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🎼 シーン1:音を失った来訪者
夕暮れの《碧のごはん処(ミドリ)》。
店内に入ってきたのは、青緑の外套をまとった碧族の青年。背にはフラクタル音具《碧笛(へきてき)》を携えている。
名はソウラ。碧素の流れに“音”を与える、希少な音楽師。
だがその顔はどこか沈み、手には震えがあった。
「……最近、音が揺れるんだ。碧素の共鳴が、乱れていて……」
タエコは黙って頷き、端末に指を走らせた。
🍛 シーン2:スパイスで、リズムを戻す
すずかAIが読み上げる。
「情緒不調・音律ズレ反応確認。碧素内スパイス調整が推奨されます」
タエコが調理コードを呼び出す。
《FRACTAL_COOK_MODE=SPICY》《RHYTHM_TRACE=RESTORE》
炊きたての碧素米に、香り高い碧根スパイスと、音階調律に使われる微粒フラクタルシード。
碧素のリズムに合わせて、“辛さ”と“香り”が揺らぎながら煮込まれていく。
最後に、一滴の記憶補助フラクタルを落として完成。
「はい、スパイスフラクタルカレー。ちょいとピリッとするけど、効くで」
🎧 シーン3:音が、還る
ソウラはゆっくりとカレーをすくい、ひと口食べた。
舌に触れた瞬間、体内の碧素が軽やかに脈打ち始める。
音階のように整い、揺らぎ、ふたたび“音”を取り戻していく。
店内に響いたのは、彼の背にあった《碧笛》が自動共鳴し始めた音――
それは、かつて失った仲間がよく奏でていた旋律。
「……まさか、あのメロディが」
ソウラは、しばらく目を閉じて聴いたあと、そっと笑った。
「ありがとう、タエコさん。やっと“音”に戻れた気がする」
音が乱れる日もある。けれど、ちゃんとした“味”があれば、また始められる。