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九条さんの支援を拒絶し、雨の中にすべてを投げ捨てた翌日
私の世界は一変した。
「S&Yコンサルティング」のオフィスに向かうと、入り口には「ロックアウト」を告げる張り紙。
九条関連の資本が入っていた私の会社は、一夜にして彼の手によって凍結されていた。
「詩織さん! 銀行口座も、クライアントとの契約もすべて九条グループに差し押さえられました。私たちはもう……」
震える社員たち。
九条さんは私を「育てた」と言った。
ならば、その芽を摘むのも一瞬だということを、彼は身をもって示してきたのだ。
私は、誰もいなくなった公園のベンチで、手元の小さな手帳を開いた。
かつて直樹に怯えながらつけていた、あのボロボロの家計簿から始まった私の記録。
今、私の手元に残っているのは
九条さんの息がかかっていない、個人のわずかな預金と、私の頭の中にある「数字」だけ。
(……一円も、負けてたまるか)
私は、公衆電話からある場所へ連絡を入れた。
それは、直樹や高木のせいで家を失い
私が再建を手伝った「あの遺児たち」や、かつての被害者家族たちのネットワークだった。
◆◇◆◇
一時間後
古びた喫茶店に集まったのは、私が「損得抜き」で救い、自立を助けてきた人たちだった。
彼らは九条さんのような巨大な資本は持っていない。
けれど、彼らには九条さんが一円も投資してこなかった「誠実さ」という資産があった。
「九条さんは、私を操り人間にしたかった。でも、私があなたたちと築いてきたこの絆だけは、彼の帳簿には載っていなかったみたいね」
私は、彼らが持ち寄った細かな情報——
九条グループが不当に土地を買い叩いている現場の証拠や
脱税の疑惑に繋がる端緒を、一つの巨大な「告発状」としてまとめ始めた。
一円、一円を積み上げるように。
派手なオフィスも、豪華なパーティもいらない。
私は、かつて家計簿をつけたあの執念で
九条という巨大な壁に、小さな、けれど致命的な「亀裂」を刻み込んでいく。
「詩織さん、これ……九条の秘書が捨てていったシュレッダーのゴミです。繋ぎ合わせました」
かつて私が救った青年が、ボロボロになった紙屑を差し出した。
それを見た瞬間、私の目が鋭く光った。
そこには、九条さんが父の会社を解体した際に使った
海外のペーパーカンパニーの名前が記されていた。
(見つけた。……九条さん、これがあなたの『計算ミス』よ)
私は、新しい家計簿の表紙に、震える手で書き込んだ。
資産:奪い返した誇り。
負債:九条への復讐。
目標:完全なる自由
私はもう、誰の所有物でもない。
直樹の檻を壊し、九条の糸を切り、私は私の足で地獄の先へ進む。
【残り55日】