テラーノベル
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レイブにとって大切な存在であるシパイは人々を守るために何だか無理をしてしまっているらしく、どうやら死に掛け、ヤバイ状態らしい事は判った。
話の途中位からレイブには聞こえて、いいや想像による風景が脳裏に押し寄せて来ていたのである。
『れ、レイブゥ! た、助けてくれぇいぃっ! ぐ、ぐはぁっ!』
そんな風に叫んでいる懐かしい兄、シパイの姿が、である。
しかし、目の前に座っている少女、ラマスからは一欠片(ひとかけら)の悲壮感も感じさせてくれない、言うならば享楽的な楽しさ、ウキウキ感だけが感じられたのだ。
レイブは少し穿(うが)った想像をした。
――――この娘…… 少しおかしいのかな? だって自分が師事したシパイが死にそうだって言うのにこんな笑顔ってぇ…… あっ、そんな風になっちゃう位に追い詰められていたっていう、そう言う~? うーん…… 兎に角ぅ、もう少し詳しく聞いてみようかな? まだ全然訳が判らないしぃ~
やや疑いを込めた斜に構えたレイブは水を口に運びながら聞く。
「弟子にねぇ、んでも俺に何を教わろうって言うのかな? 実は七年前、ここの副院長、キャス・パリーグに助け出された後、俺、と言うか俺たち、ギレスラとペトラ、それに俺レイブは只の役立たずになっちゃったんだけどさぁ~」
「え? 役立たず、ですか?」
驚いた様に言うラマスに対して、レイブは大きく頷きを返しながら言う。
「ああ、あの日以来俺は魔術師の技の全てを失ったんだよ…… ユーカーキラーもアキザーキラーも作れやしない、だけじゃなくアミュレットもタリスマンだって不良品になっちまうんだ…… それに、スリーマンセルのギレスラの鱗も粉薬の素材にならないし、獣奴(じゅうど)ペトラの血液も何の役にも立たないんだよ…… なあ、ラマス…… 君が俺たちから学べる事なんか無いと思うんだけどなぁ…… どう? 一旦村に帰ってもう一度シパイ兄ちゃんに聞いてきた方が良いんじゃないかな?」
「や、役立たず…………」
少しの間俯いたままで何やら考えていたラマスであったが、やや置いてから再び瞳に力を取り戻してレイブを見つめながら言う。
「魔術師の技が使えないのはシパイ師匠も同様ですよ! 私がレイブ師淑(ししゅく)に教わりたいのはそんな技術では有りません! それらであれば他の魔術師の方々に教えて頂けるじゃないですか! 私がレイブ師淑から学ばせて頂きたいのは、シパイ師匠が発現させた奇跡の力、モンスターも魔力災害に依る魔力をも弾き返して見せた脅威の力、それと同様の能力、それの習得、その一事だけを願ってここ、『魔術師修練所』に師淑を訪ねて来たんですよっ!」
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