきた説明を終えた。
「うーん……、どうするかなぁ……」と、さっき何とか席に座らせた中年夫婦の旦那の方は、この後に及んで悩んでいる。
さっさと記入しろよ。
「それではですね、本日ご契約の場合、8万円分の商品券をお付けいたします!」
俺は商品券を机の上に、軽く叩きつけるように置いた。
頼むから引っかかってくれ。
俺のように何も考えず、タブレットにサインをしてくれ。
「そんなに!?新しい洗濯機が買えるじゃない!ねぇ、お父さん!」
「うーん、そうだなぁ……。まあ、別にスマホにこだわりがあるわけじゃないし、安い方がいいか」
中年夫婦の旦那の方が、サインをした。やった……!!
スマホ画面に表示された【本日の獲得ノルマ:6/5件】の文字。
【本日分のノルマ達成を確認。生命維持エネルギーを100%に復元します】
【次回支給日∶明日 00:00】
【明日の目標∶5件】
よかった……っ!!
これで今夜、母さんと妹が死ぬことはなくなった。
今日は契約を1台分多く取ったというのに、明日のノルマに繰り越しはできないらしい。
目の前では、契約を終えたばかりの中年夫婦が、商品券が入った封筒を嬉しそうに鞄にしまっている。
「お兄さん、ありがとう!いい時に声をかけてたもらったわ。今週末に温泉でも行こうかしら」
「ええ、よかったです。お気をつけて……」
引きつった笑顔で2人を見送る。
あの夫婦が家に帰り、笑顔で旅の計画を立てている頃、彼らのスマホにも、あの不気味なポップアップが表示されるはずだ。
そして彼らもまた、自分の大切な人を守る為、このふざけた紙の帽子をかぶり、ティッシュを配ることになる。
……俺は何をしているんだ。
自分の家族を救う為に、無関係の夫婦を巻き込んでしまった。
いや、俺だけじゃない。
あの時、俺にティッシュを大量に押し付けてきたスタッフも。
その前にそいつをハメた奴も。
全員、自分が助かる為に、次の犠牲者を差し出し続けている。
問い合わせ先? 解約窓口?
そんなもの、存在するわけがない。
表示されるのは【獲得件数】と【残り時間】、そして【家族の生命維持率】だけ。
そしてノルマの数は、少しずつ増えてきている。
「終わりは来るのか……?」
ぽつりと漏らした独り言は、ショッピングモールの雑踏と、賑やかなBGMにかき消された。
+
「お兄ちゃん、疲れてる?」 あの日以来、再び3人が食卓に揃った時、妹が俺に言った。
「そんなことないよ」
「本当に?最近、顔色が悪いわよ?」と母親。
ほとんどどころか、1日も休みはない。
母親と妹は、修学旅行のお土産を食べた時に体調に異常を|来《きた》したのは、饅頭が喉に詰まったからだと思っている。
俺が【同意】ボタンをタップすると、母親と妹は、それまでの苦しみが嘘のように一瞬で回復した。
その後、俺は指定されたショッピングモールの催事場に急いで向かい、一通りのレクチャーを受けた後に勧誘を始めた。
|今日《こんにち》に至るまで、何とか毎日のノルマをこなせている。
働いた分の日給はきちんと振り込まれているので、タダ働きではないのがせめてもの救いだ。
「あ、お兄ちゃん、来週の日曜日なんだけどさ……」
妹が俺の様子をうかがいながら、上目遣いで言った。
「クラスの男の子と映画を観に行くことになって……。服、買ってもいいかな?」
は……?俺は思わず箸を止めた。
「あら、デート?」
母親が口を挟む。
「そんなんじゃないってば!」
「……映画?服?随分といいご身分だな」
冷たい言葉が、つい口から出てしまった。
「え、何それ……。私だって普段は我慢してるじゃん!」
「お前が能天気に恋愛ごっこしてる間も金はかかってんだよ!こっちは命削ってバイトしてるっていうのに!!」
「何それ、大げさ!!
「ちょっと、2人ともやめなさい!」
母親が慌てて割って入る。
「お兄ちゃんも、言い方がキツイわよ。バイト入れすぎて、疲れてるのよね?最近はお金にも少し余裕が出てきたんだから、少し休んだら?……ほら、服はお母さんが買ってあげるから、今度の休みに2人でお店に行きましょ?ね?」
「……」
母親に話しかけられた妹は、黙ってうつむいたままだ。
「……ごめん。俺、トイレ行ってくる」
俺だって本当は、こんなことを言いたいわけじゃない。
でも俺が1日でもノルマを達成できなかったら、この日常が一瞬で終わるんだぞ……?
翌日、俺は再びショッピングモールの催事場に立っていた。
昨日の夜、妹に放ってしまった酷い言葉が頭から離れない。
俺だって、好きであんなことを言ったわけじゃない。
だが、自分に言い訳をしている暇はなかった。
「お姉さん、ティッシュどうぞ!今ならお乗り換えで……」
「いりません」 冷たくあしらわれる。
昨日のことを気にしているせいか、今日は獲得のペースが遅い。
あと1件でノルマを獲得できるのに、ブースの撤収時間が迫ってきている。
冷や汗が背中を伝う。
そんな時だった。
「お兄さん、ティッシュ余ってたらくれません?」
振り向くと、小さな男の子の手を引いた若い女性が立っていた。
おそらく親子だろう。
俺は必死に笑顔を作り、手一杯に掴んだティッシュ7個を渡した。
「どうぞ!お姉さん、今ってどこのキャリア使われますか?本日なら10万円分の商品券を……」
「えっ、10万円!?本当に?」
女性の目が輝く。
よし、乗ってきた。
このまま席に移動させて、またいつも通り契約を……。
「うあ゙あぁ゙あ゙あぁ゙ああ゙あ゙あ!!!!」
その時、耳を切り裂くような悲鳴と怒号が響き渡った。
「キャアアアアアアア!!人が……!!逃げて!!」
「うわあぁぁぁッ!?」
買い物客が一斉に逃げ惑う。
人波の間から現れたのは、返り血を浴びた、巨大な鎌を振り回す1人の男だった。
男の格好を見て、俺は息を飲んだ。
破れかけた『Q社』のロゴTシャツ。
頭にはぐにゃぐにゃに潰れた紙の帽子。
男は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、狂ったように鎌を振り下ろしていた。
「……て、くれよぉ!乗り換えてくれよぉお!!」
あの顔、どこかで……、そうだ!
俺にティッシュを渡し、契約させたあの時のスタッフだ!!
「……昨日。昨日、ノルマが達成できなかったんだ!そしたら、彼女が……、一緒に暮らしてた俺の彼女が、死んだ!!頼む゙からぁ、誰か乗り換えてくれぇぇ゙え゙!!今な゙ら20万円分の商品券を゙お付げしますから゙ぁあ゙あ゙!!」
あのスタッフは、恋人を人質に取られていたのか。 ショックで完全に狂ってしまっている。
男は血走った目で周囲を見渡すと、一直線にこちらへと走り出してきた。
「ひっ……!?」 女性が悲鳴を上げてその場にへたり込み、男の子は泣き叫ぶ。
逃げないと……!
でも、もしここで俺が逃げたら?
この親子が殺されたら?
今日の俺のノルマはどうなる……?
無理だ……!
他の客を探す時間なんて、もう残ってない!
「危ないっ!」
俺はへたり込む母親と男の子の腕を、力任せに引っ張った。
そして、パーテーションで仕切られた、外からは死角になっている契約ブースの奥へ2人を強引に押し込んだ。
「ひっ、ヒィい……!」
「大丈夫です!ここなら見えません!静かにしててください!」
鎌を持った男は、俺たちのブースのすぐ横を咆哮しながら通り過ぎ、駆けつけた警備員たちによって取り押さえられた。
ブースの陰で、女性はボロボロと涙をこぼし、ガタガタと震えながら男の子を抱きしめている。
「……あ、ありがとう……っ!助けてくれて、本当に、ありがとう……っ!」
今、この母親は極限のパニック状態だった。
俺はタブレットとタッチペンを準備し、「落ち着いてください。ここに、お名前とご住所を。安全確認の為に、後ほど警察から連絡がいくと思いますので」と低い声で言った。
「え?は、はい……っ!」
疑う余地もなく、震える手でタッチペンを受け取り、画面に自分の名前を殴り書きした。
「そうです……はい、最後にここにサインを……、はい、ありがとうございます」
その間に俺は、さっき彼女が落としたスマホのSIMカードを入れ替えた。
俺のスマホにポップアップ画面が表示された。
【本日の獲得ノルマ∶5/5件】
「……良かった。お互い、助かりましたね。あ、これ、10万円分の商品券です」
俺は、涙を流して感謝し続けている母親の手の平に商品券の入った封筒を握らせた。
通り魔からは逃げられただろうが、今日から一生、そのスマホに可愛い息子の命を握られ、次の犠牲者を探してティッシュを配り続けることになる。
遠くでパトカーのサイレンを聞きながら、俺は紙の帽子を深くかぶりなおした。
+
重い足取りでアパートの玄関のドアを開けた瞬間、俺は息を飲んだ。
いつもなら電気がついているはずなのに、真っ暗だ。
2人ともまだ帰ってないのか……?
静まり返った家の中に、静寂だけが満ちている。
嘘だろ……?
一気に血の気が引いた。
達成したはず……だよな?
まさか、最後の親子は騙すように契約させたから、取り消しになったとか!?
半狂乱になりながら、勢いよく襖を開けた瞬間、パン!パン!と派手な音が響いた。
パッと部屋の明かりが点く。
目の前には、笑顔でクラッカーの筒を持つ母親と妹が立っていた。
「お誕生日おめでとう!!」
テーブルの上には豪華なごちそうと、小さなホールケーキ。
その上には、『HAPPY BIRTHDAY』と書かれたチョコプレートが乗っている。
「びっくりした?ふふっ、サプライズ大成功ね!」
母親が嬉しそうに目を細める。
「な……んだよ、そ……れ」
膝から崩れ落ちそうになるのを、壁に手をついて必死に耐えた。
良かった
生きてる。
2人は生きているんだ。
「驚かせちゃってごめんね、お兄ちゃん」
妹が照れくさそうに笑いながら、後ろに隠していた大きな紙袋を両手で差し出してきた。
「はい、これ。プレゼント」
「……え?」
中には、俺がずっと欲しがっていたブランドのスニーカーが入っていた。
昨日、俺はあんなに酷いことを言ってしまったというのに。
「お兄ちゃん、毎日バイトで靴がボロボロになるまで頑張ってくれてるでしょ?だから、お母さんと相談して決めたの」
「さっそく明日から履いていってね?さあ、食べましょ。お料理が冷めちゃう」
母親が優しく微笑みながら、俺の背中をポンと叩いた。
「でも高かっただろ?」
俺は唐揚げを頬張りながら言う。
「それなりにね。でも今日は、臨時収入があったから」
母親がケーキを切り分けながら答える。
「臨時収入?」
「今日、お母さんと行ったショッピングモールの催事場で、格安SIMに乗り換えたの」
妹が自分のスマホを取り出す
……は?
「実はね、私もなのよ」
母親も自分のスマホを取り出し、続ける。
「何でもっと早く変えなかったのかしら。月々の料金も半額になるっていうのに。商品券も15万円分もらえたのよ。それをプレゼント代に充てたの」
母親と妹が、嬉しそうにスマホを見せてくる。
……あ、……、あぁ……。
テーブルの上に並んだ、俺、母親、妹のスマホにポップアップ画面が表示された。
【世帯契約者数∶3名】
【本日分の世帯獲得ノルマ∶0/17件】
【残り時間∶0時間42分】
【本日24:00までに世帯ノルマが未達成の場合、世帯全員の生命維持権を回収(処分)します】
……どうやら、もうすぐ終わりが来るようだ。
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うわっ…沙里央さん、この第1話マジでやばい…😭💦 最初は「スマホ乗り換えのバイトか〜」って軽く読み始めたのに、まさか家族の命がかかったホラーに豹変するとは思わんかった…! 特に最後の誕生日サプライズで、まさかお母さんと妹まで同じ罠にハマってる展開、心臓止まるかと思った…。 主人公の「俺と同じ轍を踏ませてしまう」って苦しみがヒリヒリ伝わってきて、続きが気になりすぎて夜しか眠れない…! 次話も絶対読むね!📖🔥
沙里央
30
KOKUGA
207
^_^