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諦めないで再びログを読み進めていくと、あるアカウントの投稿が目に留まった。
「妻を堕としてくれてありがとう #天魔 」
――#天魔 !!
もしかして彼に繋がる投稿になるのかな?
今までで一番信憑性が高い!
急いでログを読み込んだ。
投稿者の名前は『モモンガ』。アイコンはどこか虚ろな目をした動物のイラストが利用されていた。
プロフィール欄には、『サレ夫 浮気されて妻と離婚 男だって被害者になる』と簡潔に記されている。
投稿は怒りと悲しみの愚痴がほとんどだった。
「妻に裏切られた」
「親権も取れず、慰謝料だけ請求される」
「俺はこんなにもボロボロだ」
「なんであいつがのうのうと生きてるんだ?」
「被害者は俺なのに」
見ているだけで胃が重くなる投稿ばかり。しかも私の末路を示唆するような内容に、自分のことのように悔しくなる。
だからこそ『モモンガ』が投稿している内容に説得力があった。フォロワー数もかなり多い。それは、嘘偽りない怒りと絶望が共感を呼んでいるからだろう。
私は逡巡し、メッセージを送ることを決めた。
どんなメッセージだったら興味を持ってもらえるかな?
これは脚本を書く上でも大切なドラマになる。私だったら、どんな内容をもらったら返事をしたくなるのか、想像しながら書いた。
真剣に考え、新しいアカウント『サレ妻沙耶』を作り、次のような文章を彼に送ることにした。私の名前は、正直どこにでもある普通のものだから、本名かどうかもわからないだろうと思って、敢えて自分の名前を使うことにした。その方が、よりリアルに寄せられる。
『初めまして。夜分遅くに突然すみません。私はサレ妻沙耶と言います。夫に度重なる浮気をサレてしまった者です。夫だけを愛していたのに、今やATM家政婦介護要員と言われる始末です。彼は愛人と一緒になるために、私を天魔に堕とさせ、慰謝料を取って離婚しようとしています。なので先に天魔にコンタクトを取りたいのですが、彼に関してなにもデータがなく、状況を伝えることができません。なにか知っていことがあれば、教えていただきたいのです』
嘘偽りなく伝えるために、さきほどの反吐が出そうなスクリーンショットも送付した。
うまくいくかどうかはわからない。でも、エンジニアはいつも『トライアンドエラー』で結果を取りに行く。
メッセージに既読が付いた。
心臓が高鳴る。返事くれるかな……?
祈るような気持ちで待った。暫くすると、メッセージアプリがなにやら入力されている様子が映った。
返事、書いてくれてる!!
ぐっと握り拳を作った。なんて返事をくれるのかな――
『初めまして。サレ妻沙耶さん、パートナーの裏切りにさぞ心を痛められたことでしょう。画像を拝見しました。心中お察しいたします。俺も似たような目に遭いました。天魔に会ったのは、離婚調停中のことです。こちらがとんでもなく不利で、裁判に負けそうだった時に彼が力を貸してくれました。妻を堕としてくれたおかげで、相手の有責になり、親権を取って裁判に勝つことができたのです』
すごっ……!!
やっぱり天魔ってすごいんだ!
『でも、彼に依頼するのはやめた方がいいです。腕が確かなだけに、報酬はとんでもなく高額です。普通のひとは払えない額です』
やっぱり報酬はすごく高いんだ。
でも、やってやる!!
TV局が開催しているシナリオ大賞を獲ることができたら、賞金300万円+映像化。死ぬ気でこの賞金獲って、足りない分は私の貯金から出す!!
『覚悟しています。どんなことでも受け入れて、全財産を賭けます。夫に復讐したいです!!』
子供もいないし、失うものなんてなにもない。だからたとえ全財産を報酬と言われても構わなかった。お金ならまた稼げばいい。私には仕事があるから。シナリオ大賞獲れなかったら、その分も自分で稼ぐ。
でも、涼二だけはぜったいに許せない!
モモンガからの反応はなかった。また数分の間が空く。焦れてスマホを強く握りしめていると、再び画面が光った。
『天魔は、新宿西口の繁華街にある『エンビル』というバーに行けば会える可能性があります。但し、神出鬼没でうまく会えるかは運しだいです』
エンビル――聞いたこともないバーだけど、そこに行けば天魔に会えるかもしれないんだ。これは大きな前進!
『ありがとうございます! 見ず知らずの私の話を真剣に聞いて、応えてくださったことに感謝します』
勇気を出してメッセージを送ってよかった!
最後のメッセージにモモンガが返信をくれた。
『サレ妻沙耶さんの復讐、うまくいくといいですね。幸運を祈ります』
なんとエールまでもらった。それがどれだけ心を震わせたことか!
きっとこの人もすごく辛い目に遭ったんだ。だからこそ私のメッセージが本物だと思ってくれた。想いは伝わるんだ……。
よし!
涼二が天魔に接触する前に、私がアポを取らなきゃ。そして壮大な私の計画――夫を彼に堕としてもらう話をしなきゃ始まらない。
時計を見た。まだ午前0時になっていない。
そして涼二は今日帰らない。理咲と泊まりのデートを楽しんでいる。
エンビルの営業時間をネットで調べると、午後二時までの営業となっている。まだ間に合う。これはチャンス!
私はタクシーアプリで自宅までタクシーを呼び出し、急いで着替えて自宅を出た。
曖昧で小さな手掛かりでもいい。とにかくエンビルに行って天魔という男性を探し出し、夫を地獄に突き落とす。
裏切りには、相応の報いがあるということを思い知らせてやらなきゃ――
コメント
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第2話「伝説の別れさせ屋(3)」、めっちゃ気になる展開だった……! 沙耶が「モモンガ」さんに辿り着いて、#天魔に繋がった時の高揚感、分かる〜。沙耶が自ら“サレ妻沙耶”って名乗って、嘘偽りなくメッセージ送ったところ、勇気あるし切実さが伝わってきたよ。モモンガさんの「俺も似たような目に遭った」っていう共感と警告もリアルで、胸がぎゅっとなった。 エンビル行くって決めた沙耶、かっこよかった!次がすごく気になるよ!🔥